インドネシアと日本のパートナーシップ

在インドネシア共和国 特命全権大使
塩尻 孝二郎

1.高まるインドネシアへの期待

ユドヨノ大統領政権になって6年。初めの3年間、アチェ津波被害、頻発するテロ事件に見舞われ多難であったが、この3年間は、インドネシアは、アチェ津波災害からの復興、G20のメンバー国入り、ユドヨノ大統領の圧倒的得票による再選、リーマン・ショックからの順調な経済回復等、追い風に乗っている。インドネシアは、世界中の注目、視線を集めている。2011年はインドネシアがASEAN議長国であり、米国、ロシアも参加する最初のEAS首脳会議も主催する。

2.期待が高まる中でのインドネシアの課題

インドネシア国民は、これまで経験した教訓を踏まえ、「民主主義」を選び、「地方分権」と合わせ、両輪で進んでいる。「民主主義」、「地方分権」の歴史は、10年であるが、今やインドネシアは民主国家としての自負も深めている。1人当たりGDP3,000ドル超。今後、6%以上の経済成長が期待され、毎年約300万人の人口が増え、これから20年間は「人口ボーナス」を受ける、中間層も大幅に増える。国債の格付けも投資適格入り間近である。ユドヨノ大統領の任期はあと4年、インドネシアの課題は、グローバル経済、他の新興国との競争にさらされる中で、多様な国民を説得しながら、いかに思い切った政策を、スピード感をもって遂行し、経済の「骨」や「筋肉」となる産業を強くし、失業と貧困を減らせるかということである。

3.より高い次元の両国関係を目指して

日本とインドネシアとは、経済分野をはじめとしてさまざまな分野で、とても深いつながりがある。インドネシアを取り巻く状況が大きく変わってきている中で、日本とインドネシアの関係を、経済、政治・安全保障の分野を含め、さらに高い、新しい次元のものにする必要がある。経済分野においては、インドネシアは、その経済の「骨」と「筋肉」を強くするためにも、日本との関係を進化させたいとしている。ここインドネシアで、「オールジャパン」で知恵を出し合い、現地発のイニシアチブで始まった「首都圏投資促進特別地域(MPA)構想」(ジャカルタ周辺地域の道路、港湾、空港等ハード、ソフトのインフラ投資環境を整備する構想)は、2010年末に両国間で合意され、これから本格的な実施に移される。3月末までに両国の閣僚級から成るMPA運営委員会が開催され、インフラ整備に関わるマスタープラン作りについての大枠や2013年までに着手する「ファースト・トラック・プロジェクト」の合意を目指す。MPA構想の成否は、より高い次元の両国関係構築に向けてのまさに「試金石」である。

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