G-7伊勢志摩サミット開催と三重県のこれから

三重県知事
鈴木 英敬

5月26日、27日、主要国首脳会議(サミット)が三重県、伊勢志摩で開催されます。

伊勢志摩は、伊勢神宮や海女文化等に代表される日本の精神性、豊かな伝統・文化、英虞湾等の日本の原風景ともいえる美しい自然を感じていただける地域です。

特に、日本人の代表的な心の「ふるさと」とされる伊勢神宮は、平和を願う場所です。サミットにおいては、この伊勢志摩の地から、世界平和実現のメッセージを発信していただきたいと考えています。

また、サミットで議論される主要テーマの一つである「経済・貿易」分野では、新興国経済の減速や貿易の減退などによって不透明さを増す世界経済が国際社会の大きな課題となっています。現下の世界的な経済状況に鑑み、これらの課題を克服するために日本が議論をけん引し、G7としてこの伊勢志摩の地から前向きなメッセージを発出してほしいと考えています。

加えて、サミットの開催を通じて、本県、東海地域の知名度の向上や国際観光地としてのレベルアップ、また地域の総合力向上にもつなげたいと考えています。

さて、本県においては、サミット開催に当たり、三つの成功要因を掲げて、取り組みを進めてきました。

一つ目は、首脳会議が安全・安心に開催されることであり、来訪される方々に加え、地域住民等の安全が確保されることが不可欠です。

各国首脳や多くの報道関係者等の利用が想定される中部国際空港や名古屋駅等の交通機関等では、警備のための訓練が連日のように積み重ねられてきました。

本県においては、国との連携を一層強化するとともに、警察本部が中心となって官民一体でテロ対策を協議する「テロ対策三重パートナーシップ推進会議」を設立し、県内全ての警察署単位で地域会議を立ち上げる等、テロ対策に向けた意識の向上や警備体制の強化等を図ってきました。

また、各国首脳、政府関係者、プレス関係者等が安全で円滑に移動できるよう、県管理道路の整備や景観整備等、各種インフラ整備を行うとともに、地域住民が抱える不安を解消するため、警察本部や海上保安庁、地元 4市町等と連携し、住民懇話会を開催しました。

二つ目は、伊勢志摩地域のみならず、三重県全域、また東海地域にも効果を波及させる取り組みとすることです。

2016年 4月には、ジュニア・サミットが三重県桑名市を主会場として開催されました。ジュニア・サミットにおいては、「次世代につなぐ地球〜環境と持続可能な社会」をテーマに、 G7各国から中高校生等が集まり、漁業者による資源管理、四日市公害や途上国へ の環境保全技術等、県内の環境に関わる現場を視察いただき、熱心な議論が行われました。

また、討議日程終了後、参加者が県内各地を分散して訪れ、三重の美しい自然や豊かな伝統・文化に触れながら、県内高校生をはじめとする県民の皆さんと交流を深めました。

また、外務省等の主催も含めて、海外プレスツアーを県内各地で17回実施し(4月8日現在)、31ヵ国の海外メディアの方々に、お越しいただきました。

さらに、「おもてなし大作戦」として「クリーンアップ作戦」や「花いっぱい作戦」、事業の協賛、応援、寄付による支援、サミット開催100日前や50日前等の節目ウイークにおける県内外でのイベント等に、多くの県民・企業等に参画いただき、開催機運の醸成を図りました。

加えて、東海 3県 1市(愛知県、岐阜県、三重県、名古屋市)の行政・企業・団体が連携して、中部国際空港や名古屋駅へのカウントダウンボードの設置や歓迎装飾を行うとともに、サミット開催直前には、おもてなしブース(仮称)を設置する予定です。

三つ目は、サミットを一過性のものとせず、次世代にサミットの資産を継承することです。サミットという千載一遇のチャンスを活かし、三重県の知名度を向上させるため、国内外への情報発信を一層強化しました。

2015年10月に、外務省飯倉公館でセミナーおよびレセプションを開催し、駐日外交団や海外メディア等の方々を対象に、三重の魅力をPRしました。

また、首脳会議や配偶者プログラム等の国の公式プログラム等において、県産食材等の 活用の働き掛けを積極的に行っており、できるだけ多くの県産食材等が活用されることを期待しています。

さらに、サミット開催時に設置される国際メディアセンターや、その中に設置する予定の三重県情報館(仮称)において、三重の伝統・文化、先端技術等を国内外の方々に伝えられるよう、準備を進めています。

加えて、サミットの開催によってもたらされる有形無形の好影響、すなわちサミットのレガシー(資産)を三重の未来に活かすことも重要であり、ポストサミットの取り組みを進めていきます。サミットのレガシーにはさまざまなものが考えられますが、大きく「知名度等の向上」、「会議自体の成果」、「地域の総合力の向上」の三つに整理しています。「伊企業等に参画いただき、開催機運の醸成を図 勢志摩サミットの開催後、わが国での次のサミット開催地が決定するまでの期間」を三重県のポストサミット期と捉え、サミットのレガシーを最大限に生かし、「人と事業を呼び込む」、「成果を発展させる」、「次世代に継承する」の三つの観点で、長く効果が持続するような取り組みを展開していきます。

サミットという世界最高峰の国際会議の経験は、地域住民が自分たちの地域に誇りや自信を持ち、地域をより良くしていこうという行動が活発化し、地域が世界に開かれ、さまざまな交流やビジネスが拡大し、自立的かつ持続的に発展していく契機となります。

サミット開催まで残りわずかとなりました。これらのチャンスを活かし、三重県、東海地域がさらなる飛躍を遂げられるよう、引き続きサミットの成功に向けて準備を進めていきます。

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