私の第三の駐在国・都市、ドイツ・デュッセルドルフ

Kanematsu GmbH
Electronics and Devices Division
General Manager
高松 哲生

私は、2021年6月よりドイツ・デュッセルドルフに駐在しています。台湾・台北、米国・ニュージャージー州に次いで、3回目の海外駐在となります。

どんな街と国なのか?と問われるときにいつも答えるデュッセルドルフとドイツの魅力についてご紹介したいと思います。

おしゃれな街


デュッセルドルフは、ドイツの北西、ノルトライン・ヴェストファーレン州の州都であり、ライン川東岸に位置しています。人口は64万人。ドイツで7番目に人口が多い都市です。市内の中心から車で10分の所に航空会社ユーロウイングスのハブ空港であるデュッセルドルフ国際空港があり、南に車で小一時間走ると、人口100万人のドイツで4番目の大都市ケルンがあります。

デュッセルドルフ出身の有名人には、詩人・作家のハインリヒ・ハイネ、作曲家のロベルト・アレクサンダー・シューマンなどがいます。旧市街には、ハイネの生家が今でも残っています。

旧市街と新しい建物が混在しており、運河と並木がきれいなケーニヒスアレーを中心に有名ブランド店が立ち並び、若者が多く、高級車が市内を走っています。デュッセルドルフの外国人登録者数は15万人。なんと人口の22%であり、街を歩いている人を眺めていると国際色が豊かです。このような街なので、「デュッセルドルフは、どんなところ?」と聞かれると、私はいつも「おしゃれな街」と紹介しています。

日本人に住みやすい街


ラインクニー橋より旧市街を望む

第2次世界大戦前、日系企業のドイツの拠点は国際的な港湾都市ハンブルクに置かれていましたが、戦後、機械工業、重工業に対する日本の需要が大きく伸び、日系企業は「ルール工業地帯の事務机」と呼ばれ脚光を浴びていたデュッセルドルフに拠点を移しました。弊社のドイツ会社もハンブルクに1959年に創設され、現在はデュッセルドルフに移って来ています。

外務省の2021年10月1日発表の統計によると、デュッセルドルフの日本人の数はトルコ人、ギリシャ人、ポーランド人、イタリア人、シリア人の次に多く、7,144人が在留しています。デュッセルドルフの人口が64万人ですので、人口比率は1.1%。欧州の都市では、ロンドン、パリに次ぐ人口です。日本の進出企業は、在デュッセルドルフ総領事館の管轄下では、642拠点で5万人を雇用していると言われています。デュッセルドルフでは日系企業からの税収レベルが高いため、日本人、日系企業に対してとてもサポーティブな状況です。他のドイツの都市より、日本人向けのビザ発給もスムーズといううわさも聞かれます。

そのため、日本人が経営しているレストランも約20店と多く、その他にスーパーが3店舗、本屋、不動産屋、クリーニング屋等もあります。いつでも日本の食材が手に入り、日本食が食べられるので、日本食が大好きな私にとっては、非常に良い食環境です。近隣のオランダの日本人駐在員もデュッセルドルフに買い出しにいらっしゃると伺います。

毎年、Japan Tag(日本デー)という日本祭りがあり、近年コロナ禍で中止となっていましたが、2022年は5月21日に2年ぶりに開催されました。テント等の出展は例年より少なかったそうですが、ドイツ国内および周辺国から多くの日本文化好きの方がお越しになり、盛り上がりました。エンディングでは、日本の花火師が打ち上げる花火大会が開催され、久しぶりに観賞する日本の花火に感動しました。


ゴルフ天国


デュッセルドルフ近郊のゴルフ場にて

私の趣味の一つはゴルフです。実は大のゴルフ好きであり、赴任間もない頃、住居も決まっていないのに、天気の良い日が続いたので我慢ができなくなり、週末に紹介していただいたゴルフ場に単独でプレーに出掛けました。当時、まだ車も手に入れていなかったので、ゴルフバッグを担ぎ、路面電車とタクシーを乗り継いで、ゴルフプレー代以上のコストを掛けてゴルフ場まで行ったのですが、この話をすると、駐在員の皆さんにびっくりされます。

デュッセルドルフ近郊には、車で30分前後の圏内に10ヵ所以上のゴルフ場が存在します。ほとんどがゲストでも予約してプレーができます。プレー料金も55ユーロからと安く、ゴルフコースのコンディションも割としっかりしており、日本と比較しても大変お手頃です。

当地では一年を通してプレーはできますが、湿気が少ない5−8月が気候的にもベストシーズンです。2022年、欧州は猛暑で降雨量が少なく、芝がだいぶ枯れているのが残念ですが、グリーンは青々としており、青空の下でゴルフをして、プレー後にゴルフ場のテラスでドイツビールを飲みながら食事をするのが至福のひとときです。

デュッセルドルフは日本人のゴルフ人口が多く、「日本クラブゴルフ同好会」「シングル会」「地球倶楽部」等さまざまなゴルフの集まりがあるので、それらの会や大学のOB会、大学対抗戦のゴルフに参加して当地での交友関係を深めています。


