世界一美しい街 西オーストラリア州・パース

Iwatani Australia Pty. Ltd.
Marketing Manager
穐鹿 寛治

はじめに

パースは、オーストラリア連邦の西オーストラリア州の州都で、世界有数の美しい街の一つとして知られています。私も2018年8月に赴任した直後から、すっかりパースに魅了されていますが、今回は、表題に負けぬよう、パースの魅力をできるだけご紹介してみようと思います。


西オーストラリア州の州都パース


まずは西オーストラリア州のご紹介。同州は、オーストラリア全国土の約3分の1(日本国土の約7倍)を占めるにもかかわらず、その約9割は砂漠・半砂漠地帯です。人口は約260万人、その約9割がパースをはじめ南西部の都市に集中して住んでいます。南半球に位置するパースには、日本とは時期が真逆ですが四季があり、それぞれの季節を感じることができます。春は、桜こそ見られませんが、代わりにジャカランダという薄紫色をした花木が街中に花を咲かせます。夏は、40℃を超える日もありますが、カラッと乾燥した気候のため、じめじめとした日本の夏を思うとそこまでの暑さを感じさせません(もちろん暑いですが…)。秋には、Perth Hillに行けば、紅葉も楽しむことができます。冬は、最低気温が10℃を下回り、朝晩は肌寒さを覚えますが、日中は過ごしやすい温暖な気候です。


パース市街地、エリザベス・キー

そんなパースで私が一番驚いたのは、フレンドリーで社交的な人々の気質です。アパートのエレベーター内や、バス停でバスを待っている際、見知らぬ人同士でも会話が始まります。スーパーのレジで、レジ係の店員さんと初見のお客さんが、お会計が終わっているにもかかわらず世間話を続けている場面は、せっかちな日本人には信じ難い光景かもしれませんが、パースでは日常です。

ここも日本とは大きく異なりますが、西オーストラリア州は、鉄鉱石・天然ガス等、豊富な資源に恵まれた州で、資源ビジネスが同州経済の重要な役割を担っています。なお、当社は子会社のDoral社にてミネラルサンド鉱山運営等の鉱産資源ビジネスを手掛けており、また、近年では、水素上流プロジェクトにも参画しています。


ゼロコロナ政策→州境開放へ


西オーストラリア州では、2020年初から世界的に広まった新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、州境を閉ざし人の出入りを限りなく抑えるゼロコロナ政策を採用し、東側の州が徐々に州境の閉鎖解除を進める中でも、2022年3月3日まで約2年間(長かった…)、同政策を貫いてきました。この間、基本的に西オーストラリア州の居住者は州外へ出られず、私たちのような外国人居住者は、州外へ出ると再入州できなくなるため、事実上、州内から出られない状況となりました。

けれど、そのおかげもあって、休暇を利用しては訪れた州内のさまざまな場所の魅力に気が付くことができたため、今回はその経験を踏まえ、西オーストラリア州の素敵なスポットをご紹介します。

キングスパーク

まずは、パースの小高い丘の上にあるキングスパーク。パース市街地を一望できる大きな公園で、敷地面積は400haにも及び、公園内を車で回るのにも約20分かかります。整備された一部区画を除くと、大半は原生林のまま保たれており、まさに都会のオアシスです。公園の正面入り口には白いユーカリの大木並木が立ち並び、並木道を抜け、丘を登っていくと広場があります。広場にはカフェやショップ、戦争記念碑等があり、平日から休日まで絶えずにぎわいを見せています。その丘からの展望はまさに絶景で、パースの市街地やシンボルのスワンリバーを一望できます。また公園内にあるボタニック・ガーデンでは、珍しい植物が楽しめ、初夏になるとさまざまなワイルドフラワーが色とりどりの花を咲かせます。ほかにも、遊具などアスレチックも多数充実しており(とにかく広い公園ですべて制覇するのに2年近くかかりました)、私も晴れの日は子供を連れて出掛け、芝生の上でランチなどを楽しんでいます。ちなみに、パース市内を回る無料巡回バスが走っており、車がなくてもアクセスは抜群です。


キングスパークから眺めるパース


ロットネスト島


ロットネスト島のクオッカ

続いては、西オーストラリア州の海の玄関口であるフリーマントル港から18km沖合、フェリーで30分の位置に浮かぶ島、ロットネスト島。17世紀に発見されたころには無人島だったこの島は、白い砂浜、さまざまな青が混じり合った美しい海に囲まれ、現在では毎年数多くの人が訪れる人気観光スポットです。数年前にプロテニスプレーヤーのロジャー・フェデラーが訪れた際、一緒に自撮りし、一時話題になったクオッカもいます。クオッカは、カンガルーと同じ有袋類の一種で、ロットネスト島に多く生息しています。とても人懐っこく、口角が上がったような口元をしていることから、写真を撮ると常に笑った顔をしているように見えるため、一緒に自撮りをするととても「ばえる」写真が撮れますので、訪れた際はぜひ一度お試しください。島内を巡回するバスもありますが、自転車をレンタルし(フェリーで自転車を持ち込むことも可能です)、島内の多数ある素敵なビーチ、ピンクレイクや灯台を巡るサイクリングもお勧めです。


