シャーロットの仕事と生活の環境について

蝶理アメリカ
シャーロット事務所
溝尾 譲

筆者


2013年末よりノースカロライナ州の60万人都市シャーロットにて仕事を始めました。約1年の駐在経験で感じたことをお伝えします。


シャーロットと郊外の町について


シャーロットの中心街

ここには日本人がおよそ700人住んでいるといわれ、その多くはサウスカロライナ州との州境の新興住宅地に住居やオフィスを構えています。バランタインと呼ばれるこの郊外の町は、シャーロットの中心街や国際空港からは車で約30分の南方に位置しています。トロピカルな温暖で過ごしやすい気候のせいか移民も多く、ヒスパニック系、インド系、東欧系人種と同じくアジア系人種もベトナム、中国、台湾や韓国を中心に増えていますが、駐在員を中心に構成する日本人は近年では減少傾向と聞きます。

シャーロットはノースカロライナの州都ではありませんが、アップタウンと呼ばれる中心街にはバンク・オブ・アメリカが10 年前より本社を置き、2014年にアメリカン航空と合併したUSエアウェイズは以前よりシャーロットをハブ空港とし、国際路線は欧州や中南米方面への直行便があります。大学もノースカロライナ州立大学、ノースカロライナ大学等の優秀な大学があります。特にこの10年間の街の発展は目覚ましく、富裕層を中心とした出生率の上昇により、学生を中心に若年層人口も増えています。

カロライナ地方は古くは綿花の栽培・輸出で栄え、豊富な水資源により繊維加工業が発展しました。今でも有数の米国系繊維メーカーが本社を構える中で、日系、アジア系の繊維・生地工場も活躍しています。ノースカロライナ州立大学に古くから繊維工学科があるのもそのような歴史的背景と関わりがあるのではと思います。今では各大学にアジアからもたくさんの留学生が増えているそうで、米国西岸に比べて遠方の東岸地域でもアジア地域との人のつながりが深まってきています。

サウスカロライナ州は全米一といわれる人件費の安さでいまだに繊維産業が栄えています。バランタインではカウンティ(郡)の違いで課税率が変わるガソリンや日用品の一部を求めて車を数マイル運転し、隣のサウスカロライナで購入する人も多いです。企業にとっても州税が違ったり、倉庫料その他費用が安い等のメリットがあるサウスカロライナに事務所や工場を設立し、ノースカロライナから通勤している人も多いと聞いています。バランタインはそんな好立地条件により2009年以降毎年家賃は上昇し、今も新築住宅の建設ラッシュが続いています。

独特の南部なまりの英語は北部や西部で使われる発音より特徴的で聞き取りにくいと感じる言葉もありますが、この言葉をしゃべることができればこの地域で友達を増やすチャンスが広がることでしょう。現在必死になって習うより慣れろをモットーに語学力の上達にもチャレンジ中です。


シャーロットでのスポーツについて


この地域で有名なスポーツといえば、まずはゴルフです。ノースカロライナ州とサウスカロライナ州を合わせたこの地域の中で約700のゴルフコースがあるそうです。ピードモントと呼ばれるなだらかな高原地帯には多くの湖があり、飛行機の上から見ても濃さが分かる一面の緑が広がっています。温暖で雨が多く芝生の成長に絶好の気候の中、毎年 USオープンやPGAの大会が開催され、マスターズで有名なオーガスタもサウスカロライナ州境のジョージアにコースがあります。

日本でゴルフといえばハイソでかしこまったスポーツのイメージが強く、コースでのプレー料金もそれなりに高いですが、こちらでは練習は5ドルから、公共コースでのラウンドも20ドル台から始められるので、老若男女が気軽なスタイルで楽しむことができます。価格の割にコースの整備がしっかりしており、且つ空いているのでのんびりとマイペースにプレーができる所が多いです。夏場はサマータイムもあるので夕方のプレー時間が長く取れ、就業時間後にカートを駆ってラウンドを楽しんだり、練習に励む方も多いです。最近ではアジア人の学生がゴルフ留学にやって来ることも多いようです。

そんな環境ですが、私のスコアはまだここに書けるレベルではありません。生活習慣化として練習をする機会を増やし、いつかは家族でも楽しむことができるようにチャレンジしていきたいと思います。

米国はプロスポーツが盛んな世界と聞いていましたが、私は米国に住んでからそのことを強く実感しました。人気の種目は学校の課外活動チームでもトライアウトがあり競争倍率が10倍近くに上ることもあるそうです。有能な選手は奨学金を受けることができたり海外からも留学生を受け入れることでグローバルに高いレベルが常に維持され、さらに毎年レベルが向上しています。最終的には最高レベルのプレーがショーのような上手な見せ方で身近に万人が楽しめるシステムがあります。

