三菱商事が取り組むモザンビー クにおけるアルミ製錬ビジネス

三菱商事株式会社
アルミ事業部長
羽地 貞彦

モザンビーク共和国は、アフリカ大陸の南東海沿いに位置し、日本の約2倍の国土と、約2,200万人の人口を有する国である。1975年にポルトガルからの独立を果たしたものの、間もなく内戦に突入し、92年の内戦終結当時のモザンビークは疲弊しきった状態であった。モザールプロジェクトはそのような状況の中、民間主導で誕生したアルミ製錬所プロジェクトで、BHPビリトン、南アフリカ開発公社、モザンビーク政府、および三菱商事の共同出資により1998年に設立された。


モザール全景

必要なインフラが不足していた当時のモザンビークにおいて、当時世界最大規模のアルミ製錬所を建設するという構想は、夢のプロジェクトであった。戦後復興にかけるモザンビーク政府の思いに応える形で、BHPビリトンは、その建設・操業ノウハウを提供し、三菱商事は、出資に加えて製品アルミのマーケティングや、経営面での支援を行うことで、夢のプロジェクトは現実に姿を変えていった。また、疲弊しきったモザンビークにおける大規模プロジェクトの実現化に国際社会からの支援も集まり、国際協力銀行をはじめ各国制度金融機関による総額13億ドルのプロジェクトファイナンスが組成された。

こうして実現したモザールプロジェクトは、総工費20億ドル、モザンビーク史上最大のプロジェクトとなった。建設工事は、2期に分けて行われ、第1期のモザールⅠは2000年6月、第2期のモザールⅡは2003年4月にそれぞれ生産を開始し、以降、順調に生産を継続している。

モザール社は設立以来、経済発展、人材育成、社会貢献活動などモザンビークの発展に大きく寄与してきた。経済の成長率を見ると、モザール社を設立したことで、内戦中、年平均マイナス0.1%であった経済成長率が、内戦終結からわずか10年後には、6-7%にまで上昇し、その復興は「モザンビークの奇跡」とも呼ばれ、目覚ましい成長を遂げた。建設期間は、約1万人の現地雇用を産出し、生産開始後も直接雇用で約1,200人規模の雇用を創出、協力業者等間接的な関係者を含めればその影響はさらに大きなものとなっている。


MCDT設立の学校

また、モザール社は従業員の教育にも積極的に取り組んできた。同国では、大学の数が限定的であり、高等教育を受けた従業員の一 定数の確保が難しいため、モザール社は独自に従業員の教育訓練を実施し、同社の従業員が必要とするスキルを本格的に教育している。特に熟練工を育成する機関が不足しているため、モザール社は教育訓練用の設備を建設し、各従業員の技術水準を高めるべく訓練 を励行している。また、技術水準を維持、向上させる施策として、従業員が周りの従業員の作業内容を監督し、その結果を良い点悪い点含め報告する体制を整えており、こういっ た体制が従業員の安全・品質面への意識を高め、モザール社全体としての安定的な操業の 追求を可能にしている。こうした徹底した教育訓練によって、モザール社は優秀な労働者 を育てる場としても高く評価されている。
最後に、モザール社の特徴的な取り組みとして、周辺地域への社会貢献活動が挙げられる。モザールは社会貢献活動用の基金としてMCDT(Mozal Community Development Trust)を設立し、毎年モザールから資金を拠出の上、MCDTを通して周辺地域における教育支援、衛生・環境整備、病院等社会インフラ支援、スポーツ・文化活動支援を行っている。具体的な活動内容は学校の建設、マラリア予防のための施策実施、HIV教育の徹底等、周辺地域に根差した活動を心掛けている。そういった活動は、MCDT理事会で運営されており、三菱商事もこの理事会のメンバーとなり、地域の持続的発展に寄与し続けている。


モザール全景2

これらの貢献を通じて、モザール社は、一製造業という枠を超えて、周辺地域に根差した企業へと成長し、民間企業主導で始まった本プロジェクトをモザンビークにおける有数のプロジェクトへと進化させている。モザールは、今後順調な操業維持による地域経済への貢献、人的育成の継続、地場に根差した社会貢献活動を通じ、周辺地域の発展とともに今後のさらなる成長を目指している。

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