2021年度 商社のサステナビリティ推進活動

1.事業活動を通じた環境貢献

岩谷産業 国際的な液化水素サプライチェーンの構築(世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」)と啓発活動の実施


液化水素運搬船
(岩谷産業提供)

当社も参画するHySTRA(技術研究組合 CO2フリー水素サプライチェーン推進機構)ではNEDOの実証事業に取り組んでおり、2021年12月に世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」が日本を出港、2022年1月に豪州に到着、現地で褐炭から製造した液化水素を積荷し、2022年2月に日本に帰港した。帰港後、液化水素運搬船から陸上の液化水素タンクに荷揚作業を行い、実証試験中の各種運用データを検証した結果、サプライチェーン構築の実証が無事に完遂できたことを確認した。今回の実証試験により、国際的な液化水素サプライチェーン構築が可能と立証されたことは、水素エネルギー社会を目指す上で大変意義深い。実証試験を通じて安全に運用できることを確認できた装置や設備は、今後のクリーンエネルギービジネスのゲームチェンジャーとなる技術であり、水素を天然ガスのように当たり前のエネルギーとして使える社会の実現に、さらに一歩前進したものと捉えている。

また、次世代を担う子どもたちへの啓発活動等も継続しながら、それぞれの場面において果たすべき役割を一つ一つ着実に実践していきたいと考えている。

兼松 「空飛ぶクルマ」への取り組み


Skyports社Vertiportイメージ図
(兼松提供)

当社は、空飛ぶクルマの離着陸場であるVertiportの開発・運営の分野で世界をけん引する英Skyports社と資本・業務提携し、日本国内で共同事業を開発・運営するための合弁会社を2024年までに設立することで基本合意している。空飛ぶクルマは「電動」「低騒音」「低コスト」などの特徴が挙げられる次世代エアモビリティで、脱炭素時代の新たな輸送手段として期待されている。旅行、物流、災害救助、離島の交通手段などさまざまなユースケースが想定され、数年内の実用化が見込まれている。当社は「環境」「安全」「快適」をテーマに、保有するビジネスノウハウ、経験、ネットワークを生かし、次世代エアモビリティの事業創造により持続可能な社会の構築に貢献していく。

蝶理 「BLUE CHAIN」プロジェクトを通じたサプライチェーン全体での環境配慮型事業の拡大


年間約10億本分のペットボトルのリサイクルが可能な自社設備
(蝶理提供)

「BLUE CHAIN」は、糸・生地・製品という繊維産業の各段階における個別のサステナビリティの取り組みを柔軟に掛け合わせることで、サプライチェーンにおけるサステナビリティの全体最適化の実現を目指す当社独自のプロジェクトである。当社の代表的な環境配慮型商材である「ECO BLUE®」は使用済みペットボトルを再生したリサイクルポリエステル糸で、衣料品や各種資材の原料として再利用されるとともに、当社の取引先において「ECO BLUE®」を使用した各種環境配慮型商材の開発が進んでいる。現在、「TEAM ECO BLUE」として共に活動してくださる協業企業は約120社に上る。当社が長年にわたり取引を行っている北陸産地との協業では、加工場で発生する糸くずなどの繊維廃棄物を回収し、河川の補強材や自動車の吸音材等向けに再利用する取り組みが始まった。福井県では、蝶理北陸支店が福井県繊維協会から「SDGs推進コーディネーター」に選ばれ、産地企業と連携してリサイクル事業の取り組みを強化している。

帝人フロンティア 環境戦略「THINK ECO」


「持続可能な社会の実現に向けて~エコプロ2021」に出展
(帝人フロンティア提供)

当社は、「素材からエコにこだわろう」「きれいな空気と海を守ろう」「省エネな毎日を送ろう」という三つの目標を掲げた環境戦略「THINK ECO」の下、環境に配慮した事業活動を推進している。