観光大国


ドイツに来る前は、ドイツは車、機械産業の印象が強く、すごい工業国であちこちに工場がひしめくイメージを抱いていましたが、実際に来てみると、そのイメージはすぐに覆されました。都市の郊外に出るとすぐに広大な農地、森があり、そこに小さな町が点在し、町には必ず教会の塔が頭を出しているなど、メルヘンチックな風景を楽しむことができます。教会だけでなく、さまざまなタイプの城が数多くあります。実はドイツは世界遺産が51ヵ所と、イタリア(58ヵ所)、中国(56ヵ所)に次いで世界で3番目に多い国です。

私のもう一つの趣味は写真であり、風景や花の写真を撮るのが好きなのですが、撮影スポットが豊富にあるので、休日を利用していろいろな場所を回り、撮影してはSNSで発信しています。デュッセルドルフは位置的に周辺国であるオランダ、ベルギー、ルクセンブルクを車で2時間前後で訪問できるので、そちらへも遠征し、世界遺産を回っています。

先日は、600年以上もの長い歳月をかけて1880年に完成したケルン大聖堂を訪れました。大きくそびえる2本の塔の一つの階段は533段ありましたが、上り切って現れた景色は本当に素晴らしかったです。駐在中に全ての世界遺産を制覇することは難しいですが、引き続き訪問を続けたいと思います。


ケルン大聖堂の塔の上からの景色


サッカー男子日本代表・米国戦 エスプリ・アレーナにて


プラネタリウムを改装したトーンハレ大ホール

観光のカテゴリーに入るか分かりませんが、スポーツ観戦も楽しみの一つです。当地の方は特にサッカーに熱狂的で、地元のFCデュッセルドルフの応援や、ドルトムント、ケルン、レバークーゼンなど周辺都市のスタジアムでの試合観戦も楽しめます。幸運にも日本代表の田中碧選手のデビュー戦、同じく日本代表の堂安律選手の決勝ゴール、日本代表の米国戦も観戦することができました。

スポーツだけではありません。ドイツは、バッハ、ベートーヴェン、ブラームス、メンデルスゾーン、ワーグナー、シューマンなど、著名な作曲家を輩出した国です。よって、音楽イベントが非常に身近で開催され、クラシックコンサートやオペラの鑑賞を気軽に楽しめます。私も幸運にも世界的な人気を誇るロシア出身のピアニスト、キーシンのウクライナ・チャリティーコンサートをデュッセルドルフで鑑賞し、素晴らしいピアノ演奏を聴くことができました。


とてつもない経済力


ドイツに住んでみると、この国にはとてつもない経済力があるように感じます。

ドイツでは、日曜はサービス業の店舗は基本的に閉店しており、スーパー、デパート、ホームセンター、レストランもほとんど営業していません。また、労働者の就業スタイルは、会社にもよると思いますが、残業はほぼなく、決まった就業時間内で仕事を終わらせ、さっさと帰宅します。コロナ禍で在宅勤務が普及し、通勤渋滞を避けるために時差就業も一般的です。夏休みはバケーションとして2−3週間のお休みをまとめて取得します。年内に有給休暇を完全に消化することについて、非常に真剣です。

そして公共のインフラに関しても、速度制限のないアウトバーン(高速自動車道路)が国内に張り巡らされており、総距離1万3,000km(日本は9,000km)の全てが無料。これはすごいことです。このように、残業などは一切行わず、長期間の休暇を取り、高速道路は全て無料であるにもかかわらず、ドイツは米国、中国、日本に次ぐ世界で第4位の国内総生産を誇る国なのです。こんなことができるドイツの経済力は恐るべきものだと感じています。なぜそれが可能なのか? 私見ですが、何事も効率的・合理的な考え方や行動を重んじ、メリハリをつけて休むときは全力で休み、働くときは集中的に働く文化が、経済力のもとになっているのではないかと思います。

寛容、包容力のある国

ドイツには「政治的に迫害された者はひご権を有する」とした有名な基本法があります。そして、世界で最も寛容な難民政策をとっており、欧州では、トルコに次いで多くの難民を受け入れています(2020年のデータでは120万人)。私はUberの配車サービスが好きで、頻繁に利用して、ドライバーの方と会話を楽しむのですが、ドライバーはシリア等からの難民の方が多いです。彼らは、ドイツに移住し、就学し、大学も出て、車を購入し、Uberドライバーをしているのですが、その背景には、ドイツが過去の出来事の反省により難民を受け入れていることと、ドイツでは大学も含め授業料が無料ということがあります。日本ではどちらも考えられないことであり、こちらで生活をして目の当たりにしたドイツのこの寛容さと包容力にびっくりしています。

最後に


息子たちと乾杯(筆者:左から2番目)

ドイツ・デュッセルドルフで1年4ヵ月ほど生活をしてきて、何か自分の中で、生き方、考え方が変わってきた気がします。ドイツを見習い、効率的に仕事のオン・オフをはっきりさせることを心掛け、2022年は、社会人になって初めて夏休みを合わせて2週間取得し、日本から来た家族とドイツ国内外旅行、サッカー観戦、ショッピング、食事を楽しみました。

今のドイツ生活の課題は、ドイツ語の習得です。赴任前、赴任直後は勉強を継続していましたが、最近はサボっています。ドイツではほぼ英語が通じるので、甘えてしまいます。せめて、ドイツ語で人を笑わせるレベルにまでなりたいです。がんばります。

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