サッカー、コーヒーだけじゃない? 知られざるコロンビア

コロンビア三井物産有限会社 新事業開発課杉山 友斗
藤岡 有希

日本でもコロンビア産のコーヒー豆を見掛けたり、2018年ロシアW杯では日本と対戦したりと、名前は身近になっているものの、なかなか日本人の生活には浸透していないコロンビア。本稿ではそんなコロンビアの魅力や生活を紹介いたします。

基礎知識


3本のアンデス山脈が通るコロンビアは豊かな自然に恵まれた国で「生態系のゆりかご」との異名を持ちます。豊かな水資源も特徴で電力の約70%が水力発電で賄われており、農業も非常に盛んで、コーヒーは世界第3位、アボカドは世界第4位の生産を誇っています。同時に世界第2位の花の輸出国でもあり、日本で母の日に贈られるカーネーションは70-80%がコロンビア産です。国土は日本の約3倍。人口は日本の約3分の1の5,000万人でブラジル、メキシコに次いで中南米3位です。首都ボゴタは人口800万人超の大都市で、人口500万人以上の都市の中で最も高い標高2,700mに位置します。交通手段は電車・地下鉄がないため、専用レーンを走るバス、トランスミレニオが市民の足となっています。地下鉄建設構想は50年にわたる議論の末、やっと2019年に入札が実施され、紆余(うよ)曲折を経て地上を走行するメトロになりましたが、2028年からの開業を予定しています。

ボゴタ以外にもメデジン・カリ・バランキージャなど、数百万人単位の都市が複数存在することもコロンビアの特徴で、住民は自分の生まれた故郷に非常に誇りを持っています。


ボゴタの夜景


スポーツ

コロンビアと聞くとサッカーを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。2020年4月時点の最新FIFAランキングでは10位につけています。2018年6月に、グループリーグ予選の日本・コロンビア戦をアウェーで観戦しました。自国の勝利を信じて疑わなかったコロンビア人たちも、後半にビハインドの展開になると言葉が少なくなり、敗戦後はそそくさと解散していたのが印象的でした。

一方、峻険(しゅんけん)なアンデス山脈の地形を活かした自転車競技も非常に盛んで、世界三大レースの一つであるツール・ド・フランスでは2019年にコロンビア人選手が総合優勝に輝くなど、サッカーと並んで国民に人気の高いスポーツの一つです。またボゴタ市でも自転車を積極的に交通・スポーツ政策の一つに取り入れており、毎週日曜日・祝日にはCicloVia(自転車・歩行者天国)と呼ばれる道路の開放が行われ、自転車を楽しむ人を中心に、ジョギングに励む人やローラースケートをたしなむ人でにぎわいます。


日本・コロンビア戦を観戦する杉山氏(中央)


Ciclo Via(自転車・歩行者天国)


国民性


お祝い事や休日は家族で集まって飲んだり踊ったりするフィエスタ(スペイン語で「パーティー」を意味する単語)が大好き。ホームステイ先の家族も、毎週日曜日は親族の集まるフィエスタを開いており、欠かさず呼んでもらいました。一方でオフィスでのコロンビア人は仕事に真面目で、一般的なラテン系のイメージとは少し異なる一面を見せてくれます。家族を大切にしつつ仕事とプライベートのオンオフの切り替えがうまいところは、日本人もコロンビア人から見習うべき特徴の一つかもしれません。

自分の生まれた国・街にとても愛着を持っている半面、知らない世界に飛び出していくのはやや苦手な印象です。北米や欧州に留学・仕事で移住する方の数と比較すると、アジアは未知の世界といった考えを持つ人が多くいます。ただ日本に関しては1900年代初頭に移民が到着して荒れ地を開墾して農業を営んだ歴史のある国、自動車・家電製品・アニメーション等の技術や芸術に優れた国という印象が強く、コロンビア人にとってイメージが良い国の一つです。

