持続可能な社会の実現と商社 第3回「ISO26000について」

はじめに

日本貿易会は2018年3月に「商社行動基準」を改定しました。今回の改定は、2005年の前回改定以降の、国際社会における、持続可能な社会の実現に向けた企業の活動への期待と要求の高まりを背景として行ったものです。具体的には2010年に発行されたISO26000、2011年に国連で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」、2015年にはCOP21で「パリ協定」が、国連総会で「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されました。

社会的責任に関する手引き(Guidance on Social Responsibility)

このうちISO26000は、数々の国際規格を策定している国際標準化機構(ISO)が発行した社会的責任に関する規格です。ISOというと認証取得が思い浮かぶ読者も多いと思いますが、ISO26000はマネジメントシステム規格ではなく、認証や規制、契約のために使用されるものではありません。その名前の通り、官民を問わず、あらゆる組織が社会的責任を重視した運営を行うための手引きです。

社会的責任を重視する目的は、本連載の主題である社会の持続可能な発展への貢献ということになります。社会的責任に関する手引きは他にもたくさん出ていますが、世界の大多数の国から、官民を含めた多様な関係者が参加して練り上げられたものはISO26000が唯一といえます。

社会的責任に関する「7つの中核主題」

ISO26000は、社会的責任に関する中核主題として、(1)組織統治、(2)人権、(3)労働慣行、(4)環境、(5)公正な事業慣行、(6)消費者課題、(7)コミュニティ参画およびコミュニティの発展の7つを挙げ、各主題の下にさまざまな課題を網羅的に列挙しています。

各組織は、この7つの中核主題と関連諸課題を確認した上で、組織の特性や置かれた状況に照らして、重要かつ緊急性のある課題を特定し、順次取り組むことが推奨されています。またその実践においては、自らのステークホルダーを特定し、エンゲージメント(ステークホルダーの意見を把握し、自らの決定や行動に反映させること)を行うことが重視されます。

企業の取り組み

当会会員企業をはじめ、多くの企業がISO26000に基づいてCSR活動を推進し、その内容をホームページなどで公表しています。読者の皆さんも、ぜひ一度確認してみてください。

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