タイ王国 最近の国内事情

TOYOTA TSUSHO (THAILAND) CO.,LTD.
山崎 公之

1. はじめに



筆者


2015年のタイはとにかく暑い! 例年ならそろそろ本格的な雨季に入り気温が下がってくる時期だが、まるで日本の盛夏のような毎日が続いている。しかし空は青く澄んでいる。2014年の3月末に赴任した際には、何だかくすんでいるバンコクの空がどうしても好きになれなかった。郊外に出たとき味わえる青い空を見て、よく日本を思い出したものだ。理由は分からないが、2015年のバンコクの空はキレイだ。そのため遮るものがなく、灼(しゃく)熱(ねつ)の光線を痛いほど浴びる。南国を感じる瞬間である。
2014年は雨量が少なく水不足に悩んだバンコク。そして2015年は猛暑。毎年異常気象と世間で騒がれるのは、日本だけではないようだ。
今回、そんなバンコクから日々の日常をお伝えしたい。


2. 冠水


洪水したバンコク市内の様子

タイには暑季、雨季、乾季の三つがあり、南国特有のスコールが降る季節は6月前後から。日本のしとしと・じめじめと続く雨季とは違い、今日もいい天気だと思っていると、向こうの空から黒い雲がだんだんと近づいてきて…。そう思っている矢先に突然大粒の雨が降りかかってくる。よく言う「バケツの水をひっくり返した」という表現がぴったり。そのすさまじい勢いの雨とともに雷も同調して激しさを増していく。長時間続かないのが特徴であるが、その豪雨の後には決まって大小の冠水地帯が。膝ぐらいの道路冠水は当たり前。その冠水にあまり臆することなく突っ込んでいくのがタイ式。車に乗っているのに、チャプチャプ水の音がする感覚は初めてだ。
前の車を見るとマフラーが水に浸かっている…。それでも動くから不思議だ。自動車メーカーの底力を感じてしまう。そんな中でもタイの人々はマイペンライ(問題なし)と言ってしまう。車に乗っているときはまだ幸運で、不幸にも歩かなければならないときもある…。異様なニオイに耐えながら足を進めるが、壁を見ると水を逃れてはい上がってきたゴキブリで真っ黒に…。冠水の中を歩いた人は熱を出すというのもうなずける。
タイの冠水は1時間でやってきて1時間で水がはけると聞いていたが、実際には水はけが悪い場所では数時間水が引かないこともあり、生じる交通渋滞はすさまじい。排水溝も数多く存在しているが、ゴミで詰まっているところも多くまだまだ改善の余地がたくさんありそうだ。
スコールといえば、先日夜中に激しい雷雨の夜があった。雷で窓ガラスが振動し、まるで爆弾が落ちたような落音。窓ガラスはしっかり閉めているのに隙間から雨が入り込み床が水浸しになっていた。床に置きっ放しにしていたノートPCは奇跡的に難を逃れたが、お気に入りのカーペットにはシミが残った。
日本では考えられないことに遭遇するのが、駐在生活の醍醐味である。


3. 整体・マッサージ


タイでは、外を歩けば至るところにマッサージ屋がある。整体や灸鍼(しんきゅう)などもあれば、高級リゾートSPAもあり、さらにお店によりメニューが多種多様。生活してみると意外と物価の高いバンコクであるが、マッサージは日本より格安で受けられる。足のマッサージであれば、しっかり2時間で300-400バーツ(日本円で約1,100-1,500円)程度。もっと地元の店となれば、さらに安い値段で受けることができる。
私がよく行くのはタイ古式マッサージ。マッサージをしている人は、指だけでなく、前腕や肘、時には膝なども使いながら、ぐいぐいモミほぐしてくれる。一見すると痛そうだが、これがなかなか気持ちがいいのである。施術者の腕によって翌日のモミ返しに苦しむこともしばしばだが…。店によって、人によって自分に合った施術をしてくれるかどうか、当たり外れが味わえるところがこれまた面白い。
ここ常夏のタイにはクールビズという習慣はなく、一年中ビルの中や室内は冷房でガンガンに冷えている。暑い国ではあるが、意外と体は冷えて固まっている。体のコリを感じた際には、タイでのマッサージをぜひともお勧めしたい。


4. ゴルフ


タイ式キックボクシング

駐在員の過ごし方ナンバーワンは、やはりゴルフ。バンコク周辺だけでも100 ヵ所以上のゴルフ場が点在しており、毎年数ヵ所新しいコースがオープンしているという恵まれた環境。比較的フラットなコースが多いため、池やバンカーを駆使してプレーヤーを苦しめている。日本との一番の違いは、キャディーさんが一人につき一人付くこと。次のショットのクラブを持ってきてくれる、バンカー整備をしてくれる、グリーン上ではボールマークして旗を持って、と大忙し。こちらはボールを打つことに専念できるはずであるが、そこは設計者のわなにしっかりはまる…。日本に戻ってリモコンカートでのプレーに慣れるには、しばらく時間がかかりそうである。
ゴルフ場での楽しみの一つに朝食の「カーオ・トム」(おかゆ)がある。朝一番のお腹にとても優しく、これから暑い中をプレーしていく前の癒やしになっている。暑いが故に日焼け対策は必須。サングラス・日焼け止めクリームは必須で、日本の奥さま御用達の長袖アームカバーなど各種アイテムを装備してのプレー。シミ・ソバカスにはハードシップ手当が必要?と思ってしまう。
これまた日本と違うのが、たまにオオトカゲが姿を現す。臆病で人を襲うことはないようだが、早朝に1m以上ある小恐竜がのそのそ歩いている光景は、南国タイならではの光景であろう。
ゴルフ好きにとってありがたいのは、ゴルフ人口が非常に多いこと。暑い中でできるスポーツが限られている事情もあるかもしれないが、日本人駐在員の多くの方々とご一緒する機会に恵まれている。家族には「これも仕事」「これで運動不足解消」なのだと言い訳が通りやすい環境にある。
今週からは、人生でこれだけできる機会はもう二度とやってこないだろうと、かみしめながらプレーしていきたい。

