中国における東京海上日動火災保険の事業展開

東京海上日動火災保険株式会社

中国はGDPで世界第2位の経済大国であり、昨今、成長性鈍化が指摘されていますが、毎年GDP世界20位前後の国家規模相当の経済成長を実現しています。損害保険市場も同様で、既に収入保険料で約15兆円規模と世界第2位のマーケットであり、これは日本の市場規模(約9兆円)を大きく上回るだけでなく、モータリゼーションを背景とした自動車保険を中心に引き続き2桁成長を続けています。現状ではまだ社会全体への保険の浸透度は低く、今後さらなる成長を秘めた巨大マーケットであります。

こうした中国と東京海上日動火災保険との関わりは、古くは当社が創業した1879年にさかのぼります。同年、当社は上海の三菱会社へ貨物保険の代理店委嘱を行い、中国での営業を開始し、第2次大戦が終了するまで、中国大陸で4支店・9業所、約200人の体制で損害保険業務を行っていました。

戦後は1980年の北京駐在員事務所設立を再出発の皮切りとし、1994年に日本の保険会社として初めて中国での営業ライセンスを得て、上海市で損害保険業務を開始いたしました。その後、2008年に組織形態を独資現地法人に変更し、現在の「東京海上日動火災保険(中国)有限公司(以下、「東京海上(中国)」)を設立しました。現在は本社所在地の上海に加え、北京・蘇州・杭州・広州の計5都市に展開し、日本からの出向社員を含めて約360人の体制で業務に当たっています。

設立当初から、当社は中国に進出されている日系企業のお客さまのリスクマネジメントパートナーとして、損害保険の販売ならびに付加価値の高い関連サービスの提供に努めてまいりました。


中国でのCSR活動の模様

また、20年にわたる中国での業務経験を活かし、直近では中国市場のダイナミックな成長を取り込むべく、自動車保険や訪日旅行客向けの海外旅行保険の販売など、ローカルリテール分野の取り扱いも開始しています。

一方、当社では良き企業市民として、中国への貢献という観点でCSR活動にも注力しております。急速に発展する中国経済の担い手として、地方の農村部から大量の農民が都市部に出稼ぎに出ている現状にありますが、一方で両親が出稼ぎに出ている間、地方に残された子供たちの教育や心のケアが深刻な社会的な問題になっています。当社ではこうした農民工子女の支援をしている中華全国青年連合会と協働で、2009年から「中国青少年育成支援事業」に取り組んでいます。具体的には、農民工子女の多い小中学校に対して、事務機器、図書、文化・体育用品等を提供したり、実際に学校を訪問して触れ合い活動を行うことにより、子供たちのケアを行っています。本活動は当社グループの中国におけるCSR活動の中心であり、既に230ヵ所を超える小中学校に寄付を実施してまいりました。当社としては、本業のみならず、こうしたCSR活動も含めて、より深く中国市場にコミットしてまいりたいと考えております。

さて、貿易や物流に関係が深い保険としては、貨物保険がございますが、この現状についてご紹介します。

貨物保険は、東京海上(中国)にて、中国全土のお客さまに対して保険引き受けを行っており、販売商品についても、日本と同等の保険商品を取り扱っています。

中国における貨物保険事故の特徴としては、他国と比べトラックジャックや盗難事故などは少ない一方で、過積載やメンテナンス不足、長距離運転等が原因と思われるトラック火災、交通事故(トンネルや橋桁への衝突、カーブでの横転事故等を含む)や、平ボディートラックでの長距離輸送による水濡れ事故などが多く見られます。また、国内航空輸送では、航空コンテナが使われることが少なく、積み込み・積み降ろし・一時保管中の降雨による水濡れ事故も多いといえます。いずれも日本ではあまり見かけないような事故が多いのが実態です。

東京海上(中国)では、日本およびグローバルに培った経験に基づく各種貨物保険の手配を通じた安心・安全のご提供のみならず、事故を未然に防止するためのロスプリベンション活動についても注力しています。上記のような中国特有の事故発生形態を熟知した専門スタッフをそろえ、工場などの火災防止、輸送途上での破損・水濡れ事故防止などの取り組みについて、お客さまにサービスを提供しています。


事故の様子


このような取り組みを通じて、おかげさまでお客さまから好評をいただき、東京海上(中国)は2016年度の中国保険市場において貨物保険の保険料収入で外資系ナンバーワン、中国保険会社も含めると業界7位の規模にあります。今後もさらに有効で付加価値の高いサービス提供を行い、お客さまのお役に立てるよう取り組んでまいります。


ロスプリベンション活動

また、中国では上海を国際航運の中心に発展させようとする政策を推進していますが、保険分野に関しては、中国全土の貨物保険ビジネスの発展に寄与すべく「上海航運保険協会」を設置しています。東京海上(中国)は、中国における貨物保険ビジネスへの貢献が認められ、日系企業として唯一、同協会の理事会社を務めています。

一般的に中国は非常に難しいマーケットといわれますが、一方で大きな機会がある魅力的なマーケットでもあります。ビジネスがより高度化・多様化している中で、当社としてはお客さまの事業に対してさらに付加価値の高いご支援を行う戦略的事業パートナーとなるべく、中国の事業態勢を鋭意強化しています。

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