トップフォーラム「日本の貿易とエネルギーの課題」

日本貿易会第379回常任理事会 公明党政務調査会長
高木 陽介氏

2024年2月7日(水)開催の当会常任理事会にて公明党政務調査会長 高木陽介氏にご講演いただきましたので、その要旨をご紹介します。

経済産業副大臣としての3年間


2014年から3年間にわたって、経済産業副大臣を務めると同時に、東日本大震災を受けて設置された原子力災害現地対策本部の本部長として、約9万人の被災者の支援、福島第一原発の廃炉および処理水問題における責任者を務めた。その間、福島県には延べ260日通い、現地の首長をはじめとした関係者との交流を続けて、深い人間関係を築いてきた。

また、26回に及ぶ海外出張において最も力を入れたのは中東である。7回の中東出張では、UAE(アラブ首長国連邦)を軸としてサウジアラビア、クウェート、オマーン、イラク、カタールなどを訪問した。UAEでは、海上油田についてはINPEXが権益を一部保有しているが、陸上油田については石油メジャーが全ての権益を保有していた。同国における陸上油田の権益入札に当たっては、ムハンマド・ビン・ザーイドUAE大統領兼アブダビ首長(当時は皇太子)と直接交渉することを通じて、権益の獲得につなげた。中東各国のエネルギー大臣とは何度も会うことによって信頼関係を築いてきた。国益のためには、日本の閣僚は継続して4年以上は務め、一貫性を持たなければならないと感じた。

生き残りに向けて発想の転換を

世界では16億人に電気が届いていないといわれている中で、その1割であっても日本と同じ人口規模の市場となる。電力業界においては、狭い日本の中で競争するのではなく、世界で競争していくという発想が大切であり、政治が動かなければならないと感じている。

海外進出に際して、われわれは国家対国家で考えがちであるが、アフリカにおいては、国ではなく部族ごとにエネルギーを地産地消するという発想となる。どうしても発電所や送電網など大きなインフラの話をしがちであるが、こうした発想のもとで、商社と連携を深めていくべきである。

また、性能の良さのみを追求するのではなく、相手のニーズに合わせた商売をしていく必要があると感じている。例えば、高効率の石炭火力発電所を売り込む際に、長期で見れば割安になるという説明をしているが、いざ入札になると理解が得られない。途上国においては、性能の良さより、目の前にある課題に決着をつけたいという発想がある。

海外ビジネス支援における政府の役割

企業の海外現地責任者と交流する中で感じたのは、それぞれ課題を抱えながらやっているが、日本本社と海外拠点とが連携しているところに政府が関わっていないということである。企業の海外拠点の方々は、現地政府と何とかつながりを持つために苦労されている。日本政府においては経協インフラ戦略会議が設置されており、総理大臣の外遊に合わせて企業にMOU(覚書)を結んでもらうなど協力いただいている。

副大臣は、Vice MinisterではなくState Minister(閣外の国務大臣)の位置付けであり、外交的には大統領や首脳に直接会える立場になっている。それにもかかわらず、十分にその立場が活かされていないことが問題である。大臣や副大臣が海外を訪問する際には、各省庁の案件だけではなく、当該国の全体的な課題を調べた上で会談等を行うべきである。この点、経済産業省は、各国の大使館やJETROを通じて現地日本人会などからの情報も持っているので、四半期に一回など定期的に情報を集めて活用できれば、日本の貿易はだいぶ変わる。

カーボンニュートラルの実現に向けて

2050年までに目指すことが宣言されているカーボンニュートラルの実現に向けて、原発の位置付け、使用済み核燃料の最終処分へ向けた道筋を明確にすべきである。国内外の使用済み燃料最終処分場を見て回った中での実感として、トンネル技術がキーとなっており、その点では日本は必ず対応できると確信している。政府が前面に立って、しっかりと説明しきることが重要である。既存の使用済み核燃料の最終処分をどうするかについては、原発推進派も原発反対派も責任を持って考えなければならない。

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