トップフォーラム 第32回産業構造審議会総会 國分会長発言内容

2023年8月4日(金)経済産業省本館にて開催された産業構造審議会に委員として日本貿易会から國分会長が出席いたしました。会議での発言をご紹介します。

國分会長発言

私から3点申し上げたいと思います。1点目は、先ほど来出ておりますDX、GXに関連いたしまして、それを取り巻くエネルギーと、クリティカルミネラルについての点です。デジタル化の推進、それから電動化の流れというところでエネルギー環境が大きく変わる可能性がある。すなわち電力消費が大きく伸びる可能性がある。量子コンピュータにしても、AIにしても、データセンターにしても、半導体の製造にしても、基本的には電力多消費型のモデルでありますし、それにEVの普及が拍車をかける形になるのではないか。

先端技術で競争力を維持するために電力の安定的な供給は不可欠だろうと。特に最近、爆発的に普及が進んでいる生成AIのファクターが、開発も含めてどれだけ将来予想のシミュレーションのモデルに入っているのか不明なのです。少なくとも従来予想以上に電力消費が伸びる可能性が高いところだと思います。これがボトルネックになってDX、GXが進まないという制約要因に絶対になってはいけないと思います。その意味からも再エネ、あるいはグリッドの整備等の推進に加えて原子力。これは再稼働のみならず新規SMR、核融合、それからバックエンドの議論も含めて多面的に、かつ正面から議論して推進していくことが日本にとって不可欠だろうと考えます。

もう一つ、DX、GX関連でクリティカルミネラルについてですが、これも絶対欠かせないところなのですけれども、正直申し上げて日本の出遅れ感は相当強いという印象を持っています。経済安保の観点からも確保の重要性は共有されていることかと思いますが、なかなか民間のみでは投資回収の不透明性が極めて強いこともありまして、投資が進まない。これが現実だと思います。有事の際のG7、あるいはIPEFの枠組みでの融通等々のフレームワークはできてきていると思いますけれども、一定程度の自国での供給体制。これは上流のみならず、精製・加工も含め、体制をある程度持つことは必要だろうというところで、政府の一層のイニシアチブ、官民一体での取組を期待したいと思います。

それから先ほど来出ております人材不足のところです。特に労働集約型の産業において非常に大きな問題だと思っております。人材不足によって、例えばインバウンドにしても、需要が取り切れていないのも懸念されるところであります。いろいろな施策があるのは重々承知しておりますけれども、即効性といいますか、今の現実にどう向き合うかという意味からいうと、外国人労働力の受け入れをどう進めていくのかというところだと思います。この点、ぜひ政府一体となって取組をさらに進めていただきたいと思いますし、また1点、あっせん業者で不適切な方々が一部おられるところで、ここに対する規制というのもしっかりかけていただきたいと思います。

最後に、先ほど来議論になっております成長投資についてです。従来、国内へ向けた成長投資が十分できていなかったことが低成長の要因になってきたと理解をしております。そういう意味で最近、非常に大きな規模の設備投資がなされている。なおかつ、経団連はああいう形でコミットしていただいているところだと思います。この流れをとにかく切らさずに、一段ギアを上げる必要があるだろうと思います。企業サイドからして、もちろん短期的な利益率の向上、あるいは株価の上昇を意識した株主還元は非常に重要な課題であって、しっかりやっていくわけですけれども、やはり創出した利益、あるいはキャッシュフロー、内部留保をいかに将来へ向けた成長投資、人材の投資に振り向けられるか。これは一番の課題だと思っています。ぜひ政府におかれましては省庁の垣根を越えて企業の成長への取組、一層の促進をよろしくお願いいたします。