2022年度 商社のサステナビリティ推進活動

1.事業活動を通じた環境貢献

岩谷産業

液化水素サプライチェーンの商用化実証
―2030年30円/N㎥(船上引き渡しコスト)を達成する海上輸送技術の確立―

当社は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業「大規模水素サプライチェーンの構築プロジェクト」の一環として、日本水素エネルギー株式会社、ENEOS株式会社と共に「液化水素サプライチェーンの商用化実証」に取り組んでいる。

現在、建設工事および実証運転の開始に向けた技術調査を実施しており、その実証地として液化水素の出荷地は豪州ビクトリア州ヘイスティングス地区、受け入れ地は川崎臨海部とした。今後、NEDO、当社、日本水素エネルギー、ENEOSは、2030年に水素供給コストでN㎥当たり30円(船上引き渡しコスト)を達成するクリーンな液化水素の海上輸送技術の確立を目指す。さらに水素発電実証を実施する需要者や地元自治体などとも連携し、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けて商用規模での国際的な液化水素サプライチェーンの構築に貢献していく。


水素の海上輸送の図(岩谷産業提供)


液化水素サプライチェーンの商用化実証(岩谷産業提供)


岡谷鋼機


MSC・ASC商品の取り扱い拡大


活動に取り組んでいる社員(岡谷鋼機提供)

当社の食品本部は、SDGsのゴール14「海の豊かさを守ろう」に取り組んでいる。

世界的に水産資源の乱獲による枯渇問題が深刻化する中、持続可能な漁業を実現する漁法が注目されている。水産物には天然・養殖の2種類があり、当社ではその両方において、専門機関により認証されたトレーサビリティを確実にするための管理認証を取得し、持続可能な開発商品を取り扱っている。具体的には、CoC(Chain of Custody)認証(注)を取得し、天然品についてはMSC(Marine Stewardship Council)、養殖品についてはASC(Aquaculture Stewardship Council)という認証を取得した開発商品の販売に取り組んでいる。

当社はCoC認証の取得を継続し、持続可能な開発商品の取り扱いを拡大することで、持続可能な漁業の実現に貢献していく。

(注)持続可能な漁法で、合法的に漁獲された魚のみを扱う魚種別の認証制度。


兼松


石川県加賀市と連携した「ドローンを活用した血液輸送等の実現に向けた実証実験」の実施


加賀市での実証実験の様子(兼松提供)

当社は、石川県加賀市と連携し、ドローンを活用した血液輸送等の実現に向けた実証実験を行った。当社と加賀市は「空飛ぶクルマ・ドローンを用いた地方創生を実現するための包括連携協定」を締結しており、実証実験は加賀市が推進するAdvanced Air Mobilityの産業集積を目指す「空の産業革命」の実現に向けた活動の一環として行い、将来のメディカルドローン配送ネットワークの実装化を目的としている。当社が資本業務提携を結んでいるSkyports社がオペレーターとして参加し、配送を通じてドローン輸送における温度変化、温度管理、配送可能数を検証した。さらに日本国内初飛行となるSwoop Aero社製ドローン「Kookaburra」を使用し、加賀市内の医療機関間を結ぶ6km、10kmの二つの配送ルートを飛行した。

当社は、Skyports社および当社グループネットワークが有する機能・経験を組み合わせ、引き続き日本でのドローン事業の実装化に尽力し、持続可能な社会構築に貢献する。


興和


「グリーンアンモニア」サプライチェーン構築への取り組み


アダニグループとの契約に関する記者会見(興和提供)

当社は、インドの新興財閥であるアダニグループと25年以上にわたり親交があり、2011年に包括業務契約を締結した。2022年12月には、これからの10年を見据えた脱カーボンに貢献するビジネスモデルの構築をテーマに契約を更新し、その中でインドで再生可能エネルギーから作られるグリーンアンモニアを日本市場向けに、2028年をめどに年間100万t供給することに合意した。また2022年から、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け、アダニパワー社が運営するムンドラ石炭火力発電所で株式会社IHIと組んでアンモニアの
混焼実証事業に向けた技術面や経済性の課題の検証を行っている。

当社は、インドから日本へのグリーンアンモニアの安定供給を目指し、サプライチェーンの構築および利活用に向けた取り組みを推進する。

https://www.kowa.co.jp/news/2022/press221226.pdf


蝶理


サステナブルな繊維業界を目指す「BLUE CHAIN」構想


展示会の様子(蝶理提供)

