アニハセヨ!

韓国稲畑株式会社社長
櫻井 弘樹

初めに



会社のメンバーと


韓国とは日本から一番近い外国。
当然の話なのですが、赴任して3年目、それを日々実感させられるのが、自分にとっての韓国です。
一番近い、これは単に地図上の話ではなく、歴史、特に近代史における両国の関わりは非常に密接なものがあるということを、この国に駐在して韓国近代史の本を数冊読んだだけで、知りました。
日清戦争、ロシア戦争、征韓論、伊藤博文暗殺、日韓併合等、自分の中では歴史の勉強で暗記したり、映画の題材でしかなかったものが、全て日韓の歴史に深く関わる事件であったことをあらためて思い知らされました。
伊藤博文をハルビンで暗殺した安重根という韓国人(朝鮮人)は韓国水軍を率いて豊臣秀吉と戦った李舜臣と並んで韓国の歴史上の英雄です。
何故、豊臣秀吉は朝鮮に出兵したのか? 伊藤博文はいかなる理由で銃撃され、そしてその死の間際に何故、「ばかなやつだ」とつぶやいたのか。自分にとっては興味が尽きないことだらけですが、日本ではこれらの事件の背景等を詳しく議論される場がないことが非常に残念です。最近の韓国ブームもあり旅行番組等で取り上げられる機会が増え、韓国通の方も増えておられるとは思いますが、駐在して初めて知った韓国に関して幾つかご紹介したいと思います。


気候


韓国に赴任したのが2011年1月でした、その年は漢江(ソウル市内を東西に流れる大河)が十数年ぶりに結氷したという記録的な寒さでした。
日中の最高気温がマイナス10度近くまで下がるという日もあり、北海道生まれの自分でさえ、あまりの寒さにこれからの韓国生活に不安を感じました。
しかし、季節の変化は突然にやってきます。大陸性気候のためなのか、北風から南風に変わると気温が一気に上昇します。昼と夜の気温差はありますが、日中はコートが必要なくなってからいくらもしないうちに上着も必要ないような暖かさになります。逆に冬も風向きが変わると一気に気温が下がることになります。


交通事情


街中の両替店のレート、ピーク時は1 万円が15 万ウォン以上でした

ご存じの方が多いとは思いますが、韓国の人口は2010年度の統計で4,900万ほど、2013年には5,000万を超えると予想されています。そのうち、約半数がソウルおよびその近郊である、京幾道に集中しています。そのため、ソウル市内は慢性的な交通渋滞に悩まされておりますが、自分が駐在したこの3年間では年々交通渋滞が減ってきているように感じます。交通インフラが整ってきたためなのか、それともあまりのガソリン代の高さに車の利用が減ってきているだけなのかは定かではありません。ちなみに最近のガソリン価格は2,000ウォン/ℓですので、現在のレートでは日本円で200円/ℓ 程度と日本と比較してもかなり高めではないでしょうか?


韓国の地図


まだ多くの観光客で賑わう明洞の街

韓国の地図では日本海は東海、竹島は独島と表記されています。ここまでは、マスコミの報道で皆さんもよくご存じのことと思いますが、それに加えて韓国に駐在して気が付いたのですが韓国の地図には北朝鮮との国境は記載されておりません。朝鮮半島はあくまでも統一国家という考えなのでしょう。
ちなみに、韓国では北朝鮮を北韓と呼び、北朝鮮では韓国を南朝鮮と呼ぶようです。


Korea の語源


李舜臣銅像

英語名のKoreaですが、これは王建(太祖)が918年に建国し1392年まで続いた高麗(こうらい・韓国発音コリョ)が語源となっているようです。
ちなみに、日本の教科書にも載っている三国時代、高句麗・百済・新羅の中の高句麗ですが、中国ではこれは中国の一部だとの主張があり、一時期かなりもめたようです。最近は、中国側が主張を控ているため、落ち着いているようですが、ここにも領土問題の火種があるようです。


日本人観光客


2012年までは円高の影響もあり毎月30 万人を超す日本人観光客でにぎわっていたソウルですが、2013年5月の連休は中国人観光客が日本人を上回ったそうです。
円安の影響で消費金額も大きく減ってきているようで、日本人観光客に人気があり、歩いている人間の半分は日本人だといわれていた明洞や仁寺洞等の観光地は大きな打撃のようです。
逆に日本へ遊びに行く韓国人が増えているという話もありますので、九州のゴルフ場が韓国の人でいっぱいになるかもしれませんね。そんな中ですが、まだ韓国人アイドル人気は続いているようで、興味のない人間には信じられないような金額でもコンサートやミュージカルのチケット付きの日本からのツアーはまだまだ人気があるようです。


日本のこのお店も韓国進出


代表的な韓国料理:スンドゥブチゲ


食生活


赴任前からのイメージ通り、韓国食の味付けはほとんどが唐辛子系でした。もちろん辛くない料理も数多くありますが、辛い味付けの料理が圧倒的に多いようです。食材は日本とほとんど変わりませんので韓国で初めて食べた食材は今のところありません。魚は白身が好まれるようで、タイ・ヒラメ等が人気のようです。
また韓国の人は圧倒的に韓国食がお好きなようでソウルは他の大都市に比較すると外国料理の店が少なく、料金も高めのように感じます。
それでも最近は日本食の店は少しずつ増えてきていて、特に日本の外食チェーンの韓国進出が進んできています。とんかつ、カレーライス、回転すし、居酒屋等のチェーン店がソウルに開店して、日本と同じ味をソウルでも楽しめるようになってきました。駐在員にはうれしいことですし、韓国の方に日本の味を楽しんでいただく機会が増えるのは喜ばしいことです。


買物客で賑わう南大門市場


会社メンバーとの宴会風景


最後に


江南スタイル人気は続く…

残念ながら政治的には、いろいろな問題を抱えている日韓関係ですが、ソウルでの暮らしから文化的には物理的距離同様にかなり近くなってきていると感じます。特に日本留学経験者の多さには、非常に驚かされます。そして日系企業に勤務していることを差し引いても、自分の周りには日本での留学生活をポジティブに捉えてくれている韓国の方が多いと思います。
まだ韓国経験のない方は、マスコミ、特にテレビから流れてくるイメージだけでなく、ぜひご自身で感じるためにソウルへいらしてください。為替レートの変動で、買い物天国ではなくなってしまいましたが、逆に観光客数が落ち着いた今だからこそ、買い物のためでなく、韓国文化に触れる良い機会だと思います。そして、日本から一番近い外国をぜひ実感していただければと思います。駐在3年の経験から、(辛いものが苦手でなければ)非常においしい韓国料理と、今流行りの江南スタイルの美しい女性、スーパージュニア風のイケメンも楽しめますよ!
あと何年になるか分かりませんが、振り返って充実した駐在員生活であったと思えるように駐在期間中に日韓関係強化に少しでも役立つような足跡を残したいと思います。

アニハセヨ! 誌面のダウンロードはこちら