フランス第2の都市、 リヨンへようこそ!

Nagase(Europa)GmbH
齋藤 真人

リヨンの紹介


フランス、リヨン駐在になって1年。フランス南東部、スイスやイタリアと国境を接するローヌ・アルプ地方に位置し、古くから繁栄してきたフランスの第2の都市、リヨン。フランス四大河川の一つに数えられるローヌ川とヴォージュ山脈に端を発するソーヌ川が合流する地域に広がり、豊かな水の恵みを受けて、ローマ時代から長い歴史を重ねてきた建造物が立ち並ぶ、世界遺産の街です。地理的に、ボージョレ、ローヌ、ブルゴーニュのワイン、そしてブレスの鶏肉、さらにはシャロレー牛といった食材の産地に恵まれていることから、「美食の街」としても世界的に有名です。

また、インターポール(世界刑事警察機構)、欧州ウイルスセンター、WHO伝染病監視センター、バイオセーフティーレベル4(P4)研究所といった国際的な機関が数多く置かれ、特に保健医療、化学、薬学分野において国際的規模の企業に注目される都市でもあります。


リヨンのシンボル、フルヴィエール大聖堂


古代ローマ劇場


美食の街、リヨンでの食生活は? 


私が働くリヨンは、世界的に有名な料理人であるポール・ボキューズの本拠地でもあり、フランスでも特に美食の街と呼ばれています。ミシュランの星付きレストランが20店ほど。手頃な価格で多様な料理を味わえる点もフランスの美食の首都、リヨンの魅力の一つです。ハムやソーセージなどの肉製品、ソーセージブリオッシュ、パテ・クルット、魚のツミレ団子「クネル」、デザートのプラリーヌ・タルト…名物料理はたくさんありますが、これについては世の中でたくさん紹介されていますので、ここでは日本とフランスの食習慣の違いについて触れたいと思います。

まだ家族が来仏する前のこと。オフィスでサンドイッチとコーヒーというごく一般的と思われる朝食を取っている私を見て、驚いた現地スタッフが一言。「朝からそんなに食べるの?」

聞くと、フランスでは朝食を食べる人は少ないそうです。カフェオレだけ、食べるとしてもクロワッサンやパン・オ・ショコラを少しかじるだけといった具合です。

では昼食は? 日本では昼食はさっと済ませられるものが定番でしたが、フランスは違います。それは、小学校の給食でもしかり。娘の通う学校を例に見ても、昼休みは1時間半。日本人の舌に合うかという問題はさておき、リヨン市が定めている学校給食というのに、数種類のサラダ、魚か肉を選べるメイン、取り放題のパンにチーズ、フルーツにデザート、高校生にはコーヒーも! 特にデザートの充実には目を見張るものがあります。

近年では、フランスでも時間に追われる人が多く、オフィスでの昼休みは1時間が一般的になっているようですが、昔は2時間が当たり前だったとか。

昼食をしっかり取るフランスの夕食は、日本より遅い時間になります。レストランのオープンは19時半が一般的。混み合ってくるのはだいたい20時を過ぎた頃で、22時くらいまで食事を楽しみます。こちらも老若男女問わず、デザートまでしっかりと。そう考えると、朝食が少なくなるのは必然なのかもしれません。

リヨンでは、面白いことに、オープン時間ぴったりに入店すると、必ずといっていいほど、日本人に遭遇します。どの家族もオープンまで待てないといった様子。食習慣というのは、なかなか変わるものではないですね。


ポール・ボキューズの壁画


学校のカフェテリア(デザートとチーズの充実度!)


リヨンの交通手段


リヨンの市内交通機関は Transports enCommun Lyonnais 略して TCL(テ・セ・エル)と呼ばれています。リヨン市内には地下鉄・トラム・バス・ケーブルカーの4種類があり、どれでも同じ切符で乗ることができます。切符は距離に関係なく均一料金です。1回券は最初に使いはじめてから、1時間内であれば何度でも乗車可能です。

それぞれの交通機関に共通しているのが、一部のバス乗り場を除き、次の便があとどれくらいで来るか知らせてくれる掲示板があること。日本の何時何分に出発という表示よりも「Prochain 3min(次は3分後に到着)」という表示は実に明確で時計を見る必要もなく、意外に重宝しています。時刻表通りは期待できないということも、もしかしたらあるのかもしれませんが。

パリをはじめ、フランスでは多くの主要都市で行政が自転車のシェアリングサービスを運営しており、便利に利用されています。実は、このシステムが初めて導入されたのもリヨン。2005年に導入されたVélo'Vは、1.8ユーロで30分、4ユーロで24時間乗り放題。市内および近郊に300以上のスタンドがあるので、返却に困ることもありません。

