バリューチェーン・ サプライチェーンを築く商社


当会は、創立60周年記念事業の一環として、2008年1月に中期貿易・投資ビジョン「新『貿易立国』をめざして」を発表し、日本は、政府、企業、とりわけ商社が、それぞれの役割を果たしていけば、昨今、否定的な見方も出てきている従来型のモノの輸出に依存する貿易立国ではなく、海外とのヒト、モノ、カネ、情報の相互交流によって成り立つ「新・貿易立国」としての道をめざしていくことができることを示した。その中で、日本企業が、国境を超えた生産・流通ネットワークを構築し、急速に成長する近隣東アジア諸国と緊密な経済関係を築いてきたことを挙げ、東アジアのダイナミズムを自らの成長の原動力としていく重要性を指摘している。

商品開発、資材調達、製造、加工、流通、販売等のネットワークの各段階において、金融、情報、技術等のさまざまな機能によって価値(バリュー)を向上させることで、ネットワーク(チェーン)全体の価値を高めていく、これがバリューチェーン・サプライチェーンの構築であるが、商社は、単純なモノの貿易から事業投資へ、川上から川下へと、事業の軸足を移しつつある中で、国内外のバリューチェーン/サプライチェーンの構築に積極的に取り組んできた。

本特集では、このような商社のビジネスモデル、そこで発揮される機能について取り上げた。初めに、商社も取り組んできた東アジアを中心とする国際的な生産・流通ネットワークの形成が促した地域経済統合について、上記の中期貿易・投資ビジョン特別研究会の主査にまとめていただいた。続いて、繊維、鋼材、自動車のほか流通分野など幅広い分野でバリューチェーン・サプライチェーンを展開している商社のビジネスモデルを紹介いただいた。また、バリューチェーン・サプライチェーンにおけるCSRの推進に向けた商社の実態調査の例を紹介いただくとともに、コーポレートガバナンスの推進によるリスク管理について具体的な示唆をいただいた。さらに、バリューチェーン/サプライチェーンの国際展開にあたってのシステムの標準化、その国際的動向等について整理いただいた。

ヒト、モノ、カネ、情報の相互交流によって成り立つ新・貿易立国に向けてバリューチェーン・サプライチェーンの構築の果たす役割は大きく、その高度化における商社の役割が期待される。商社の今後のビジネスモデルを展望する一助としていただきたい。

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