癒される美しい古都 チェンマイ

泰国岩谷会社 ランプーン支店長
石井 辰弥

はじめに


私は2021年にチェンマイに赴任しました。社員も友人もいない上、バンコクとは全く異なる風土であることに戸惑いもありましたが、2年半がたった今では、自然が豊かで美しくコンパクトなこの街での生活に取りつかれています。タイ国政府観光庁がタイの観光コンセプトを「Amazing Thailand」としているように、タイには驚くべき新しい経験があふれています。今回は、チェンマイのアメージングな魅力を余すことなくお届けしたいと思います。


筆者(チェンマイのカフェにて)



チェンマイの概要


チェンマイは、タイの首都バンコクの北方720kmに位置する古い歴史と文化を有する古都です。1296年にラーンナー王朝初代メンラーイ王により、チャオプラヤ川の源流の一つであるピン川のほとりに新たに建設され、タイ北部の言葉で「新しい街」と名付けられました。

チェンマイ県の統計によると、チェンマイ県の人口は約180万人に上り、その歴史や発展度合いを背景として、タイ第二の都市と呼び称されています。また、チェンマイに長期滞在・永住する邦人数は2,600人(2024年6月)を超えており、ビジネスでの駐在員の他にもロングステイと呼ばれる長期滞在を楽しむ日本人にとって魅力的な街となっています。

気候はバンコクより涼しく、乾期(114月)は平均気温が約25°C、夜間は最低気温が約12°Cまで下がることがあります。チェンマイ市街地の北側と東側は、標高が高く緑豊かな山岳地帯となっており、平野部より過ごしやすいことから、避暑地としても人気があり、多くの宿泊施設があるエリアです。

チェンマイの旧市街地は約1.6km四方の堀に囲まれ、その内側には寺院等の観光スポッ卜が至る所にあります。旧市街地の東側は、ナイトマーケットや飲み屋が集積しているエリアでもあります。旧市街地の西側は、市街化が進んでこなかったエリアであったため、現在では空港やチェンマイ大学など新しい大規模施設が立地しています。私が住むニマンへミンというエリアは、「チェンマイの代官山」と呼ばれており、新しい飲食店やおしゃれな雑貨屋が並び、日本人を含む外国人が多く住んでいます。

チェンマイへの空路はバンコクのスワンナプーム国際空港、またはドンムアン空港から直行便で約1時間20分と意外に近く、東京-大阪間を移動するイメージです。朝一番に家を出た場合は、バンコク市街に午前9時には到着することができます。また、バンコクから鉄道(所要約13時間)や長距離バス(所要約10時間)が出ています。当面利用する予定はありませんが、時間が許せば鉄道を利用してみたいと思っています。

私が勤務しているランプーン県は、チェンマイから南へ約30kmの位置にあり、北部工業団地やサハ工業団地などの工業団地に電子部品製造企業等が多数進出しています。チェンマイ空港からもアクセスが良く、軽量な電子部品を迅速に空輸することが可能です。日系企業も多く進出しており、タイ北部の日系企業で働く駐在員のほとんどがランプーンの工業団地で勤務しています。私が住居を構えるニマンへミンから勤務地であるランプーンまで40分かけて通勤しています。

チェンマイでの生活

私は大阪からチェンマイへ赴任をしました。バンコクにはプライベートで訪れたことがあったため、近代的な大都市というイメージを持っていましたが、チェンマイは未踏の地であり、またインターネットやガイドブックの情報も非常に少ないため、少しの期待と多くの不安を抱えながら渡航しました。
チェンマイは、空港、ホテル、ショッピングモール、病院などの大型施設であっても英語の通じないことが多いです。そのため、駐在開始当初は想像以上にストレスのある生活でした。しかしながら、数週間、数カ月間過ごすと徐々に慣れてきました。そして1年が経過するころには、チェンマイでの生活が心地良くなってきました。
チェンマイでの生活を一言で表すと、「スローライフ」です。これがチェンマイでの生活を心地良くする理由です。「スローライフ」とは、自然と調和してゆったり生きるライフスタイルに価値や重要性を見いだす生き方です。人と人とのつながりを大切にしようとするタイ人は、他人に対する気遣いができます。そのため、生活面では街でも店でも安心してゆったりとした時間を過ごすことができます。
しかしながら、これは業務でも同様です。つまり、日本人のようにあくせく働く風土がない、ということです。その風土や文化を尊重した上で、日本人駐在員としてビジネスで「スロー」にならないよう心掛けています。

