2025年7・8月号 No.829
2011年に国際連合が「ビジネスと人権に関する指導原則(以下、指導原則)」を採択し、企業の人権尊重の必要性が国際的に認識されるようになりました。これにより、日本でも企業の社会的責任(CSR)や人権デューディリジェンスの重要性が高まりました。
さらに近年、米国や欧州連合(EU)などが強制労働や人権侵害に対する規制を強化し、日本企業もこれに対応する必要が生じました 。例えば、米国は新疆ウイグル自治区での強制労働を理由に同地域で生産された製品の輸入を禁止するなどの措置を講じました 。これらの要因が重なり、日本でも「ビジネスと人権」に対する関心が急速に高まりました。
2020年10月に日本政府は「National Action Plan(ビジネスと人権に関する行動計画)」を策定し、企業活動における人権デューディリジェンスの導入・促進を目指しました。この計画は、指導原則を日本国内でどのように運用、実施していくかを示す政策文書です。企業が人権を尊重する行動を取ることを奨励し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも寄与するものです。
こうした背景を受けて、日本貿易会では、特に2021年以降、ビジネスと人権をテーマにした研修やセミナー、意見交換会を実施する機会が増えており、様々なステークホルダーの皆さまを招聘してまいりました。
2025年5月23日には、ILO駐日事務所と日本貿易会が2024年7月から10月にかけて計5回実施した商社に特化した「ビジネスと人権」企業内人材育成プログラムのフォローアップを目的としたイベントを開催しました。
本イベントを実施するにあたり、事前に2024年度プログラム参加企業様から関心事項や取り上げてほしいテーマなどについてアンケートを行ったところ、経営層や営業部門への社内浸透と、最新情報のアップデート、業務標準化の可能性の検討などが寄せられました。
そこで当日は、ILO駐日事務所 プロジェクトコーディネーター/渉外・労働基準専門官の田中竜介氏による講義に続き、商社事例紹介を交えながら社内浸透に関するテーマを中心としたクロストーク、共通課題に対処するための協働提案などについてのグループディスカッションなどを企画しました。
今後も、日本貿易会は商社業界におけるビジネスと人権の取り組み推進の一助を担えるよう、会員商社様からのご意見を反映しながら企画を進めてまいります。