ミニ特集「国際物流総合展2021 第2回INNOVATION EXPO」

国際物流総合展2021 第2回INNOVATION EXPO 開催経緯と概要

公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会 JILS総合研究所 マネジャー
遠藤 直也(えんどう なおや)氏

松井 拓(まつい たく)氏
公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会 JILS総合研究所 プログラムプランナー 
阪本 大介(さかもと だいすけ)氏

開催の経緯について教えていただけますか。

阪本:国際物流総合展は1994年に当協会の前身となる団体が主催していた二つの展示会を統合し現在の形となりました。この数年は当協会を含む7団体で共催し、2年度に1回、偶数年に開催してきました。出展者・来場者双方の要望を受け、2019年度からは奇数年度のスピンオフ展示会としてINNOVATION EXPOを開催しており、今回は2回目となります。バーチャル展示はリアルの展示会終了後も継続し、リアル展示との相乗効果による活性化を図っています。

最近の物流業界の事情について教えてください。

松井:「物流クライシス」とも呼ばれるように、物流業界では労働力不足が続いており、モノの流れを止めずにどのようにオペレーションを行うか、持続可能なソリューションを求めて来場されるお客さまが顕著に増えています。例えば、今の輸送環境が続いた場合、2030年には労働力の需要に対して供給が3割ほど足りなくなる試算もあります。国土交通省では、輸送業務の効率化や環境改善を目指して企業に協賛を募る「ホワイト物流」ムーブメントを加速させています。5−6年前のIoT、AIから始まり、現在はデジタルによる業務改善が話題です。出展者は各社ともロボットによる無人化、省人化などICT関連技術を駆使した物流ロボティクスを推進されており、出展動向にも反映されている印象です。

コロナ禍による影響はどのようなものがありましたか。

松井:コロナで今までにない需要の変化がありましたので、物流の現場は混乱しました。非接触型の作業が求められる中、物流業務が対面によるアナログ業務を中心に成り立っていることが浮き彫りになりました。

遠藤:国際物流に関しては海上輸送の混乱が続いています。コロナの影響で抑えられていたモノの流れが、2019年後半から2020年にかけて、米国の消費拡大を背景に急に動き始めました。船会社はリーマン・ショック時に船舶の所有数を絞り込み、コロナでコンテナも含めさらに減らしたため、急激な需要増に追い付いていないのです。当協会の会員各社も船スペース、空きコンテナを可能な限り早く手配しようと努力されていますが、クリスマス商戦前に課題山積の状態です(参考:公益社団法人 日本ロジスティクスシステム協会 海上輸送におけるコンテナ不足等の問題・課題と取組み)。さらに日本では欧米と比べてICT技術を活用しきれておらず、業務フローをはじめサプライチェーンの見える化ができていない問題も見えてきました。

今回の展示会を振り返って、来場者の動向はいかがでしたか。

松井:緊急事態宣言が解除され年末に向けて物量が増えることを見越しつつ、ガソリンの値上がりに対応するため、身近な輸送手段の手配、輸送の効率化に課題感を持って来場されたお客さまも多かったのではないでしょうか。これまでは各企業が個別に物流改善に取り組んできましたが、物流のDX化を進めるに当たっては、サプライチェーン全体で連携しなければ十分な効果が得られないことが多くあります。ロジスティクスの改善を積み重ねてきた企業ほど、関連企業も含めて物流を変えていくマインドを持たれており、自社の改善のみに固執しない考え方はこれからも広がっていくと思います。それに伴い、サプライチェーン全体の物流の流れを踏まえたソリューションを提案するために、さまざまな企業の商品を組み合わせて提案される出展者も目立ってきました。

最後にこれからの物流について見解をお聞かせください。

松井:サプライチェーン全体の物流の流れを効率化するソリューションの発見やサービスの提供について、出展者や来場者の皆さまと一緒に考えていく時期に来ています。ロジスティクスはCO2削減、フードロス解消などを通じて持続可能な社会の実現に貢献できる分野です。この展示会が、企業の物流部だけでなく、関係部署や経営層の皆さまも一丸となって戦略的なロジスティクスを考えるきっかけになればと願っています。

遠藤:経営課題として物流を捉えていくことが重要です。DXやSDGsを物流に取り入れることは、新たな投資が伴うことや物流コストの上昇につながることもあります。それでも経営課題として物流を捉え、可視化し、正しく判断することが求められる新たな時代が到来しつつあると思います。これからも展示会を通じて、お客さまにニーズとマッチするソリューションとの出会いの場を提供していきたいと思います。


10月22日に行ったインタビューの様子
(右上 阪本氏、左下 遠藤氏、右下 松井氏、左上 当会 野田)

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