ブルーム


ケーブルビーチでのキャメルライド

ブルームという地名をご存じでしょうか? パースから飛行機で北に2時間の場所に位置するブルームは、冬場でも30℃を超える常夏のリゾート地で、雨期を外して4−10月(特に7−9月)に訪れるのがお勧めです。パースの暑さはカラッとしているから耐えられるものの、ブルームの夏(1−3月)は雨期となり、蒸し暑い日が多いためです。実はこのブルーム、日本と深い関わりのある土地なのです。ブルームは、南洋真珠といわれる大粒で光沢が美しい真珠の産地で、ブルーム産真珠は世界的に高く評価されています。1800年代後半に高級装飾用の真珠貝の輸出で栄え、真珠貝採取の潜水夫が世界中から集まりました。日本からも多くのパールダイバーが集まり、戦前まではブルームに(名誉)日本国領事館も設置されていたようです。真珠の養殖技術は、1893年に御木本幸吉氏が世界で初めて成功し、その後、栗林徳一氏によってブルームにもたらされました。最初に養殖所が開かれた場所は「クリ・べイ」と名付けられ、ブルームで養殖される養殖真珠は「ミキモト方式」としてよく知られており、日本とのつながりを深く感じます。なお、私がブルームを訪れた際にぶらりと立ち寄ったMatso’s Broome Breweryも、元は日系オーストラリア人のマツモトさんが経営していたお店の跡地に作られたことからその名がついたとのことで驚きです。

ブルーム観光の一番人気は、何といってもローバック湾に見る「月への階段」でしょう。これは、月の光が干潮時の干潟や海面に反射して、まるで月に登る階段のように見える現象で、とても幻想的な光景です。干潮時に満月が昇るのは極めて限られた時期と時間となるため、もちろん一番人気。そのタイミングになると、航空券、ホテル料金が値上がってしまうほどですので、早めの計画をお勧めします。

ケーブルビーチも人気スポットの一つで、ブルームの西側にある22kmに及ぶ白砂のビーチです。広大な白い砂浜と美しい青色をした海のコントラストは素晴らしい絶景で、それだけで十分ともいえますが、さらにお勧めなのが夕暮れ時のキャメルライドです。夕日をバックに鏡面のようなビーチを歩くラクダの隊列は、なかなか経験のできない神秘的な光景です。人気のアトラクションでこちらもお早めの予約必須です。


エスペランス


ラッキーベイにてカンガルーと

美しい海に囲まれた西オーストラリア州ですが、その中でも数多くの名ビーチを有するエスペランスも、訪れたい街の一つです。パースから南東に飛行機で1時間半のところに位置しますが、時間が許せば、車で途中の街に寄り道しながら行くロードトリップ(片道8時間)もお勧めします。その中でも一番の人気スポットは、ラッキーベイ。照り返す日差しで眩しいほど白く、その上を歩くと砂同士がこすれ合い「キュッキュ」と音が鳴るほど細かく美しい砂浜です。オーストラリアの動物といえば、ご存じ、カンガルー。オーストラリア広しといえども、カンガルーに出会えるビーチは限られ、ラッキーベイはその数少ない中の一つです。ラッキーベイは、エスペランスから南東へ1時間ほど車で走った先にあるCape Le Grand National Parkと呼ばれる国立公園内にあるのですが、同公園内には、ラッキーベイ以外にも多数のビーチがあるほか、Frenchman Peakへの登山も楽しむことができるなど、一日では足りないほど見どころが満載です。ただし、人里離れ自然保護された公園には、売店はもちろん、携帯の電波もないので、事前準備が必須です(大自然オーストラリアのあるあるです)。

エスペランス近郊の1時間強のドライブもお勧めです。エスペランス市街地を起点に海岸線(Twilight Beach Road)を西へ20kmほど進んだ地点で折り返し、内陸を通りピンクレイクを眺めながら戻ってくるコースですが(逆回りも可)、道中目に飛び込んでくる美しいビーチや壮大な景色に誘われ、ついつい寄り道しているとなかなか前へ進めません。途中に展望台もあり、上から眺める大自然、白い砂浜と南極海のコントラストは、圧巻です。

マーガレットリバー


ワイナリー(Vasse Felix)にて

最後は、パースから南へ車で3時間半走った先にあるマーガレットリバー。オーストラリアでは言わずと知れたワインの産地で、長い日射時間と少ない降雨量がブドウの発育に理想的な条件となり、世界的にも高い評価を受けています。中でも代表的なのは、カベルネ・ソーヴィニョンやシャルドネです。無数のワイナリーが軒を連ね(間隔はオーストラリア基準)、フルコースのランチを楽しみながら、一品一品に合うワイナリーお薦めのワインを提供してくれるところや、小規模なものの人気のあるところなど、大小さまざまで、自分好みのワイナリーを見つけ出すために、通い詰める方もいらっしゃいます。お酒の苦手な方にお薦めなのは、鍾乳洞で、マーガレットリバー近郊に数多くあります。大規模なものではツアーもあり、ガイドが「グダイ・マイト!(オーストラリア訛りのGood day, mate!!)」ともてなしてくれます。石灰岩からなる洞窟の中に入ると、ヒンヤリとした空気とともに、オーストラリアの大自然とは少し違った、神秘的で繊細かつ芸術的な雰囲気を楽しむことができます。


最後に


いかがでしたでしょうか。西オーストラリア州に長年住みながら、州境封鎖により州外への身動きが取れなくなるまで、今回ご紹介した地へ行ったことがなかったという同僚も多く、この約2年間は西オーストラリアの人にとっても、自州の素敵なところを改めて知る良い機会だったのではと感じています。一人でも多くの方にパースの魅力に触れてもらいたく、国をまたいだ移動が以前のように身近になった際には、ぜひお越しください。

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