国民性とは少し話題が変わりますが、コロンビア人は非常に早起きで生活リズムは朝型です。例えば、子供の頃から小学校や中学校は朝の6時半から授業が始まります。ジム等の営業時間も5時半から始まるところが大半で、オフィスワーカーは朝にジムで運動をしてから、仕事に向かうのが一般的です。

食生活

コーヒーがおいしい国だけあって日常的にコーヒーを飲みますが、ホスピタリティあふれる国民性からかおいしい豆はほぼ全量輸出おいしいコーヒーが飲める場所は多くはありませんでした。そんな中で、2002年12月についにコロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)がJuan Valdez®という名前でコーヒーチェーンの営業を開始。今では国内だけでなく米州を中心に13 ヵ国で100%コロンビア産のコーヒー豆を使用したおいしいコーヒーを消費者に届けています。

朝食はトウモロコシ粉でできたアレパを食べるのが伝統的。いわゆるコロンビアのパンで、味が特についているわけではないので、チーズやハム、目玉焼きをのせていただきます。朝食に欠かせないのが、ホットチョコレート。固形のチョコレートバーをお湯で溶くため、ココアとは異なり軽やかな飲み物です。弊社オフィスでの昼休みは1時間ですが、現地の多くの企業が1時間半-2時間の昼休みを設けており、外食する人々で街はあふれます。昼食が主食のため、日本人が驚くような量を注文し、夕食は少量なのがコロンビア流です。コロンビア料理は、ジャガイモ、トウモロコシ、豆類、コメ、肉類を使うことが多く、ヘビーですが日本人にとって抵抗感がないものがほとんどです。首都ボゴタ発祥の4種のジャガイモのスープ「アヒアコ」です。

祝い事のフィエスタに欠かせないお酒は、クルブ・コロンビアという国産ブランドに代表されるビールが好んで飲まれるのと同時に、豊富に生産されるサトウキビを原料とする蒸留酒であるアグアルティエンテも人気があります。度数は25-30%で地域ごとに独自のブランドが見られ、いまだに一部の県は他地域で販売されているブランドの販売を禁止しています。


Juan Valdez®店内


アヒアコ


コロンビアの朝食


フィエスタに欠かせないお酒


経済・文化


コロンビア発祥の宅配アプリのRappi(ラッピ)は2018年から急速に普及し、評価額10億ドル以上、非上場、設立10年以内のベンチャー企業であるユニコーン企業として認知されています。買い物からレストランのデリバリー、ATMからの預金引き出しまで幅広く代行サービスを展開。コロンビアでの日常生活からは切っても切り離せない存在になっています。メキシコ・ブラジル等の他中南米諸国にも進出、日本のソフトバンクも2019年に10億ドルを投資するなど、さらなる飛躍が期待されています。

ラッピが普及し買い物で外出する頻度が減ったコロンビア人ですが、Netflixが普及している中でも、映画館は根強い人気があります。カップルだけでなく家族総出で映画を見に行くことは代表的な週末の過ごし方の一つです。1本最大500円程度(割引のある日は200-300円)とお手頃でまさしく庶民の娯楽といえます。

観光名所


夜のカルタヘナの街並み

コロンビアで最も有名な観光名所は、カリブ海に面した石造りの街並みが今も残るカルタヘナです。1984年にはユネスコ世界遺産として登録され、コロンビアが誇るノーベル文学賞受賞作家、ガルシア・マルケスも「世界でいちばん美しい街」とたたえたといわれています。街はスペイン植民地時代の1533年に入植者により建設されました。南米からスペイン本国に輸送される金の集積地としての機能から、海賊からの攻撃をしばしば受けることもあり、街は防壁で囲まれ周囲には要塞(ようさい)が造られました。今でも当時の歴史的な建造物を見ることが可能で、その街並みは植民地時代をしのばせます。通りには色とりどりの花々が咲き乱れるバルコニーが特徴的なかわいらしい建物が並んでいます。米国人にとってはマイアミ・カンクンに並ぶ保養地として人気が出ており、2019年には旅行業界のアカデミー賞とされるWorld TravelAwardsによって南米最優秀ハネムーン観光地として賞を受賞しています。

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