アジアでの工場団地開発と連携・展開する物流ビジネス

住友商事株式会社 国際物流事業部長
安齋 智明

当社では、欧・米・中・アジアの各地で物流事業を展開しています。地域ごとにその成り立ちや業務内容、展開に特徴がありますが、今回はこの誌面をお借りして、アジアでの物流事業についてその特徴やサービスの詳細などをお話しします。

アジアでは、当社が開発販売する工業団地にご入居いただく日系企業に対し、高品質かつ地域に根差した物流サービスの提供を目的として物流事業を展開してきました。

当社では、海外の物流事業を担うわれわれ国際物流事業部と、海外の工業団地を担う海外工業団地部が共に物流保険事業本部に属しています。同じ本部内に両部が所属していることで緊密に連携を取ることができ、当社の工業団地に進出される企業に対して、進出準備段階から操業後まで物流面も含めて支援できる体制を敷いています。

歴史的に一番古いのはタイです。プラザ合意後円高が進む中、多くの日系企業がタイに進出を計画し、当社もNava Nakorn工業団地の日系企業向け販売代理として活動、多くの日系企業に入居いただきました。また、入居企業への物流サービス提供を目的として、1989年に Sumisho Global Logistic(s Thailand)Co., Ltd.(SGLT、 旧 社 名 はNNDC = Nava Nakorn Distribution Centre Co., Ltd.)を設立。顧客により良い物流サービスを提供するため、例えば当時のバンコク港は滞船が激しくこれが各企業にとって頭痛の種でしたが、SGLTはこの問題を解決するためにO Dock CY/CFSの認可を取得するなど、物流面の問題解決を図ってきました。

その後、タイが東洋のデトロイトを目指し自動車・建機産業の誘致・拡大に注力、同産業がタイ東部地域に集積するに従い、SGLTも物流拠点をチョンブリー県・ラヨン県などのより顧客に近い地域にも展開し、増大する物量に対応するとともに、Milk Run、Just In Time、Vendor Managed Inventoryなどサービスメニューもより高度化させてきました。

現在SGLTは、東部地域のAmata Nakorn とLaem Chabangを含めた4拠点の倉庫(面積 合計:約4万4,000m²)を保有し、450名超の陣容を誇ります。

タイでの事業開始以降、インドネシア、続いてベトナムで事業を展開してきました。

インドネシアではPT.Sumisho Global Logistics Indonesia(SGLI、旧社名はBCT=Bekasi Container Terminal)を1990年に当社が開発着手したEJIP工業団地(East Jakarta Industrial Park)内に 設立。ベトナムではDragon Logistics Co., Ltd(Dragon)を1996年 に設立し、後に当社が開発販売したタンロン工 業団地に拠点を構えました。

両社とも上述タイのSGLTと同様に、団地に入居する日系企業各社の物流ニーズに応えるべく、敷地内コンテナデポ・税関・保税倉庫などを併設し、広範囲のサービスを提供するためのハードを充実させ、そこで高度化させたサービスメニューを展開することで、最大限の利便性確保を図っています。

インドネシアでは旺盛な内需に支えられ、二輪・四輪の生産・販売台数が大きな伸びを示しています。2010年の二輪販売台数は737万台を記録、自動車販売台数も76万台と、今後もさらなる伸びが期待され、この分野の日系企業の進出がここにきて加速しています。またベトナムでは、中国におけるストライキや人件費などの費用増を回避するため、チャイナプラスワンの候補地として製造業の進出が急加速しており、それに伴い物流需要も急速に伸びています。

当社はこれら地域で拡大する、国内・アジア域内・アジアとその他地域との物流需要に応えていくことが使命と考え、アッセンブリー工程を含めた高付加価値物流や、アジア域内での陸路・海上輸送などにも取り組んでいます。

陸路輸送で言えば、ここ数年大きな注目を浴びている東西経済回廊を中心としたメコン川流域経済圏における新たな物流モードとして中国-ベトナム、ベトナム-タイ間の輸送ルートの開発に2004年から着手し、ベトナム-タイ間輸送においては2009年より定期混載便のサービス提供を開始しました。このサービスにより従来の海上輸送に比べて格段に輸送時間が短縮されることで、生産工程における部品在庫の削減や原材料・部品の発注精度向上などに大きく寄与しており、事務機器関連部品や二輪・四輪部品の輸送を継続的に取り扱っています。現状、物量や往復における物量バランスの点から大きな収益源とはなっていませんが、アジア域内物流の今後の活発化に伴い、より一層活用できるサービスと考えています。

また、アセアン域内のFTAにより関税障壁が取り払われていく中で、域内物流はますます活発化してきています。自動車部品産業が集積しているタイ国内の部品や部材が、アジア各国に供給され完成車が製造される。あるいはアセアン諸国で生産された完成車が域内で輸送される。こういった物流が大幅に拡大しており、当社物流事業会社もそのような物流に積極的に取り組んでいます。例えば、タイ国内の自動車部品を数十社のベンダーよりミルクランでタイ東部地区の倉庫に集積させ、それをアセアン域内の完成車メーカーに輸出する取り組みを行っています。また、インドネシアにおいては実輸送にとどまらず、部組やアッセンブリーを行っており、これによりメーカー側では工場スペースの有効利用や増産への対応力が増すというメリットが出ています。

このように日系の企業活動に呼応する形でわれわれの物流サービスも拡大してきており、現在インドネシア3拠点の倉庫面積は合計3万5,000m²、ベトナムでも3拠点の倉庫面積が合計2万6,000m²となっており、地域に密着しつつその活動領域を広げてきています。

3月に発生した東日本大震災がアジア地域での製造業や物流にも影響を与えていますが、中長期的には今後ともアジアをベースにした物流は増加していくものとみられ、工業団地と連携した物流事業を、今後他の新興国も含め、さらに進化させていきたいと考えています。

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