ちょっと探訪記 独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ) 日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)

独立行政法人日本貿易振興機構
日本食品海外プロモーションセンター 執行役(CAO)
北川 浩伸
独立行政法人日本貿易振興機構
総務部 広報課長
川崎 美奈子

北川氏(左)と川崎氏(右)

ちょっと探訪記は、当会と関係の深い団体を訪問し、活動概要や当会との関係についてお伺いするコーナーです。今回は、独立行政法人日本貿易振興機構 日本食品海外プロモーションセンター 執行役(CAO) 北川 浩伸氏と総務部 広報課長 川崎 美奈子氏にインタビューしました。


わが国の貿易振興に向けて


まずは日本貿易振興機構の概要についてご紹介ください。

川崎:日本貿易振興機構(ジェトロ)は、経済産業省が所管している日本の貿易振興に関する事業および調査研究の実施機関として2003年に設立された独立行政法人です。前身の特殊法人日本貿易振興会(1958年設立)も含めると60年を超える歴史があります。時代の流れとともに重点事業は変化してきましたが、一貫して日本の貿易振興のために活動しています。

ジェトロの強みは、国内48事務所、海外55ヵ国76事務所、合計120以上の事務所のネットワークです。国内拠点は、東京にある本部と大阪本部に加え、アジア経済研究所や日本食品海外プロモーションセンターなどの附置機関の他、貿易情報センター(国内事務所)が各都道府県に設置されています。海外拠点は、先進国はもちろん、日本企業の将来のビジネスに資する国・地域にも設置しているので、最近は在アフリカの事務所が増えています。

事業としては、「海外展開支援」「イノベーション創出支援」「調査研究」「農林水産物・食品輸出促進」を4本柱に、「情報提供」「商談会支援」「個社支援」「グローバル人材支援」「デジタル」などのサービスを提供しています。

事業ごとにご説明しますと、日本企業の「海外展開支援」は、ジェトロが設立当初から取り組んでいるものです。今後、日本国内は人口減少に伴い市場が小さくなっていくことを考えると、中堅・中小企業の方に海外に目を向けていただくことがとても重要ですので、中堅・中小企業向けのサービスを拡充しています。

「イノベーション創出支援」は、主に二つの方向性があります。一つは、外国企業への支援です。対日投資を促進する中核機関として、外国企業を誘致し、日本拠点設立や事業拡大を支援する活動を行っています。特に高い付加価値を創出する外国企業を日本に誘致することで、イノベーションや雇用の創出を通じて日本経済の発展に貢献することを目指しています。もう一つは、日本のスタートアップ企業の海外展開・イノベーション創出支援です。世界で活躍するスタートアップ創出のために、海外のエコシステムにおける有力カンファレンスへの出展支援等を積極的に行っています。また、日本企業と海外のスタートアップ企業をマッチングすることで、海外企業との協業・連携の支援を行っています。

「調査研究」は、ジェトロの海外ネットワークを生かした調査・分析活動を通じて、日本企業等への情報提供や、日本および海外各国の政府への政策提言を行っています。さらに、ジェトロの附置研究機関であるアジア経済研究所では、より幅広い調査研究活動を行っています。ジェトロの調査部門はビジネスに直結する情報を発信しているのに対し、アジア経済研究所は開発途上国・地域の経済、政治、社会における学術研究を進めています。

「農林水産物・食品輸出促進」は、「海外展開支援」の中でも農林水産物・食品に特化し、より重点的に輸出支援を行っています。具体的には、海外見本市への出展や国内での商談会の開催を実施しています。その一環として、日本食品海外プロモーションセンターが設立されました。


タイの工作機械見本市「METALEX」
ジャパンパビリオンの様子


アジア経済研究所 IDE-GVC学術カンファレンス


日本産農林水産物・食品の価値・ブランド力向上に向けて


日本食品海外プロモーションセンターの概要についてご紹介ください。


北川:日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)は、日本産農林水産物・食品のブランディングのためにオールジャパンで海外現地にて消費者向けプロモーションを担う組織として、2017年にジェトロ内に設立されました。略称のJFOODO(ジェイフードー)は、日本のイメージとして海外で知名度の高い「武士道」「剣道」「茶道」などにちなみ、「食の道」、「日本の文化(風土)」を世界に発信する姿勢を表現しています。