このように、便利な交通機関を持つリヨンですが、この街に来て驚いたのは、キックボード(トロチネット)愛用者の多さです。老若男女問わず、本当によく使われている移動手段です。まだ少数派ではあるものの、ホバーボードやマジックホイールで通勤している人も見掛けます。通勤や通学に使っても自転車と違って場所を取らず、メトロやトラムに乗るときには、畳んで手に持って運べるので便利です。日本では子どもの遊具と思っていましたが、わが家でもすぐに家族全員分のキックボードを購入。私が愛用しているのは、身長190cm、体重100kgまで使用可能な「正真正銘大人用」のキックボードです。

リヨンでは、2018年9月から電動キックボードのレンタルもスタートしました。このLime-Sは、自転車や自動車のシェアリングサービスのようなステーションはないため、目的地でそのまま乗り捨てできるのが特徴です。ショッピングセンターや駅の構内、公園の中など、こんなところに?と思うようなところに乗り捨てされているのをよく見掛けます。珍しさからか、観光客には自転車よりも人気があるとか。

まだ導入されたばかりのこのシステムには、バッテリーがなくなって途中で動かなくなってしまうケースや、公道を利用する際の問題点など、さまざまな課題が生じているようです。

利用者や歩行者の安全面を含めた改善を求めながら、環境に優しいこの移動手段が今後、どのような動きを見せるのか、注目したいところです。


自転車のシェアリングサービス


休日にはキックボードでローヌ川沿いを散策


本場のレディーファーストって?


フランス、リヨンに住むようになって1年。いまだに世界ではメンファーストの国と言われてしまう日本からやって来た私が、この国のレディーファーストについて考えてみました。

妻いわく、この国のレディーファーストは、なんといってもエレガント。日本ではドアを開けて待ってくれている男性がいたら「急がなきゃ」と思ってしまうんだとか。フランスの男性はあくまでもさりげなく、やらされている感がなく、笑顔で、自然にいい気分にさせてくれるのだそうです。しかも、年代を問わず、小学生の男の子でさえ、さりげなさは徹底されているように感じます。

記事をまとめるに先立ち、フランス人女性スタッフに質問してみました。「女性のグラスは男性が注ぐべきなの?」。結果、予想通り「フランスでは通常、女性は男性に飲み物を注がない」ということでした。

気の利かない私は、彼女たちのグラスが空いていることに気付かず、あきれられたこともあったのでしょうか(笑)。質問しておいて心配になってしまいますが、気付けばレストランで食事をしていると、ワインのボトルは大概私のそばに置かれています。

日本で、欧米諸国の知識としてレディーファーストを学ぶと、自分の国にはない文化への不慣れを意識してぎこちなくなってしまいますが、現実はもっと自然に行われています。これはレディーファーストの意識が、フランス社会全体の共通認識としてあるからでしょう。結果的にワインのボトルは男性の近くに当たり前に置かれ、女性のグラスは男性によってスムーズに満たされていく。このまま自然にレディーファーストを身に付けて、私が妻に褒めてもらえる日は来るのでしょうか。

一方で、多くはないが「レディーファーストをできないフランス人男性はいる」という意見ももちろんありました。例外はどこの国でもあるものです。

最近の土曜日事情…


ベルクール広場

2018年の11月半ばに始まり、5ヵ月たった今も続いているフランスの大規模なデモ。パリでの惨事は日本でもニュースに取り上げられていると思いますが、リヨンも例外ではありません。

抗議行動の発端は燃料費の値上げでしたが、現在は極左・極右派によるマクロン政権への不満が中心となっています。いったいいつまで続くのか…。在住者が特にがっかりしてしまうのが毎週土曜日です。

ここ数ヵ月、リヨン市内で土曜日のデモが始まるのは、たいてい午後から。デモが始まると駅やショッピングセンターではアナウンスが流れ、メトロやトラム、バスなどの公共交通機関にも影響が出ます。

先日、家族と別行動をしていて、午後にベルクール広場近くの店で待ち合わせをした時のこと。メトロに乗ると目的地ベルクールには止まりませんというアナウンスが。仕方がないので、一駅前から歩いて向かうことになりました。店に着くとちょうどデモ行進が前を通っている最中。店は中から鍵をしめていて中に入れてくれません。警官隊とデモ行進が通り過ぎるまで、少し怖い思いをしました。

毎週、土曜日のターゲットはブティックやデパート、カフェが集まる市内中心地です。せっかくの休日を楽しみたいけれど、暴動や破壊行為に出くわすとやはり危険。せっかくの休日に…在住者がこのように感じるのだから、旅行者の方はもっとがっかりするでしょう。

フランスの経済にも大きな影を落としている今回のデモ。フランスへ出張あるいは旅行の予定がある方はご注意ください。

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