5. 食事

タイでの楽しみの一つである食事は、これまた多種多様。どうしても日本食に足が向いてしまうのは私だけではないと思うが、なんと2,000店以上の日本食店がしのぎを削っている。首都バンコクにはそのうちの7割以上の店がひしめき合っている。
驚きなのはバンコクから数時間離れた場所にも、しっかりと日本食店があること。さすがにここはないかな?と思っても、カツ丼・カツカレー・そば・うどんなどが食べられてしまう。さらに、時間がないときにコンビニに立ち寄ると、おにぎりを販売している。バンコクだけでなく郊外のコンビニでも購入できるようになってきた。
タイの日本人滞在者は約6万人、短期滞在者を入れると推定9万人ともいわれているが、日本食はタイの人々にも人気で、タイの人々が日本食店に列をつくって待っている場面にも出くわす。世界でブームになっている日本食マーケットの大きさをあらためて実感することができる。
とはいえ、やはりタイ料理は欠かせない。日本人にもよく知られており受け入れやすいのは、トムヤムクン、タイカレー、ガパオライス、ソムタム、ヤンムンセンなど。ただやはり本場で食べる料理は辛さの度合いは強い。食事中に「どう? 辛くない?」と聞かれると、「まったく問題ない!」と強がって食べてはみるが、強烈な辛さの店もあり、どうしても…、という時もある。
そんな中で昼食にお勧めなのが、タイ式ラーメン「バミー」。小麦を原料とした黄色い麺が特徴で、モヤシやお団子などがトッピングされている。会社の近くの小さなお店、バンコク内に数多く存在する屋台、郊外に出たときのパーキングエリア、工業団地内外の小さなお店、などなど。1杯40バーツ。おつゆのない「バミー・ヘン」は冷麺風。麺は温かいが…。暑い日にしっかり麺を食べると、前日のアルコールもしっかり抜ける。
アルコールといえば、やはりビール。暑い国でのビールは、これまた格別である。赴任当時は驚いてしまったビールに氷を入れて飲む習慣は今ではしっかり根付いてしまい、家での晩酌にもついつい氷を入れてしまう。
食後には南国特有のフルーツがこれまた格別。果物の王様「ドリアン」、果物の女王「マンゴー」をはじめ、日本ではあまりお見掛けしないマンゴスチン、ランブータンなど、これまた多種多様。新鮮なドリアンはニオイがしない、といううわさを聞き付けトライしてみたが、残念ながらそこまで新鮮ではなかったようだ。ただ、うわさは本当らしい。駐在期間にぜひとも新鮮なドリアンに出合いたい。おなじみのパイナップルは、当たりが多い。まろやかだがしっかりとした甘みがあり、果物嫌いであったわが家の4人の子供たちが、今では奪い合うように食べている。日焼けした肌のビタミン補給のためにも、今後も多様なフルーツにトライしていきたい。


6. タイ王国の最近の国内事情・最後に


家族と共に

タイ王国の人口は約6,900万人。日本の1.4倍 の 国 土 を持 つ。 首 都バンコクの人口 は 約800万人。首都圏人口 は 約1,400 万人で東南アジア屈指の大都市。実はバンコクには正式名称がありこれが世界一長い。タイの人々は歌にして覚えており、事実、周りのスタッフのほとんどは覚えていた。
ニュースの通り、現在の経済状況はあまりよろしくない。ただ、高級デパートなどが次々に建設・オープンしていくこの街。外出禁止・戒厳令下であった2014年にも感じた、「活気」を感じるタイ王国。東南アジアで唯一植民地支配された歴史がなく、外国人に対してとても開放的・友好的な温かさのあるこの国で生活していると、こちらにも温かい気持ちを分けてくれている気がしてくる。
日本の都市圏に戻った時に感じた、うつむき顔でいそいそと街を歩く日本人とは少し違う、ただ、内に秘めたしたたさかを時折感じるタイの人々。
駐在3 ヵ国目で海外生活には慣れているとタカをくくっていたが、いやいやまだまだ分かっていないことだらけ。タイ王国と日本の今後のより良い発展に少しでも力になれたらとの思いを新たにし、安価で購入できる栄養ドリンクを片手に日々を大切に過ごしていきたい。

タイ王国 最近の国内事情 誌面のダウンロードはこちら