森村商事の中部・北陸ビジネスについて

森村商事株式会社 名古屋支社 支社長
池田 敏治

森村市左衛門(右)と弟の豊

当社は、1876年(明治9年)6代目 森村市左衛門と弟の豊が東京銀座四丁目に前身である「森村組」を設立し、わが国の海外貿易の草分けとして事業を始めてから、2016年でちょうど創立140年を迎えます。

森村市左衛門が幕末の開国以降、日本の金が不平等な条約の下で外国に流出する様を憂い、「外国に奪われた富は海外貿易によって取り戻すべき」という福沢諭吉の持論に共感して貿易会社を設立した経緯については数多くの文献で紹介されています。創業からわずか半年で米国ニューヨークに拠点を設けて、以来、海外貿易を通じてさまざまに新たな産業を興し、わが国の経済、教育、文化の発展に大きな貢献を果たしてまいりました。

中部地区の代表である名古屋市は、森村組がその後日本の一大窯業企業集団として栄える礎となった日本陶器(現ノリタケカンパニーリミテド)を1904年(明治37年)に設立した場所であり、そこから今や世界的な企業として知られるノリタケカンパニーリミテド、TOTO、日本ガイシ、日本特殊陶業の各社に発展してまいりました。今では森村グループのうち、TOTO、当社以外の3社が名古屋市に本社を構えています。

森村商事も第2次世界大戦を経て、1946年(昭和21年)に森村組から森村商事へ移行しましたが、その翌年1947年(昭和22年)にあらためて名古屋営業所(現名古屋支社)を開設しました。以来、この中部の地において無機・有機にわたる幅広い窯業関連原材料の販売を行ってまいりました。現在ではアルミナ系、シリカ系の天然鉱産物から、水酸化アルミニウム、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素など、汎用グレードから高品位のものまで各種セラミックス原料や樹脂材料を取り扱い、森村グループ各社をはじめその他のセラミックス、耐火物、電子・半導体部品、車載関連、住宅設備など幅広い分野にわたって販売を展開し、営業エリアも中部・東海地域にとどまらず、大阪支社とともに北陸地方にまで及んでいます。

また、中部地域は言うまでもなく日本の自動車産業の中心地であり、当社はセラミックス、樹脂以外にも自動車分野に関わるさまざまな商材をもってビジネスを行っています。

例えばマグネシウムはハンドルやキーシリンダをはじめさまざまな部品に使用されていますが、自動車の軽量化を実現してその燃費向上、 CO2削減に大きな効果があり、環境側面からマグネシウムダイカストがますます注目されています。当社ではマグネシウムの輸入にとどまらずそのリサイクル事業にも出資しており、1999年(平成11年)岐阜県土岐市に「小野田森村マグネシウム㈱」を設立してマグネシウムインゴットの再生事業を行っています。

また自動車部品に使用される、六価クロムを含まないめっき薬剤・化成処理剤といった表面処理材や、ブレーキパッドに使用されるチタン酸カリウムの製造にも岐阜県土岐市に工場のある「東邦マテリアル㈱」に出資して、当社が販売を行っています。

さらに中部地域は、愛知・岐阜を中心として、古くから日本の航空宇宙産業を支える中心地であり、大手重工メーカー各社が生産拠点を構えています。これら重工メーカーは、航空機の製造に欠かせない優れた技術力をもって世界の航空産業の発展に貢献していますが、当社では世界最大のアルミニウムメーカー アルコア社(Aluminiumu Company of America)の販売代理権を持ち、同社のアルミニウム製品を航空機の材料として長年にわたって重工メーカーへ
販売しています。


アルモリックス㈱が直江津港で原料荷揚げに使用するニューマ設備

また当社はアルコア社と、メタルだけでなく同社の化成品事業においても長いパートナーシップを有しており、2005年(平成 17年)には、水酸化アルミニウムの粉砕・加工販売を行うアルモリックス株式会社を設立しました。化成品グレードのアルミナを長く取り扱ってきたノウハウを活かして水酸化アルミニウムの販売事業に着手し、新潟県上越市に「直江津事業所」を開設して、荷揚げ、貯蔵、粉砕・加水加工設備を有する基地として活用し、人工大理石、建材・プラスチックの難燃材フィラー、水処理剤など幅広い分野においてご愛顧いただいております。

経済のグローバル化が既に当たり前となった現在、この中部・北陸の地域においても、さまざまな分野で世界の国々とのビジネスが広がっております。私たち森村商事は、世界中に拠点、関連会社を設立して多くのユーザー、サプライヤーとの信頼を築いてまいりました。今後もこの地域の多くのお取引先と世界を結ぶ「専門商社」として、価値ある商品とサービスを提供してまいりたいと考えています。



「困」をモチーフにした社章

当社の社章は「困」という文字をモチーフにしています。「考え方や生活習慣の異なる外国と貿易を行う以上は、さまざまな困難に直面するのは当然のことで、それを乗り越えなければ成功はない」という森村市左衛門の考えを常に忘れることのないように、あえて「困」の文字を用い、その中の「木」に困難を突き破る鏃をイメージし、全てを円満にという思いから、国構えの枠に丸みを持たせたデザインとしています。私たち森村商事は、この社章に誇りを持ち、81歳の折に市左衛門が唱えた「我社の精神」を順守して、現在も国内外のビジネスにまい進しています。

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