私たちの健康、医療と商社


医療技術の高度化や少子高齢化の進展等の環境変化にともない、健康・医療分野の需要は拡大することが見込まれている。政府は、経済成長戦略の柱と位置付け、2025年には、医療・介護分野において250万人の新規雇用を見込んでおり、「心身ともに健康な生活と安心で質の高い効率的な医療の確保」(厚生労働白書2008年)に向けた施策が推進され、2007年の医療制度改革にともない、2008年4月には、生活習慣病の予防に向けた特定健診・特定保健指導(メタボ健診)、また後期高齢者医療制度が導入された。

そのような中で、私たちにとってとりわけ関心が高いのは、安心、安全性の確保と、医療費の負担である。安心、安全性を確保するために導入されている規制が、一方では効率性を阻害している部分も指摘されている。健康・医療分野においても規制緩和が進められる中で、患者や医療関係者のニーズに、より即した製品やサービスが提供される可能性は高く、これらは新たなビジネスチャンス、ビジネスモデルを生み出す。また、日本は先進各国と比べて医療費のGDP比率は低いが、今後の健康、医療を巡る環境も踏まえ、医療費を支払い、また医療サービスを受ける国民にとって、そして医薬品や医療機器、医療サービス等を提供する企業にとっても適正な負担でなければ、将来にわたって制度、事業を続けていくことは困難である。

このような状況の下で商社はどのように私たちの健康、医療とかかわっているのか。商社も従来から、医薬品や医療機器の輸入等において役割を果たしてきたが、近年、内外のネットワークを活用し、より一層、幅広い事業を展開しており、本特集では、これらを具体的に取り上げた。

初めに、前述の医療制度改革に厚生労働事務次官として取り組まれた思い、日本の医療制度の課題、政府の取り組み等を伺った。続いて、健康・医療分野のコンサルティング等にも取り組まれている日本総合研究所の研究員に、ビジネスチャンスの可能性、商社への期待等を寄稿いただいた。

商社の取り組みについては、具体的な事業の仕組みとともに、それらの事業において商社の果たしている役割等について、事業分野を分担して寄稿いただいた。本特集では、民間資金を活用した病院経営支援、一般国民への予防・ヘルスケア情報の提供、中堅医療機器メーカーへの支援、そして、医療機器、医薬品の研究・開発へ商社自ら取り組んでいる事業を中心に取り上げた。

先進国、また途上国にとっても、健康・医療分野への取り組みは、今後とも大きな課題である。商社のネットワーク、問題解決能力等が、健康、医療という社会問題の解決に向けてどのように発揮されていくのかを展望いただきたい。

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