新時代における日本の国際経済協力


日本の政府開発援助(ODA)支出は、かつては世界トップドナーの地位にあったが、財政状況の厳しさから1997年をピークに年々減少を続け、名目額、実質額共に大幅に減少している。

一方、欧米の主要援助国は財政事情が厳しいにもかかわらず、2001年の同時多発テロ事件以降、国際社会の安定化を目的に途上国支援を強化し、国連ミレニアム開発の目標(2015年までにGNI(国民総所得)比0.7%)達成に向けてODA支出を増加させている。

わが国の経済協力を取り巻く国際環境を見ると、開発途上国における経済成長段階に応じたニーズの多様化、東アジアとの経済連携促進、資源・エネルギーの需給逼迫ひっぱくや温暖化問題の改善のための経済協力に対する要請の高まり等々と大きく変化している。

このような状況の中、わが国は、政府系金融機関の統廃合、国際協力銀行の分割、ODA実施機関の国際協力機構(JICA)への一元化を図るとともに、内閣官房長官の下に「海外経済協力に関する検討会」、外務大臣の下に「国際協力に関する有識者会議」、政府司令塔の「海外経済協力会議」などさまざまな機関の設置を決定した。また、2006年7月には、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」が閣議決定され、「今後5年間のODA事業量は2004年度実績をベースに100億ドルの積み増しを目指す」との対外公約が示されている。

当会でも、かねてから途上国の自立的な成長を促すためには、経済発展基盤となる基礎的インフラ整備と、政策金融、民間投資との連携の重要性、および民間では担いきれない公的ステータスを有した国際金融機能の重要性について主張してきたが、2006年11月にはあらためて、「わが国の海外経済協力のあり方に関する提言」(P.5参照)を政府および関係機関に提出したところである。

そこで、このような大きな転換期を迎えているわが国の国際経済協力が、今後何をめざすべきなのか、何ができるのかについて、国際経済協力を研究する、あるいは実務に携る有識者の方々に、それぞれの専門分野の切り口からご寄稿いただいた。商社からは、外務省「国際協力に関する有識者会議」の当会代表の委員である副会長から特別寄稿をいただくとともに、国際経済協力に資する具体的な取り組み事例について2社からご寄稿いただいた。

わが国の経済協力の意義を再認識し、新しい時代にふさわしい国際経済協力のあり方を考えたい。


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