新時代を迎える日伯経済関係 ―見つめようブラジルのプレゼンス


BRICsの一国であるブラジルは、GDPでは中国に次ぐ規模であるものの、他の3ヵ国に比べ影がやや薄い。しかし、ここ数年、マクロ経済は順調に推移し、財政収支や貿易収支も改善され、また物価水準や為替レートも安定している。

日本の23倍に及ぶ広い国土と1億9,000万の人口、そして豊富な天然資源を有し、石油の自給率は100%を達成した。今後、世界の人口増加と地球温暖化にともない危惧(きぐ)される食糧不足に対して、広大な未耕地面積、有利な気候、豊富な水資源を有するブラジルの農業分野は巨大な可能性を持つ。

さらに、世界的な注目を集めるバイオエタノールや資源・エネルギー開発、国内市場が拡大する自動車、電気・電子産業、そしてインフラ整備などの分野で新たなビジネスチャンスが注目されている。

ブラジルは、ASEAN10ヵ国の合計に匹敵する経済規模と豊富な資源を有し、日本にとって大変重要な貿易と投資の相手国であるが、残念ながら、日本におけるブラジルの相対的な存在感は、中国やインドなど他の通商相手国と比較して低い。しかし、今年、2008年は、日本人ブラジル移住100周年に当たり、両国政府により「日本ブラジル交流年」と位置付けられ、これを機に日伯関係は新たな時代を迎えると期待されている。

本月報では、2005年5月号でブラジル特集を組み現地座談会の記事を中心に掲載したが、その後、ブラジルの安定した成長を背景に、海外からの投資が2007年で7年ぶりに300億ドル台に急増したことや、資源・エネルギー・食糧価格の高騰や環境問題等とブラジルを取り巻く経済・投資環境は大きく変化していることから、この移住100周年の年に、再びブラジルに焦点を当てて特集で取り上げることにした。

ブラジルの政治・経済状況、潜在能力、ビジネス環境と展望、今後の有望ビジネス、移民と就労者による人的きずな、両国におけるそれぞれのプレゼンスなどについて、日伯両国の有識者から専門的知見、提言等を披露いただき、また商社の主要事業の動向等についてブラジル現地会社の役員から紹介いただいた。

2008年のこの記念すべき年に、移住100周年の意義を、歴史の重みを、そして両国のきずなと、約150万人のブラジル日系社会および約30万人の在日日系ブラジル人の存在をあらためて認識し、ブラジルのプレゼンスをしっかりと見つめ、次の100年に向けた両国の経済交流のあり方を、新時代にふさわしい経済関係の構築を考えてみたい。

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