持続可能な社会の実現と商社 第2回「持続可能な開発目標」と日本企業の取り組み

今回は4月9日(月)開催の審議員会における、鈴木秀生 外務省国際協力局地球規模課題審議官(大使)の講演内容から、「持続可能な開発目標」の達成に向けた企業の取り組みの重要性、ポテンシャルなどについて触れられた部分を中心にご紹介します。

まず「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals = SDGs)の説明です。SDGsは、2015年9月の国連サミットにおいて、全会一致で採択された17の国際目標です。詳細については、別の機会にご説明しますが、下記のカラフルなロゴは最近見掛ける機会が増えたのではないでしょうか。



SDGsには以下五つの特徴があります。

普遍性先進国を含め、全ての国が行動する
包摂性人間の安全保障の理念を反映し「誰一人取り残さない」
参画型全てのステークホルダー(政府、 企業、 NGO、 有識者等)が役割を発揮
統合性社会・経済・環境は不可分であり、統合的に取り組む
透明性モニタリング指標を定め、定期的にフォローアップ

ここで特に強調したいのは、SDGsの前身であるMDGs(Millennium Development Goals)では、政府中心、ODA等による先進国から途上国への支援が、取り組みの柱となっていたのに対し、SDGsでは、企業を含む非政府機関や個人が、実現に向けて幅広く参画することが求められていることです。

SDGsの17の目標は、極めて多岐にわたっており、途上国だけでなく先進国においても達成できていないもの(=取り組みをすべきもの)もあります。従って、企業活動とも広範な接点が存在し、企業が本業とは別にフィランソロピー活動として取り組むだけでなく、本業そのものの対象となる目標が必ず含まれています。世界経済フォーラムでは、SDGsの推進により、世界で12兆ドルの価値、3億8千万人の雇用が創出されるとの推計を公表しています。

日本政府も、総理を本部長とし、全閣僚を構成員とするSDGs推進本部を設置して取り組みを強化しており、2016年12月には国内で重点的に推進する8分野における主要な取り組みを決定しました。

8つの優先課題と具体的施策



また2017年12月には、第1回ジャパンSDGsアワードの表彰式を行いました。企業では住友化学株式会社がマラリア対策事業などの推進で外務大臣賞を、吉本興業株式会社が広範な啓発活動で、株式会社伊藤園がお茶のバリューチェーン全体での貢献で、それぞれSDGsパートナーシップ賞を受賞しました。

企業がSDGsの課題解決に取り組む意義は、上述の通り大きなビジネスチャンスがあるというだけでなく、投資家や消費者が企業をSDGsへの取り組み度合いで評価する傾向が強まっていること。加えて、今後SDGs達成のために、国際的に、新たなルール・規制、認証・標準等が作られていく中で、先手を打って対応していくことにつながることが指摘されました。さらにはバリューチェーンにおける企業の選別に当たり、SDGsへの取り組み度合いが考慮される時代がやってくること。従業員のモチベーション向上に資することなども、重要な要素です。

100年を超えて継続している企業数では日本が世界最多です。この優れた継続性を支えてきたのが、「三方よし」に代表される、社会との共生を実践してきた伝統です。これに「地球よし」「未来よし」の考え方を加えたのが、まさにSDGsであり、日本企業はSDGs実践のポテンシャルが極めて高いといえます。

当会会員商社でも、既に多くの企業がSDGsの課題解決に取り組んでいますが、2018年3月に「商社行動基準」が改定され、SDGsの諸目標達成を念頭に置いて企業活動を行うことが追加されました。

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