政府は2006年に農林水産物・食品の年間輸出額を1兆円に拡大するという目標を定めました。農林水産物・食品のさらなる輸出拡大のためには海外での需要創出が不可欠でしたが、当時の日本には、海外の消費者に日本の食をプロモーションする専門機関がなかったため、JFOODOが設立されることとなりました。

この目標は2021年に達成されましたが、日本の農林水産物・食品輸出推進政策の重要性はさらに増しており、2020年には2025年までに2兆円、2030年までに5兆円という目標が閣議決定されました。JFOODOもしっかり体制を強化し、海外の消費者向けプロモーションに取り組んでいきたいと考えています。

具体的な事業内容についてお聞かせください。

北川:政府の「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」に基づき、品目ごとに対象とする国・地域を定め、消費者の認知や購入・喫食意向の向上等を目指したさまざまなプロモーションを現地で実施しています。

プロモーションを実施する品目は年度ごとに見直しを行っており、2022年度は「日本和牛」「日本産水産物」「日本茶」「日本産米粉」「日本産コメ」「日本酒」「本格焼酎・泡盛」を対象に、海外の市場調査と分析を行い、新たな市場を創造するべく、プロモーションに取り組んでいます。

具体的には、日本産品を購入・喫食していただきたいターゲットを対象として、日本産品の認知度と理解度を高めていただくため、広告宣伝やキャンペーン、イベント開催等を行っています。「食」というのは不思議なもので、実際に喫食したときの「味」だけでなく、生産者のこだわりや、一緒に食べている人との「風景(雰囲気)」も重要な要素になってくるので、事業を組成する際は、その点を意識して企画しています。

その他、事業者サポートとして、商談の際に使用できる販促グッズ(POP、印刷物など)の提供やプロモーションの中での商品紹介に加え、海外の市場情報などの提供も行っています。また、国税庁と共同して開発した日本酒標準的裏ラベル(海外の消費者が日本酒を選びやすくなるよう、日本酒の香り・風味、味覚などの項目の英文での記載を定型化したもの)制作システムも提供しており、現在100社以上の事業者の方にご活用いただいています。

オールジャパンで日本の食文化を海外へ

さらに注力されたい活動等をお聞かせください。

北川:これまでは品目ごとのプロモーションに注力してきましたが、今後はもう少し幹を太くして、日本の食文化全体をプロモーションしていきたいと考えています。日本の食全体への理解がないと、品目ごとの理解も進まないですからね。海外の人たちが日本食・日本産品をまずは自国で食べて、本場の日本で食べてみたいと思っていただくことで、インバウンド効果も見込めるはずです。日本食・日本産品を核として、人とモノの好循環を実現したいと思っています。

ただ、この循環は「日本食を食べてみたい」という最初の一歩がない限り実現は難しいです。この最初の一歩は、異文化受容の度合いも関係していますが、いかに海外の方に日本の「食」の魅力を感じていただけるかが重要となってきます。その土壌をつくっていくためにも、商社の駐在員の皆さまには、日本の「食」のPR大使の一員として、お取引先はもとより、ご近所の方々も含め少しずつ日本食・日本産品の良さをプロモーションしていただけたらと思います。

日本食のPRというのは広告を打てば終わりではなく、官民一体となってオールジャパンで取り組んでいかなければならないと考えています。おいしくて健康的な日本の「食」を海外の皆さまにも知っていただき、試していただき、そしてファンになっていただくために、今後も戦略的なプロモーションを推進してまいります。


日本食・日本産品の循環モデル図


「水」「四季」「風土」を切り口に、日本産品のイメージ向上や喫食意向の喚起を促す動画コンテンツを制作・放送


ちょっとトピック:JFOODOロゴマーク


JFOODOロゴマークの前で記念撮影

JFOODOのロゴマークは、都道府県と同じ47個の「○」でできています。

各都道府県の面積を数値化し、図形化しました。 日本全国が一丸となって、協力し合う様子を表しています。

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