三井物産 モザンビークLNGプロジェクト ― 世界のエネルギー安定供給とモザンビークの社会経済発展への貢献に向けた挑戦

三井物産株式会社
エネルギー第二本部 モザンビーク事業部部長補佐
平野 文人

1. 東アフリカ初のLNGプロジェクトへの参画


モザンビーク北部沖合Rovuma海上AREA1鉱区位置図

当社は、1973年のアブダビLNGプロジェクト以来、西豪州やカタール、サハリンⅡ等、これまでに8つのLNGプロジェクト立ち上げに参画してきた。特に、LNG販売・海上輸送・資金調達といったコマーシャル面での豊富な知見・経験を活かし、本プロジェクト開発においても、その機能とリソースを米国Anadarko社とのジョイント・ベンチャーに提供している。技術とプロジェクト遂行能力の高いAnadarko社と当社は、良き補完関係と強力なパートナーシップを築きながら二人三脚でプロジェクト開発に挑んでいる。本プロジェクトへの当社参画により、東アフリカという新規LNG調達ソースを確保し、ひいては本邦へのエネルギー安定供給の一翼を担うことができるものと確信している。


2. 世界最大規模のガス田開発に向けた挑戦


写真上:モザンビーク沖ガス田生産テスト
写真下:モザンビークLNG陸上設備完成予想図
©Anadarko Petroleum Corporation

従来より、当社は資源・エネルギー分野において石油・ガス探鉱開発事業を重点事業の一つと位置付け、既に事業基盤を有していたオセアニア・中東・東南アジア・北米に加え、新規・フロンティア地域での優良資産の取得を検討してきた。当社は、探鉱フロンティアの一つとしてその潜在性は認識されていたものの、いまだ海上での試掘実績がなかった東アフリカに着目、具体的な有望鉱区への参画機会をうかがっていた。その中で、本鉱区権益を保有するAnadarko社より一部権益譲渡を打診され、2007年12月、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の探鉱出資支援を受け、20%の権益を取得した。現在の権益参画各社は、Anadarko社(36.5%)、当社 [Mitsui E&P Mozambique AREA1 Limited](20%)、モザンビーク国営石油公社ENH社(15%)、インド国営 Bharat社(10%)、インド財閥系Videocon社(10%)、タイPTTE&P社(8.5%)の6社である。モザンビーク北部沖合Rovuma海上AREA1鉱区での可採埋蔵量は、35兆-65兆立方フィートを上回り世界有数の埋蔵量規模発見に至っており、モザンビーク政府関係者ならびに権益参画各社は、同鉱区に賦存するガス資源量の巨大さと有望性に大きな期待を寄せている。当社は現在、本邦需要家への販売活動を鋭意展開、プラント建設に関してもFEED(基本設計)を開始し、2018年の生産開始に向けて開発準備作業中である。また、資金調達については、国際協力銀行(JBIC)および日本貿易保険(NEXI)を中核に据えた支援を要請中。


3. 資源が豊富なモザンビーク


モザンビークは、旧宗主国ポルトガルから1975年に独立を果たし、92年の内戦終結とともに大統領共和制に移行、現在3代目となるゲブーザ大統領の強力なリーダーシップの下、政治的に極めて安定しており国際社会からの評価も高い。宗教的にもキリスト教徒が約4割、イスラム教徒が約2割と、目立った民族紛争もなく穏やかで勤勉な国民性を有している。また、モザンビークの従来からの主要産業は、カシューナッツ等の農業とエビに代表される漁業の第1次産業だったが、良質な石炭や海上での大規模なガスが発見され、資源国としての第一歩を踏み出そうとしている。

4. モザンビークの経済発展に貢献し、最貧国からの卒業を支援

一方、2000年より、年率7-8%と確実に経済成長を遂げているものの、国民1人当たりの国民所得は約470ドル(2011年)と、モザンビークはアフリカの中ではいまだ最貧国に位置付けられる国である。今回の大規模なガス発見により、本プロジェクトの早期商業化とそれに伴う関連産業の発展に対するモザンビーク関係者の期待は大きく、当社も、産業振興・雇用創出・人材育成といった分野でも同国に対し一定の貢献を果たしていきたいと思っている。2013年6月には、横浜においてTICAD V(第5回アフリカ開発会議) の開催が予定されており、国際社会のアフリカ開発への貢献に対するモザンビークを含めたアフリカ諸国の期待が高まっている。

5. モザンビークとの真のパートナーシップの確立に向けて

本プロジェクトは、まずは年産1,000万tのLNG開発(フェーズ1)から始める方針だが、埋蔵量規模から判断して世界有数のLNG一大生産拠点となる可能性が高く、何世代にもわたる長期プロジェクトになる可能性を秘めている。モザンビーク政府を含むパートナーとの共同事業の推進、LNG輸送・販売、資金調達、プラント建設など、当社の持つLNGビジネスのノウハウを活かす場面は多く、今後の同プロジェクトを通じたさらなる貢献を目指していきたい。資源確保や市場開拓のためには日本とモザンビーク双方の利益と相互協力の視点が不可欠であり、政府間で二国間投資協定締結に向けた協議が進む中、当社としても、官民によるモザンビークとの真のパートナーシップ確立に向けて引き続き尽力したい。

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