新興国の経済発展により拡大する物流需要 — 川崎汽船

川崎汽船株式会社 執行役員 兼 バルクキャリアグループ長坂本 憲司
川崎汽船株式会社 グループ事業推進室岸 俊雅

巨大市場になった中国向けバルク輸送

中国政府は新5ヵ年計画の中で、2011-15年度の実質GDP成長率の目標を7.0%と多少控えめに設定していますが、世界の先進国の中では抜群に安定した経済成長と言っても過言ではありません。また、この計画の中では消費主導による内需拡大、都市化促進などが強調されていますが、それらの諸策は、引き続き、大規模なインフラ整備、自動車産業の成長などを促すでしょう。さらに、鉄鋼業をはじめとする基幹産業の成長とエネルギー需要を押し上げるといわれています。鉄鋼生産の成長率は、GDP成長率の半分程度と業界ではいわれていますが、その係数を使って試算すると、2010年の粗鋼生産6億3,000万tは2015年には7億7,000万tレベルへ拡大することになります。鉄鉱石の産出国でもある中国の鉄鉱石輸入量は輸入価格にも左右されますが、輸入鉄鉱石への依存率は既に6割を超えて推移しており、2015年までに1億5,000万t程度の新たな輸送需要が生まれることになります。一方、旺盛なエネルギー需要を背景に、年間1億6,000万tを突破した石炭の輸入量も今後はさらに期待できるでしょう。また、食生活の向上で、食用油の需要は伸びており、大豆をはじめとする輸入穀物への依存もますます高まるといわれています。インフレ抑制など当面の課題を抱える中国ですが、依然としてドライバルク貨物輸送をけん引する極めて重要なマーケットであることは間違いありません。

急成長が続くインド向けバルク輸送

インドでは重工業の発展が著しく、燃料炭・原料炭を含めたインド石炭輸入量は年間1億tに達しています。当社は、インドのJSWグループとケープサイズ、パナマックスサイズを対象に今後始まる契約も含めて合計14契約を結び、豪州や南アフリカからインド西・東海岸へ石炭を輸送しています。この他コークス会社向けで5年間のCOA(数量輸送契約)輸送や、石炭商社とのCOA、新興財閥向けの定期貸船(T/Cアウト)も行っています。発電所や製鉄所の建設計画も多く、インドの石炭輸入量は今後、年間10-15%のペースで増える見通しです。急速な事業拡大に対応するために、当社は2010年7月にバルク専任の日本人駐在員を1名増やし2名体制にし、2011年4月からは東京本社執行役員が在インド執行役員兼‘K’LINE(INDIA)PRIVATE LIMITED CEOとして駐在を開始しています。

拡大するアジアでの物流需要

当社のアジアにおける陸上輸送、倉庫に関わる物流事業としては、特に経済発展が著しいタイ・インドネシアおよび、中国において事業展開を積極的に進めており、その特徴は自動車・電機など製造業の顧客ニーズに応える、地域密着型の総合物流サービスの提供です。以下、それぞれの地域における当社の事業展開をご紹介します。


KMDI Triple Decker

まず、タイでは、1964年に創業開始したK LINE(THAILAND)LTD.が中核となり、陸上輸送・倉庫・フォワーディング・通関・設備据付・保険などあらゆる物流事業を展開しています。陸上輸送部門は、キャリアカー50台、コンテナトレーラー200台、一般トラック150台等を保有し、コンテナ輸送、完成車輸送ならびに、部品ミルクラン(巡回集荷)など幅広いサービスを提供しています。倉庫部門は、グループ会社であるK LINE CONTAINER SERVICE(THAILAND)LTD.がバンコク(KCST NO.1-9,600m²)、レムチャバン(KCST NO.2-1万1,500m²)に2ヵ所の倉庫と、また、“K”Line Amata Nakorn Distribution Centerがアマタナコン(KADC-2万1,272m²)に2009年に新設した全天候型の倉庫を運営しています。さらに、BANGKOK COLD STORAGE, LTD.はバンコクにて冷凍・冷蔵倉庫(BCS-4,133m²)を運営し、主に食品関係の貨物の保管・輸送を行っています。

次に、インドネシアでは、1996年に創業開始したPT. K LINE(INDONESIA)が母体となり、グループ会社が陸送・倉庫・フォワーディング・通関の総合物流事業を展開しています。陸上輸送部門は、PT.KLINE MOBARU DIAMOND INDONESIA(KMDI)がコンテ ナトレーラー45台、キャリアカー139台等を保有しており、自動車輸送では現地シェア1位です。さらに、2輪車輸送でも地元メーカーと共同開発し、インドネシア、ベトナム、インド、中国とタイの5ヵ国でパテントを取得した革新的な3段積みシャーシ(Triple Decker)のサービスを開始しています。従来の2段積みシャーシと比較して3割以上積載効率が向上し、輸送コストおよび、CO2削減に結び付く革新的なサービスです。倉庫部門では、PT.KARAWANG TARO LOGISTICS CENTER INDONESIA(K-TARO)がジャカルタに自社倉庫(5,000m²)を保有し、JABABEKA I、II、IIIの3ヵ所の工業団地に隣接した有利な立地条件の下、多様な貨物の保管・管理を行っています。また、2011年に入り、インドネシアに進出してくる日系中小企業を会社設立から、労働・宗教問題等々、そして国内物流に至るまでバックアップすべくコンサルタント会社 PT.“K”LINE BIZ MANAGEMENTを設立しました。

最後に、中国では、1995年に設立した川崎汽船(中国)有限公司の運営の下、当社のパートナー会社である振華物流集団との合弁により2005年に天津の物流園区内に自社倉庫(1万2,000m²)、さらに園区外にも一般倉庫(1万2,000m²)の2ヵ所を持ち、倉庫業と国際貨運代理業務を営んでいます。物流園区内においては保税倉庫や輸出加工区の機能を活用して、欧米向けに複数ベンダーによる混載貨物を扱っています。一般倉庫では、それ以外の貨物需要にお応えしています。国際貨運代理業務では、天津以外でも、青島・鄭州・大連などへと支店を展開しています。

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