また、人々の暮らしのあらゆる場面で「せんい」は活かされており、当社が創り出す「せんい」により、人々の暮らしを進化させていくことが企業としての存在価値であると考え、「暮らしは、せんいで進化する。」というコーポレートメッセージを掲げている。当社は、衣料から産業資材まで幅広い用途において、メーカー/商社の二つの機能を併せ持つことを強みとして、情報・創造・製造の総合力で、さまざまな顧客のニーズに対応したソリューションの提供を行っている。これからも環境戦略「THINK ECO」を通じて、「未来の社会を支える会社」になることを目指し、地球環境に優しいものづくり・仕組みづくりによって、「せんい」で暮らしを進化させていく。

長瀬産業 NAGASEカーボンニュートラル宣言と主な取り組み

当社グループはカーボンニュートラルを宣言し、実現に向けた施策を策定した。グループ全体の施策に加えて、「商社業/製造業」と「可視化/削減」の2軸4象限に施策を分類し、グループ内の役割を明確にして目標達成に向け取り組んでいる。また宣言に併せて2022年1月にTCFD賛同表明を行い、商社業として、2030年のScope3削減目標を掲げている。GHG排出量の中長期目標設定に当たり、SBT認証の取得、環境投資の優遇制度、社内炭素税の導入も検討を進めている。

また、化学品業界を中心にScope3の可視化・削減を支援するべく、株式会社ゼロボードと業務提携を行い、同社が開発したサービス「zeroboard」によるサプライチェーンにおけるGHG排出量の可視化の支援および削減ソリューションの提供を行っている。

当社グループは、気候変動への取り組みが評価され、2022年4月にFTSE Blossom Japan Sector Relative Indexの構成銘柄に選出された。今後も、具体的な施策を進めながら、持続可能な社会の実現に貢献していく。


NAGASEカーボンニュートラル宣言(長瀬産業提供)


目標年度内容
2050年まで(Scope1・2)GHG排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルの達成
2030年まで(Scope1・2・3)Scope1・2を46%削減(2013年比)
Scope3を12.3%以上削減(2020年比)
なお、Scope3は今後のサプライチェーンとの対話により目標値の更新も検討

目標達成に向けた全体施策・個別施策
(長瀬産業提供)


GHG排出量算出・可視化クラウドサービス「zeroboard」
(長瀬産業提供)


丸紅 新中期経営計画GC2024において、「グリーン戦略」を発表

脱炭素、循環経済への移行、水資源・生物多様性の保全、人権の尊重など、サステナビリティへの取り組みは、あらゆる企業が果たすべき責任であり、解決すべき社会課題である。こうした社会課題の解決に、顧客・パートナーなどのステークホルダーの方々と共に取り組んでいくことで企業価値向上を図るべく、新中期経営計画GC2024においてグリーン戦略を基本方針の一つとして掲げた。

当社が既に強固な事業基盤を持つ、再生可能エネルギー、森林・植林事業、アグリインプット事業、銅・アルミ事業、水事業などのグリーン事業に今後も重点的に資本を配分し、事業の拡大・強化を図る「グリーン事業の強化」と「全事業のグリーン化推進」により、グリーンのトップランナーを目指していく。

三菱商事 自然の力を活用した気候変動対策を開始

当社は、自然の力を活用した気候変動対策(Natural Climate Solutions)を社会貢献活動の一環として開始した。

自然の力を活用した気候変動対策には、陸上や海中の健全な生態系の減少や劣化を防ぐ方法も含まれる。今回、当社では、草原・低木地帯や森林地帯の生態系において、植物によるCO2吸収を保全しつつ土壌や森林に貯留されているCO2の放出を防ぐ手法に着目し、南アフリカの放牧地回復プロジェクトとカナダの原生林保全プロジェクトの2件に取り組むことを決定した。これらの取り組みを通じ、地域社会と一体となって、植物によるCO2の吸収と地中に貯留されたCO2の放出を防ぐと同時に、生物多様性の保全も目指していく。急速に進む気候変動への対策として、とても意義のあるプロジェクトと考えている。


©コンサベーション・インターナショナル/Tessa Mildenhall


©Wildlife Conservation Society

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