持続可能な社会の実現と商社 第5回「パリ協定」

はじめに

本連載では、2018年3月に「商社行動基準」を改定する背景となった諸規範について、「持続可能な開発目標(SDGs)」、ISO26000、「ビジネスと人権に関する指導原則」の順にご紹介してきました。今回は、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための国際的枠組みであるパリ協定を取り上げます。

史上初めて、全ての国が義務を負う気候変動対策の枠組み

パリ協定は2015年にパリで開催されたCOP21で採択されました。気候変動対策の枠組みとしては、1997年のCOP3で採択された京都議定書がよく知られています。京都議定書は2005年に発効しましたが、削減義務を負ったのは先進国のみであり、最大の排出国である米国が参加しなかったこともあり、効果は限定的でした。

その教訓を踏まえて、2011年のCOP17から、全ての国が参加する新たな枠組みを具体化する努力が開始され、4年を経た2015年に結実したのがパリ協定です。歴史上初めて、先進国・途上国の区別なく全ての国に、気候変動対策を義務付けた画期的な合意で、公平かつ実効的な気候変動対策の枠組みとして期待されています。

排出削減に向けた具体策実行へ

パリ協定は、採択から1年にも満たない2016年11月に、55ヵ国以上、かつ世界の温室効果ガス総排出量の55%以上という条件を満たして発効しました。日本も2016年11月に締結しています。パリ協定では「世界の平均気温上昇を工業化以前から2℃以内に抑える」という「2℃目標」を長期的な目標とし、全ての参加国が削減目標を5年ごとに提出して対策を遂行し、結果を報告、レビューを受けることになっています。日本は2030年度に2013年度比26.0%減(2005年度比25.4%減)を中期目標として提出し、2016年5月には具体策として「地球温暖化対策計画」を閣議決定しています。

日本貿易会は、経団連が推進する「低炭素社会実行計画」に参加し、商社業界としての目標を設定し、毎年そのフォローアップを行った上で、結果を公表しています。

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