双日が取り組む太陽光発電事業、その経緯と展望

双日株式会社 環境・産業インフラ本部 環境インフラ事業部 副部長
湯浅 裕司

双日の太陽光発電ビジネス


「未来創電斜里小清水」小清水太陽光発電所竣工式の様子

双日では、かねてより急速に欧州で広がっていた再生可能エネルギー活用促進の動きに呼応して、2000年代後半からデュッセルドルフ支店(ドイツ)を中心に同国での太陽光発電市場への参入可能性につきマーケティングを開始していました。

特にドイツでは1991年に再生可能エネルギー買取制度が始まり、スペインで1994年に固定価格買取(フィード・イン・タリフ=FIT)制度が導入されると、ドイツでも2000年に固定価格化、以後、着実に法整備が進んできました。

これらの状況を踏まえ、当社では2009年に太陽光発電事業への参入を同国の大手太陽光発電事業会社とともに、日本企業としていち早く果たしました。

同時期、双日の東京本社では太陽光発電を含む再生可能エネルギー関連のタスクフォースを部門横断的に立ち上げ、発電設備、部材の取り扱いや有望企業への出資参画など、あらゆる角度からのビジネス発掘・参入の検証を行っていました。

結果、2011年にドイツで1件(ミックスドルフ発電所=24MW)の事業投資を追加するとともに、2009年に開始された日本政府による環境プログラム無償資金協力によって、モロッコ/レソト/ミクロネシアにて太陽光発電所の建設を請け負い、この分野の経験値を着実に増やしてきました。

双日の国内太陽光発電事業への取り組み


「未来創電球磨錦町」太陽光発電所の全景

一方、わが国でも、2009年からの自家用太陽光発電の余剰電力買取制度に続き、FIT制度を導入した「再生可能エネルギー特別措置法」が2011年に成立(2012年施行)し、太陽光発電の本格普及を目指した制度が着々と整えられるようになりました。

双日では海外での経験をもとに日本各地で太陽光発電事業の可能性を探ることとしました。

日本国内において、当社は例えば佐渡島でディーゼル火力によるIPP事業を行うなど、長年にわたり他電源でのIPP事業も行ってきました。火力による一般的なIPP 事業と比較すると、太陽光発電事業は日照量による発電量の変動など、どうしても安定性・確実性が低く、社会インフラとしては補助電源とならざるを得ないことなどから、投資基準に厳しい条件を課して慎重に案件選定を進めました。

各地の日照や開発可能な規模、系統への接続条件などを詳細に調査の上で開発に着手、既に、北海道斜里郡小清水町の「未来創電斜里小清水」(約9MW)や熊本県球磨郡錦町の「未来創電球磨錦町」(約13MW)を稼働させており、愛知県知多郡美浜町(約13MW)および青森県上北郡六ヶ所村(約71MW)においても、現在発電所を建設中です。

青森県六ヶ所村での太陽光発電事業


青森県六ヶ所村太陽光発電所の完成予想図

中でも、2014年4月に着工した青森県六ヶ所村「むつ小川原開発地区」における太陽光発電事業は、東日本大震災後の日本の再興、地域の発展を当社事業を通じてなんとか後押しできないかというさまざまなスタディーの中で浮上した案件です。

総プロジェクトコスト230億円、広さ149ha=東京ドーム30個分以上の規模を誇っており、同地区が石油備蓄基地、原子力、新エネルギーなど、日本のエネルギー供給の総合集積地としての発展を目指す中、非常に有意義な進出案件として現地自治体や関係者に歓迎されています。

当社は、本件の開発に当たり、開発地域の造成から手掛けていますが、伐採した木はチップ化して事業用地内で防草対策として活用するなど、環境対策にも力を入れています。

2017年初頭には完工し、東北電力に売電を開始する予定です。

今後の太陽光発電事業

近年のマーケットを分析すると、日本を含め先進国では太陽光発電事業の開発は一巡した感があります。

当社も、今後は一般的に日照条件に恵まれた新興国に注目し、中南米、アフリカ、アジア地域での開発を検討していく予定です。天候に左右されるという意味で不安定な電源ではありますが、先進国での普及をベースとした太陽光産業の成熟により、従来型の他電源より高いとされていた太陽光による発電コストは劇的に下がってきており、日照条件の良いサンベルト地帯では従来型の他電源と比肩するレベルにまで低下しています。また、他電源に比べて計画から電源供給を開始するまでのプロセス、特に設計・施工が簡易ですので、太陽光発電に対するニーズは引き続き高いと考えています。

新興各国においてもFIT 制度を含む電源開発をめぐる各種法制度の整備など、事業環境が整いつつあり、従来型の発電との組み合わせの中で太陽光発電が事業性を見いだせる余地は十分にあるでしょう。

もともと太陽光発電を含む再生可能エネルギー事業は、それに取り組む企業にとってCSR(Corporate Social Responsibility)の位置付けが色濃くあったように思いますが、現在はCSV(Corporate SharedValue)として社会的意義を持つ新たな事業領域へと発展を遂げつつあり、今後は、企業にとって「攻めのCSR」として位置付けるべきと考えています。

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