国際社会貢献センター(ABIC)20周年記念特別企画 番外編 ABIC20周年記念会員懇親会&講演会

本稿は、2021年3月31日に日本貿易会の新オフィスにて開催されたABIC20周年記念会員懇親会&講演会の概要を日本貿易会事務局にてとりまとめたものです。

小林ABIC会長による冒頭挨拶


小林ABIC 会長

ABICがユニークで守備範囲の広い人材バンクとして、国内外の幅広い分野で社会貢献活動を行い、今日の活動もますます充実、活発化していることを大変うれしく思っている。会員の皆さまの多方面にわたるご活躍をはじめ、関係各位のたゆまぬご努力・ご支援によりABICが大きく成長していることに、心より感謝を申し上げる。

日本は「課題先進国」といわれて久しく、各所でその課題を克服するためのさまざまな動きが見られているが、ABICとしても貢献できるものが少なくないと思っている。具体的には「外国人との共生社会」の実現、人生100年時代を見据えた「高齢者の就業確保」、「地方への人の流れ」の加速、といった三つの動きだ。

これらの社会の動きに対し、日本語教育あるいは社会貢献活動、地方への人材紹介等々を担うABICの活動は、社会的使命を持った大変意義深い活動であると考えている。今後もABICの活動拡大・発展に努めてまいるので、会員の皆さまには、引き続きABICの活動へのご協力をお願い申し上げたい。

岩城ABIC理事長による2020年度活動報告


岩城ABIC理事長

2020年度のABICの活動は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、対面での交流に大きな支障が生じたこともあり、厳しい環境にあった。そのような状況下にあっても、活動会員やコーディネーター、さらには地方自治体、中小企業、大学、国際交流会館の関係者の方々も含めて、皆さまの変わらぬ熱意とご尽力により、通年ベースで前年度の7割5分の活動実績を示すことができた。

2021年2月末時点で2,963人の活動会員を有し、2000年の創設から2020年度までの活動実績は延べ2万9,600人超となった。2020年度は2度の緊急事態宣言発令もあり、直接・間接的な影響も少なくなかったが、コロナ禍であるが故の新たな発見もあった。例えば、大学での講義ではオンデマンドの授業が増えたことを受け、学生が何度も復習できるので学習効果が高まったという声をいただいた。また、ウェブの環境下であるが故に、教室よりも発言機会が増えた学生もいた。このような新たな発見も、今後のABICの活動に蓄積され、活かされていくと感じている。

寺島実郎氏(一般財団法人日本総合研究所会長)によるご講演「時代認識・地方創生・日本の針路―ABICが担うべき役割―」要旨


寺島実郎氏

ABIC創設後の20年間で、世界における日本の位置は大きく変化した。それは、世界GDPに占める日本のシェアを見ても明らかである。ABIC創設時の2000年は14 %だった日本のシェアは、2020年時点で約6%にまで落ち込んでいる。また、2000年時点では、日本を除くアジア(中国、インド、ASEAN等)のGDPシェアは7%、当時日本はアジアでダントツの経済国家であったが、わずか20年で日本を除くアジアのGDPシェアは25%、日本の4倍超という状況になった。われわれは、「日本の埋没」が進んでいる現実に率直に向き合わなければならない。

今の日本には、本当の意味での健全な危機感を持つことが問われている。資本主義の勝利といわれる冷戦の終焉(しゅうえん)以降、デジタル資本主義(GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft) によるデータリズム)と金融資本主義(ハイイールド債や仮想通貨を含めた金融ビジネスモデルの変容)の台頭といううねりの中で、パラダイム転換が起きている。これにより、われわれは、金融肥大化がもたらす不条理(格差や貧困)、AIによる中間層の仕事の消失といった新たな課題に直面している。国際社会は、これらの課題解決に向けて、新しいルールを形成し、マネジメントしていく必要がある。

また、新型コロナウイルスによるパンデミックは、国民の安全・安心に関わる根幹的なアイテムまで海外に依存することの限界を、われわれに示した。今、われわれが考えるべきは、松下幸之助氏がいうところのPHP(Peaceand Happiness through Prosperity、繁栄のための産業づくり)からファンダメンタルズ(食と農等)への回帰である。

食と農の他に、医療・防災産業の創生も重要であると考える。日本の技術力を結集して、皆で力を合わせて産業創生していけば、やがて輸出産業にもなり得る。さまざまな研究プロジェクトに参画していると、日本にはポテンシャルや技術を有する企業がいかに多く存在しているかということに気付かされる。問題は、それを組み合わせる力(総合エンジニアリング力)が欠けているということだろう。

職業柄、さまざまなデータを見ていることもあり、ABICは日本のNPO法人の中で最もアクティブに動いている組織だと感じている。創設に携わった者として、いわゆる業界団体NPOの成功モデルとして認知され始めていることを大変喜ばしく思っている。

商社パーソンだった人間というのは、「世界との接点に生きた」「世界を見てきた」ということに対して、失われることのない役割意識を持っていると信じている。その役割意識を有するが故に、国際社会との関係の中で日本が抱え始めている課題、例えば日本で働いてくれている外国人に対してどのような形で責任あるバックアップをするのか、あるいは彼・彼女らが引き起こす課題を前向きに受け止めて、どのように解決する力になっていくのかということに向き合うNPOとして、恐らくABICは一番ポテンシャルのある組織だと思っている。

当日来賓として参加された方からは、「小林会長から今後もABICを引っ張っていきたいという心強いお言葉をいただけてうれしい」「寺島氏の講演は今後の日本がどうなるのかを考えるきっかけとなり、大変有意義であった」「世界を見てきた商社パーソンからエールをいただけて、身の引き締まる思いでした」などの声が寄せられました。

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