双日が取り組むインドでの貨物専用鉄道プロジェクトについて

双日株式会社 電力・環境インフラ事業部長
橋本 政和

(1)インドの鉄道インフラ計画

インドでは、英国統治時代の1853年にアジア初の鉄道が開通し、現在は鉄道総延長6万4,000kmを誇り、米国、ロシア、中国に次ぐ世界第4位の規模となっております(日本は第13位の2万km)。同国の鉄道は、デリーメトロ(メトロ公社運営)等の一部を除き、鉄道省傘下の国有企業であるインド国鉄の独占事業となっており、2012年度における年間貨物輸送量は9.7億t(日本は0.4億t)と巨大な輸送量を誇っております。

1991年の経済改革以降、インドは年約4-10%の経済成長を達成しておりますが、急速な経済発展、人口増加に伴う貨物輸送量の伸びに対し、既存の貨物鉄道の輸送能力は限界に近づいています。特に全鉄道貨物の約65%を担う「黄金の四角形」と呼ばれるムンバイ、デリー、コルカタ、チェンナイを結ぶ鉄道路線は既に飽和状態にあり、鉄道輸送力の強化は同国のさらなる経済成長において不可欠な課題となっています。とりわけ、首都デリーと大陸東西の玄関港であるコルカタ、ムンバイを結ぶ鉄道路線(コルカタ〜デリー間の東部輸送回廊約 1,800km、ムンバイ〜デリー間の西部輸送回廊約1,500km)は、今後も港湾整備等によるコンテナ貨物の増加や農産物・鉱工業資源の輸送量の増加が見込まれ、貨物輸送体系の整備による輸送力の強化が求められています。

こうした状況を踏まえ、インド政府は第10 次5 ヵ年計画(2002 年4 月- 2007 年3 月)以降、幹線鉄道における大量輸送を可能とするための施策として、路線拡充、高速貨物車両の導入および、港湾施設へのアクセス改善等を掲げています。現在は、第12 次5 ヵ年計画(2012 年4 月- 2017 年3 月)期間にありますが、5 年間のインフラ投資計画額は56 兆ルピー(約107 兆円。前期比2.3 倍)、そのうち鉄道整備関連事業への投資計画額は5.2 兆ルピー(約10 兆円。前期比2.6 倍)となっており、大幅な貨物輸送量の増加が見込まれています。


DFC西線計画路線図

(2)わが国の支援方針

こうした流れを受け、日本政府は2008年10月の日印首脳会議において、コルカタ〜デリー間およびムンバイ〜デリー間の総延長3,300kmとなる東西回廊の貨物専用鉄道のうち、西回廊(ムンバイ〜デリー間約 1,500km)への円借款による支援を表明しました。第1フェーズ(レワリ〜ヴァドーダラー間約915km)のみで総額4,500億円の供与額となることが確認されています。また、既にフェーズ1への支援として約930億円、フェーズ2への支援として約1,380億円の貸し付け契約が締結されています。

インドは近年のわが国円借款の最大の受取国となっており、累計総額4兆円(2013年度末時点)のうち、半数超が直近10年間のものであり、インド政府によるインフラ整備に対するわが国への協力期待に応える形となっております。

(3)当社の取り組み状況について

2013年6月、双日はインド最大のゼネコン兼総合エンジニアリング会社であるラーセン&トゥーブロ社と共同で、西回廊の一部区間(ハリアナ州レワリとグジャラート州イクバルガー間の約626km)の軌道敷設工事を鉄道省傘下のインド貨物専用鉄道公社から受注しました。契約金額は約1,100億円で、円借款案件における契約規模としては過去最大級の案件となっています。現在、2017年夏の完工予定に向けて取り組んでいます。

また、2014年11月には同じくラーセン&トゥーブロ社と共同で、西回廊の一部区間(ハリアナ州レワリとグジャラート州ヴァドーダラー間の約915km)の電化工事を受注しました。こちらは単一の鉄道電化工事として過去最大規模となっております。


デポに搬入されているTrack Stabilizer

(4)今後の取り組みについて

日印政府は、貨物専用鉄道の敷設を屋台骨とし、デリー〜ムンバイ間の 6州に広がる工業団地や港湾を結び付け産業集積地帯をつくるデリー・ムンバイ間産業大動脈構想(Delhi-Mumbai Industrial Corridor/DMIC)の下、官民一体となった開発推進を予定しています。また、アーメダバード〜ムンバイ間の高速鉄道計画についても日印両政府による共同調査を実施中です。

双日は、インドを鉄道インフラ分野での最重点市場と位置付けており、今回の2件の貨物専用鉄道プロジェクトの受注を契機に、西回廊の他区間の軌道敷設工事、電化工事の他、DMIC構想下の都市鉄道事業、高速鉄道事業等の将来案件についても、積極的な事業の拡大を目指しています。

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