兼松のライフサイエンスビジネス

兼松ケミカル株式会社
ライフサイエンス部 部長
服部 直紀

スターリミルク

兼松グループのライフサイエンスビジネスは、現在、兼松ケミカル㈱と兼松ウェルネス㈱で行っており、兼松ケミカル㈱では主に医薬品の製剤、原薬、中間体、その他原料、健康食品素材およびその原料等、幅広い商品の輸出入を行っています。
今から40年以上前に国産ビタミンの輸出からスタートし、その後20年以上は医薬品関連の輸出入が中心でしたが、1990年ごろから健康食品にも着目し、取り扱いを開始しました。当初、兼松㈱の医薬品課で取り扱っていたこともあり、医薬の視点から健康 食品を評価する考え方で進めており、安全で あることはもちろん、今日では普通となった「Evidence Based(科学的根拠に基づく)」の素材を探索してきました。米国のサプリメントの輸入販売を開始した後、日本で初めて「抗体」成分を豊富に含む健康食品である免疫ミルク「スターリミルク」を販売することとなり、兼松ウェルネス㈱を1995年に設立しました。「スターリミルク」は今も多くの方々にご愛用いただき、皆さまの健康に貢献しています。
現在、兼松ケミカル㈱で取り扱っている健 康食品素材は、コラーゲンなどの美容関連、ロコモ/サルコペニア対応素材(関節・骨・筋肉など生活に必要な運動機能をサポートする素材)、抗ストレス素材等、多岐にわたっています。


1. 健康食品素材の取り扱い


健康食品の取り扱いを始めたころは、健康食品に対するイメージは決して良いものではなく、なんとなくうさんくさいものでした。「食品は健康であって当たり前」、「病気になっ たら病院で薬をもらえばすぐに治るし安く済む」という時代だったと思います。健康人と病人が明確に区分され、健康食品が役立てられる「未病人」や「半病人」といった、病気とも健康ともいえない状態があまり定義されておらず、予防医学の重要性も今ほど認識されていませんでした。
当然「怪しい」健康食品を取り扱うわけにはいきません。各法令を順守したまっとうな健康食品であるべきと考え、「Evidence Based」の素材の取り扱いを開始しました。当初は、素材を海外から輸入し国内で販売するビジネスでしたが、アジアを中心に「Made in Japan」の素材に対する旺盛な需要にも後押しされ、輸出ビジネスも拡大し てきました。
欧米をはじめ世界では、日本食は健康的な食事の代名詞ともなっています。その日本で長く使われている健康に役立つ素材を世界に出すため、今回ご紹介するビジネスを開始しました。


2. 世界に認められる安全性評価


日本には日本でしか使われていない健康食品素材が多くあります。これらをそのまま日本国内で埋もれさせるのは、単にビジネスとしてではなく、健康を願う世界中の人たちへの機会損失と考えられます。
一方、日本独自の素材であるため、海外では食経験がなく、また安全性に関するデータがまとまっていない場合が多くあります。日本で既に長年使用されているものであれば、新たに安全性に関する試験を実施する必要性が認識されていないのも仕方がないといえます。そこで当社では、欧米での販売に必要な安全性評価を専門とするコンサルタントと提携し、日本の良い素材を世界に広めるためのサポートを行っています。
欧米では、以下のような安全性評価をお手伝いしています。

⑴ 米国- GRAS(Generally Recognized As Safe)
米国で食品素材を販売するには、食品添加 物、サプリメントもしくは GRASであることが求められます。販売開始までの期間が短く、幅広い食品に使用できる素材とするためには、GRASが最適です。
GRAS物質とは、「一般に安全と認められる」素材です。これは、政府(FDA米国食品医薬品局)の許可は必要ではなく、専門家の評価のみで認められることが特徴です。一般的な許認可制度と異なるため、理解しにくい制度です。FDAに届け出ることにより、FDAの評価を受けることもできますが、多くの素材はFDAの評価は受けていません。日本の特定保健用食品の場合、機能評価を目的としたヒト試験を行うため、そのデータをそのまま GRASの書類とできない場合も多くあります。また、安全性に関するデータは論文等で公知となっている必要があります。GRASを評価する専門家に対しても情報開示をしたくないという場合は、食品添加物としての承認をとることになります。

⑵ 欧州-Novel Food
欧州で食品素材を販売するには、食品添加物、サプリメント、特殊な医療用食品もしくはNovel Foodとして許可を得る必要があります。1997年以前に欧州で使用されていない素材はNovel Foodと見なされ、安全性を欧州連合加盟国から認められる必要があります。
欧州連合加盟国のうち、まず1ヵ国に申請をし、問題なければ残りの26ヵ国に申請が上げられ、全ての国に認められる必要があります。


3. 日本の良き健康食品素材を世界に


海外での販売が可能になった日本の健康食品素材については、兼松のもつ海外ネットワークを使い、販売のお手伝いをしています。Kosher(ユダヤ)、Halal(イスラム)等の宗教対応もサポートしています。
今後も、日本特有の健康食品素材の「安全性」を確立し、「健康への有用性」を訴求し、「合法」かつ「適正利潤」を得られるビジネスの確立を目指していきます。そして、数多くの素材を普及させ世界の人々の健康な生活に貢献していきます。

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