微笑みの国 タイ

THAI CHORI CO., LTD.
渡部 俊太郎

サワディーカップ!(こんにちは)。

タイ蝶理の渡部俊太郎と申します。2017年8月よりバンコクにあるタイ蝶理に赴任し、仕事を始めました。タイには10年を超えて仕事をされている経験豊かな日本人の方が多い中、せんえつではありますが私が約2年半の駐在経験で感じたことをお伝えします。

日タイ両国は600年にわたる交流の歴史を持ち、伝統的に友好関係を維持しています。

長年の両国の皇室・王室間の親密な関係を基礎に、政治・経済・文化等、幅広い面で緊密かつ重層的な関係を築いており、人的交流は極めて活発です。在留邦人数は7万5,647人(外務省発表:2019年10月1日時点)であり、訪タイ日本人渡航者数は2018年に164万人と多く、日本からの旅行者・出張者も含めると多くの日本人がタイに来ています。訪日タイ人も2018年には100万人の大台を突破し、両国での往来はますます盛んになっています。確かに私の友人や家族も何度かタイへ遊びに来てくれましたし、タイは日本人が気軽に来られる国だと感じています。

駐在の経緯・日々の業務

2017年の3月にタイでの商売を拡大すべくタイへ赴任する話が出ました。過去2009年から2015年に中国(上海)に6年の駐在経験があり、2015年に日本に帰任してから2年半たたない早い段階で2度目の海外駐在の話が出て驚いたことを覚えています。当時、タイへは出張ベースで来たことがあるものの、現地での生活がどのようなものなのか想像したことはありませんでした。しかし、急速に経済成長しているASEANにおいて仕事をしてみたいと思っていたこともあり、このチャンスはうれしいものでした。2017年8月からバンコクに赴任してみると時間はあっという間に過ぎて、はや2年半がたちました。

多くの日系企業が早い段階でタイに進出しており、各社長い歴史を有しています。私が勤務するタイ蝶理は1974年に海外現地法人として設立され、繊維・化学品商材の取り扱いがあります。2014年にはタイ蝶理設立40周年を祝う会があり、盛大であったと聞いています。私の業務は繊維原料である糸を販売することです。主にポリエステル・ナイロン長繊維を販売しており、生地を製造する工場が顧客となります。糸の用途は資材・衣料など多岐にわたります。業務を通じてタイ人の性格・仕事の進め方・考え方など日本とは異なる点も多く、最初は戸惑いがありました。2年半たった今でもどうしたらよりよくコミュニケーションを図れるのか模索しながら奮闘する日々です。


筆者


アユタヤ遺跡


経済状況


タイの主要産業は観光業と製造業です。農業は就業者の約40%を占めますがGDPでは農業は12%にとどまっています。製造業の就業者は約15%でGDPの約34%、輸出額の90%弱を占めるという構造です。

タイは伝統的に柔軟な全方位外交を維持しつつ、ASEAN諸国との連携、日本・中国・米国といった主要国との協調を外交の基本方針としています。諸外国のメーカーの製造拠点は賃金が高くなっている中国からタイへシフトしてきています。ただ直近の2019年は、当初のGDP成長率見通しを4%から3.8%へ引き下げました。要因の一つとして、今までの不安定なタイ国内の政治情勢や、世界経済に影響を及ぼす「米中貿易摩擦」が考えられます。また昨今の新型コロナウイルスの影響で物流も停滞しており今後の経済状況は不透明感が増してきました。

タイでは自動車産業が特に盛んであり、街中を見ると走っている車の9割近くが日本の車であるように感じます。多くの日系自動車メーカーをはじめ、海外の自動車メーカーの工場も進出しています。一時期はタイ国内の生産台数が300万台に迫るのではないかという時もありましたが、近年では200万台レベルで落ち着いています。タイ工業連盟(FTI)が発表した2019年の自動車生産台数は201.4万台でした。年間生産台数200万台超えは2年連続となります。2020年通年の生産台数も200万台(輸出向けと国内向け共に100万台)と2019年と同程度になるとの見通しを発表しています。自動車の生産台数減は私の仕事上にも影響があり、タイの自動車産業が安定的に増加してほしいと願っています。

輸出台数が落ち込む原因としては米中貿易摩擦もありますが、タイの通貨であるバーツ高も影響していると考えられています。ここ数年はバーツ高が進行してきました。世界的不況の中でタイは安定的な経常黒字を出していることがバーツ高の主因と聞いています。経常収支の中身を見ると、貿易収支とサービス収支でかなりの収益を上げている構造です。サービス収支の中でも旅行が大きな割合を占めます。タイへの旅行者は中国人が一番多いのですが、直近ですと新型コロナウイルスの影響で旅行客も減少し、投資も落ち込み資金の流入が少なくバーツ安へ動いています。バーツ安は輸出が有利になるため、今後輸出台数が増えていくかもしれません。