米国で最も人気のスポーツはアメリカンフットボールです。近年はプレー中のけが・故障の割合の高さからか、親が子供に勧めたいスポーツとしては若干敬遠されがちとも聞いていますが、それでも中学、高校、大学、プロと観客席付きの専用グラウンドを持っているチームが多く、チームのサポーターの熱狂的な声援、ブラスバンド&チアリーダーによる応援があったり、実況解説者が独特のマイクパフォーマンスで会場を盛り上げています。

私にとってアメリカンフットボールで最も印象深い話は一昨年末にある米国系の得意先に商談に行った時のことです。たまたま地元のプロチームが日本野球界でいうジャイアンツのような古豪かつ強豪チームを地元で僅差で破った日の翌日だったた め、 何 か の拍子で商談中にアメリカンフットボールの話となり商談は異常な盛り上がりでお客さんは終始上機嫌になりました。

いろいろな人に話を聞いてみてもアメリカンフットボールシーズンのリラックスできる週末の過ごし方は、土曜日は大学の試合、日曜日はプロの試合をTV中継で見ることだそうです。地元のチームがプレーオフに出場したり、スーパーボウルの観戦チケットは全財産を注ぎ込んで見に行くような熱狂的なファンがいたりと、やはりアメリカンフットボールにはそれだけの奥深い価値やステータスがあるようです。

他にもバスケットボール、ベースボール、アイススケート、テニス、サッカー、モータースポーツからマリンスポーツさらにはジョギングやフィットネスまでいろいろな種類のスポーツが盛んに行われ、生活や仕事にも文化として根付き米国社会の一部を形成しています。昨シーズン数度観戦したプロバスケットボール= NBAについて紹介したいと思います。


NBAの試合の様子


NBA 選手が試合会場から戻るところ

私が見たのは地元のプロチームのレギュラーシーズンの数ゲームです。神と称えられた名プレーヤーのマイケル・ジョーダン(ノースカロライナ大出身)がチームのオーナーで、同年代でニックスで活躍したパトリック・ユーイングがA コーチをしています。昨シーズンまで「ボブキャッツ」と名乗っていたチーム名は今シーズンより「ホーネッツ」と昔なじみの名に戻ることになりました。昨シーズンはプレーオフに出場しましたが、一回戦で運悪く優勝を狙うマイアミ・ヒートと対戦して敗退してしまいました。通常の観戦チケットの購入はインターネットで比較的簡単にでき、対戦カードや席の位置によっては千円前後の安い価格でも観戦が可能です。

私は17年前に新婚旅行で初めて訪問した際に長年の夢であったレイカーズをロサンゼルス(LA)で観戦したことがあります。LA では有名人が観戦に来ることがよくあり、当時売り出し中のタイガー・ウッズがコートサイドにいてレイカーズのメンバーと話をしていたことを覚えています。

シャーロット会場はLAやNYほど広くはなく観客席に有名人を見たこともありませんが、2度ほど国内外のお客さんを誘って行きました。というのもバスケットボールを元来あまり知らない人でも本当に試合を楽しく見ることができるショーのようなシステムがあり、毎度観戦した人の感想がとても興味深かったからです。以前、ある日本人のお客さんの帰任が決まった月に約5年間の駐在を締めくくる意味でNBA観戦にお誘いしました。その方は自身もバスケットのプレー経験があり、以前中国に駐在中に遠征に来たNBAチームを観戦したことがありましたが、中国でもあまりにも強烈な人気があり人だかりに巻き込まれとても疲れた経験をお持ちで、北米駐在中は見に行く機会を逃していました。しかし、とてもこじんまりして整備された会場でグッズを気軽に買えたり往年のユーイングを見たり間近で試合を観戦できたことで、駐在中にもう少し来ておけばよかったと話していました。

またメキシコからのお客さんも連れていったことがあります。メキシコでもバスケットは盛んですが、サッカーやプロレスに比べるとそれほど人気はなく、見に来られた方も初めてでルールもよく知らないようでした。しかし試合前やタイム・アウトの間に繰り広げられるチアリーダーや観客も交えたショー的な要素にとても感心され、何も知らなくても見れば全ての情報が分かり楽しめるショーのシステムに感心されていた様子でした。


シャーロットの少年サッカーチーム

このシャーロットは典型的な先進国の比較的新しい田舎町で、来た当初は何か薄っぺらい印象もありましたが、1年近く住むことで少しずつ魅力的なリアル米国の一面が見えてきました。これからもさらに魅力を探るべく生活面での現地化を進めていきたいです。

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