当社は、繊維業界をサステナブルなサプライチェーンでつなぐ「BLUE CHAIN(ブルーチェーン)」構想を2021年に提唱した。分業制の顕著な繊維業界において、サプライチェーン全体を見渡せる商社としての立場を活かし、川上から川下に点在する各社を線でつなぐ役割を担う。本構想を共に広めるパートナー企業を指す「BLUE CHAIN PARTNERS」には、原料糸の生産、加工から最終製品ブランドまで、約140社が参加している(2023年5月現在)。

当社の代表的な環境配慮型商材は、回収されたペットボトルを使用したリサイクルポリエステル糸「ECO BLUE」である。その他の取り組みとしては、北陸産地で発生する繊維の産業廃棄物を土木シートや吸音材などに再資源化するケミカルリサイクルを本格稼働した。循環経済パートナーシップ(J4CE)への加盟や、パートナーシップ構築宣言も行い、サステナブルな事業活動に取り組んでいる。


長瀬産業


Scope3削減に向けた取り組み

当社グループはカーボンニュートラルを宣言しており、中でも特徴的なのが2030年のScope3削減目標(2020年比12.3%以上削減)だ。株式会社ゼロボードと業務提携を行い、同社が開発したサービス「zeroboard」による顧客のサプライチェーンにおけるGHG排出量の可視化を支援するとともに、GHG排出量の可視化・削減に寄与する製品・サービスをまとめた冊子「NEXT」を起点に顧客との対話を開始している。原料調達、製造、輸送、使用、廃棄・リサイクルの各工程で、NAGASEグループが有するGHG排出量の削減ソリューションを今後も展開していく。

また、令和4年度環境省グリーンファイナンスモデル事例創出事業におけるモデル事例として、当社が運用を予定しているサステナビリティ・リンク・ローン・フレームワークが選定された。従来のフレームワークと異なり、サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)にGHG排出量の一次データ比率を採用している点、また自社のみならずサプライヤーも本フレームワークを活用した借り入れを可能にすることで、サプライチェーン全体でGHG排出量の可視化・削減に向かうように設計されている点が画期的かつ野心的と評価され、採択に至った。

Scope3削減目標達成のためには、サプライチェーン全体の取り組みが必要であると認識しており、今後も顧客との対話の取り組みを強化していく。


GHG削減製品・サービスカタログ「NEXT」(長瀬産業提供)


フレームワークのスキーム(長瀬産業提供)


日鉄物産


メキシコにおける電磁鋼板用コイルセンター新設へ


電磁鋼板用コイルセンター(日鉄物産提供)

当社は2023年3月、北米の電動車市場に安定的な成長が見込めることを踏まえ、メキシコ合衆国・グアナファト州に電磁鋼板専門のコイルセンターを新設することを決定した。電磁鋼板は、電動車用モーターなどの鉄心に使用されており、エネルギーロス(鉄損)を最小化する省エネ材料としてモーターの性能向上(高効率化、小型化、軽量化など)に寄与し、電動車の普及を通じてCO排出量を削減することが期待できる。

当社は、「脱炭素社会・環境保全への貢献」を重要課題の一つに掲げており、カーボンニュートラルな社会の実現に向けたニーズの高まりの中で、高機能電磁鋼板の拡販およびグローバルなサプライチェーン網の構築に取り組んでいる。電動車用モーターのサプライチェーンが集積するメキシコに電磁鋼板の精整・スリット加工を担う本コイルセンターを新設することで、社会や取引先のニーズに応えていく。


ユアサ商事


サプライチェーン全体のカーボンニュートラル支援

当社は、2009年より環境・省エネコンサルティング専門部隊であるYES(イエス)(YUASAENVIRONMENT SOLUTION)部を設置し、案件規模や業種業界にかかわらず、仕入れ先さま、販売先さま、ユーザーさまに至るサプライチェーン全体のカーボンニュートラルを、現状把握の支援から納入・施工・アフターメンテナンスまでワンストップで提供している。

具体的には、当社オリジナルのCO可視化システム「YES-net(イエスネット)を活用したエネルギー分析や、現地調査を通じた運用改善提案の他、近年では費用対効果の高い設備更新案件が多くなっており、補助金を活用した設備更新や再生可能エネルギーの導入など、補助金内容の説明・申請・施工までのトータルサポートを実施している。

今後も「YES-net」を活用したScope3の可視化支援に加え、海外のお取引先さまのカーボンニュートラル支援を通じ、世界全体のCO排出量削減に貢献できるよう本事業を強化していく。

2022年度 実施事例(一部)


高効率空調機への更新(補助率約3割:「先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金」(経済産業省))(ユアサ商事提供)


太陽光発電システム導入(補助率約2割:「ストレージパリティの達成に 向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」(環境省))
(ユアサ商事提供)

次ページ:2.サステナビリティ理解・啓発、開示促進(Scope3)

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