自動車関連企業が多いシラチャの夕焼け風景
(レストランから撮影)


社会状況

近年、タイでの大きな変化としては、2016年10月13日に1946年の即位以来70年間という長きにわたりタイを統治し、国民にとって多大なる尊敬と敬愛の対象であったプミポン国王(ラマ9世)が崩御されたことです。タイ政府と国民はプミポン国王の崩御に際し、国を挙げて悼み約1年間の服喪期間が設けられました。プミポン国王が崩御されたのは私の赴任前ではありますが、当時の話を聞くと皆、黒い服を着て喪に服していたようで、国民の前国王への敬愛の深さを感じました。現在は新国王としてワチラロンコン皇太子(ラマ10世)が即位されています。

また2019年3月にタイ王国の下院(両院制議会における第一院であり、日本における衆議院)の議員を選出するタイ総選挙がありました。2014年のクーデターによりタイ貢献党(タクシン派)政権が倒され、軍が主導する暫定政権が続き総選挙の延期が繰り返されてきました。そのため総選挙が行われるのは2011年の総選挙以来8年ぶりとなり、5年に及ぶ軍政の評価となる総選挙で、民政復帰が実現するかが焦点となりました。結果、タクシン元首相派のタイ貢献党が最多議席を獲得しましたが、過半数には至りませんでした。民政移管に向けて行われた総選挙でありましたが、実質的には民政の意見が一部取り入れられたものの軍政が継続する状況となりました。

生活状況

タイで生活してみると日本人が生活しやすいことが実感でき、親日国であることを強く感じます。タイ人の皆さんは優しいですし、非常におっとりしています。仕事をしているとそのスピード感が日本と違い苦労することもありますが生活においてはサバイディー(心地よい)です。

バンコクではタイ料理はもちろん、世界各地の料理が楽しめます。屋台ではカオマンガイ(チキンライス)やバミーナム(卵麺スープ)などが約50THBとお手頃価格でおいしいです。時々すごく辛い料理がありますが、食べ慣れてきたのか私も徐々に辛さに強くなってきた気がします。

移動手段は地下鉄(MRT)や電車(BTS)・タクシーはもちろんのこと、街中のソイといわれる小道ではトゥクトゥク(三輪タクシー)・シーロー(軽トラ)・バイクタクシーを利用するなど、移動の選択肢は多くあります。家族で外出する際は移動する距離によって交通手段を使い分けており、交通費も日本と比べると安く気軽に外出することができます。雨期の時期など突然のスコールでずぶ濡れになることもありますが、それはそれで東南アジアの醍醐味(だいごみ)として楽しんでいます。飛行機も格安LCCがあり、連休があるとタイ国内旅行やASEAN近隣諸国へ手軽に旅行に行くことができます。日本にいた時より家族と一緒に過ごす時間が増えたように感じます。

タイは年中暖かく日本よりプレー代が安く気軽にゴルフに行けます。私は日本にいた頃は年に数回程度しかゴルフをしませんでしたが、タイに来てからは月に1-2回とゴルフをする機会が増えました。ゴルフスコアは上手とは言えませんが、日本にいた頃よりは上達したと思います。

私はタイへ赴任して半年後に家族をタイへ呼び寄せましたが、家族もタイでの生活を気に入っています。子供は泰日協会学校(バンコク日本人学校)に通っていますが、かなりのマンモス学校です。小学部・中学部の2課程から成り、小学生が2,100人、中学生が500人ぐらいと多くの日本人が通学しています。運動会ともなると子供・保護者を合わせて大勢がグラウンドに集まり、遠くから競技している子供たちを見ていると自分の子供がどこにいるのか分からなくなるほどです。

習い事も語学・スポーツ・料理・芸術等、どのジャンルでも日本人向けのスクールがあるので、新しいことも始めやすく、私の妻と子供もタイに来てから新しい習い事を始めました。私もタイに来た当初はタイ語を勉強し、少しだけタイ文字が読めるようになったのですが、普段の生活で使うことがなく今はほとんど忘れてしまいました。語学は継続することが大切であると実感しています。これからまたタイ語の勉強に再挑戦しようと思っています。


家族でタイ国内ナコンパトム旅行


以上のようにタイは世界の中でも有数の日本人が暮らしやすい国だと感じています。仕事で苦労する面もありますが生活面は非常に快適です。皆さま、ぜひタイに仕事・プライベート問わずお越しいただければ幸いです。私も仕事を一生懸命してタイ経済に貢献し、またプライベートも充実させ、微笑みの国タイにおいて自らが微笑んで生活できるよう日々努めていきます。

微笑みの国 タイ 誌面のダウンロードはこちら