見どころその1 チェンマイ最大のパワースポット(ドイ・ステープ寺院)


ドイ・ステープ寺院にある黄金の仏塔

ラーンナー王朝の歴代王は、城壁の外にも多くの寺院を建立しました。その代表が、旧市街地の北西にそびえる標高1,080mのステープ山頂にあるワット・プラ・タート・ドイ・ステープ(ドイ・ステープ寺院)です。仏舎利を納めた高さ22mもある金色のジェディ(仏塔)が美しく、またチェンマイ市街を一望できる展望台にもなっていることから、この寺院への参拝をなくしてはチェンマイを訪れたことにならないとさえいわれています。タイ北部随一のパワースポットであるこの寺院は、一見の価値ありです。私も毎月パワーをもらいに参拝しています。また、夜に訪れると金色のジェディとチェンマイの夜景がロマンチックな夜を演出してくれます。


見どころその2 豊かな自然に癒やされる避暑地(メーカンポン村)


チェンマイの魅力の一つが、自然に囲まれた美しい自然です。メーカンポン村はチェンマイ市街から約50km離れた山あいに位置する小さな村です。標高約1,300mの自然に囲まれた丘の上に位置しているため、一年中涼しい気候に恵まれています。日本の原風景を思わせる桃源郷のような小さい村であるメーカンポン村のメインストリートの両脇には、飲食店やお土産物屋、古民家を改装した(もしくは本当に古い)カフェが並んでいます。特に暑い乾期に静かな渓谷沿いのカフェで味わうキンキンに冷えたアイスコーヒーは、最高のリラクセーションです。


メーカンポン村の古民家カフェでくつろぎの時間


見どころその3 幻想的なお祭り


タイの祭りの中でも最も美しい祭りとして知られているのが、「ロイクラトン」と「コムローイ」です。毎年旧暦12月の満月の日(2024年は11月15-16日)に行われます。「ロイクラトン」はクラトンと呼ばれる灯籠を川などの水がある場所で流す灯籠流しで、水との関わりに感謝の気持ちをささげるお祭りです。「コムローイ」は熱気球のようなランタンを空に上げるもので、農作物の収穫を祝うお祭りです。夕暮れになれば川に灯籠、見上げると空にランタンが飛んでいる幻想的な風景を楽しむことができます。キンキンに冷えたタイ発祥の「シンハービール」を片手にぜひご覧になってください。


ロイクラトン祭り(灯籠流し)


コムローイ祭り(ランタン飛ばし)


見どころその4 週末ににぎわいを見せるナイトマーケット


サンデーマーケットにてタイパンツを購入

チェンマイのナイトマーケットは有名であり、週末限定のサタデーマーケット、サンデーマーケットは一見の価値ありです。地元タイ人も観光客も一斉に集まり、時間によっては歩くのが困難になるほどです。特に毎週日曜日に開催されるサンデーマーケットでは約1kmの歩行者天国にチェンマイの民芸品やリーズナブルな屋台が所狭しと並びます。私のお勧めは象のデザインが描かれたタイパンツです。独特のデザインなので日本ではくのは少し恥ずかしいですが、快適な着心地なのでリゾート感覚でぜひお買い求めください。


番外編 チャレンジングなゴルフコース


仕事仲間との休日(チェンマイ近郊のゴルフ場にて)

年間平均気温が約27°C前後と過ごしやすい気候のため、チェンマイには多くのゴルフ愛好家たちがこぞって訪れてきます。主要な8カ所のゴルフ場は、チェンマイ市街地から車で約1時間以内という距離にあり、それぞれ多彩な起伏を生かした緑豊かなコースとなっています。特に私のお勧めは、ガッサン・クンターン・ゴルフリゾートです。ここは、山、池、花に囲まれたコースであり、バンコクに向かう鉄道がゴルフ場の横を駆け抜けるリゾート感漂うゴルフ場です。山岳コースで起伏があり、池が多くチャレンジングなコースですが、ハイキング気分が味わえるので楽しめます。先日も10個以上のゴルフボールを池に飲まれながら、エンジョイしました。


おわりに


チェンマイは日本から直行便も出ており、またバンコクからも意外と簡単にお越しいただくことができるロケーションです。タイに住んでいながら、お越しになったことのない方も多くいらっしゃると思います。今回の記事ではチェンマイの魅力の一部をお伝えすることができたかと思いますが、百聞は一見にしかず、です。
ビジネスの拠点として、また喧騒を忘れることができる避暑地としても魅力の詰まった街です。ぜひとも足を運んでいただければと思います。

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