大統領選後の米国から展望する2013年世界の政治経済動向 ―2

伊藤忠インターナショナル会社
ワシントン事務所長
秋山 勇
双日米国会社
ワシントン支店長
栗林 顕
米国住友商事会社
ワシントン事務所長
堂ノ脇 伸
米国三菱商事会社
ワシントン事務所長
柳原 恒彦
米国三井物産株式会社
ワシントン出張所長
米山 伸郎
丸紅米国会社
ワシントン事務所長
今村 卓(司会)

(大統領選後の米国から展望する2013年世界の政治経済動向 ―1 からつづく)


5. 今後の米国の外交政策の行方と影響


今村(司会) 
今回の選挙では外交政策について、あまり実のある議論はなかったが、中東地域は議論の対象として頻繁に取り上げられた。米国にとって、この4年間を振り返って中東に関して前進したといえるのは、ようやく2つの戦争が終わろうとしていることぐらいであり、イランの核開発問題など、懸念の対象は増えているようにみえる。この中東に対して、米国がどう出てくるのか、イスラエルへの対応も含めて聞きたい。

堂ノ脇(住友商事) 
中東政策の中で一番注目されるのはイラン問題。2013年の春から夏にかけて、イランの核開発は次の段階に入るとイスラエルは訴えている。オバマ政権は、制裁強化と対話によりこれを解決できると述べているが、果たして本当に可能なのかどうか。いざというときにイスラエルとの協調体制を本当に取り得るのかどうかが、中東政策における課題。また、アフガニスタンからの撤退が2014年末に本当に実現できるのかどうか、その後の治安維持の保証が得られるのかということにも注目したい。

柳原(三菱商事) 
米国の大統領選挙があったために、イランは、イスラエルと米国の次の行動に関して様子見であった。経済制裁強化を主眼としてやってきたオバマ政権が戻ってきたことで顕著になるのが、次にどういう交渉に入るのか、あるいは入らないのか、またどういう妥協点を見いだすのかである。米国は限定的としても、イランとの軍事衝突をするつもりはない。そこでイスラエルと足並みをどうそろえるかが大きな問題になる。選挙という盾がなくなった後の数カ月における外交の中でも、一番の大きな問題になってくる。イランはイスラエルと米国の間を突く形で、交渉や働き掛けを仕掛けると思う。

米山(三井物産) 
イラン制裁はこれからさらに強化され、日本にとっても厳しい内容になってくると思うが、その制裁効果を見守りながら、イスラエルとの情報交換、少なくとも認識のギャップをなくしていくということであろう。エネルギー安全保障の面から言えば、「シェールガス革命」もあって、米国はエネルギーの中東依存度を下げている。オバマ政権は、表向きはアジアに対する「ピボット」「リバランシング」を語り、欧州を懸念させている面もあるが、実際の外交の舞台裏ではEU、あるいはトルコあたりにも期待している。シリアの件も含めれば、米国の立場に従わない中国、ロシアの存在もあるため、今後一層EUとの連携を深めるというのが本音ではないか。

秋山(伊藤忠商事) 
アフマディネジャド大統領は国内の支持基盤固めのために厳しいイスラエル批判をする一方で、米国に対しては比較的柔軟な姿勢と聞く。米国との間で何らかの落とし所を探りたいのが本音ではないか。しかし2013年1月のイスラエル総選挙によって、もっと強硬姿勢の政府が誕生し、その結果6月に予定されるイラン大統領選挙でさらに過激な勢力が台頭するといったように、中東地域の安定に影響を及ぼす動きが今後連鎖的に起こる可能性が懸念される。

柳原(三菱商事) 
現在の中東は、米国が最も嫌な形で複雑に絡まりつつある。しかし、米国が直接的に地上戦を展開することは考えられないため、間接的な動きにとどまっている中で、大胆な結論を導けるかというと、極めて懐疑的である。「アラブの春」が2011年注目されたが、本当にそれにより民主主義的な政治が今後推進されるかどうかというのは、まだよく分からない。この米国の立ち位置の難しさは、オバマ政権2期目において顕著に中東問題で表れるような気がする。

栗林(双日) 
私も同感で、これだけユダヤ人がいる国で自分の故郷が攻撃されるかもしれないという懸念がある一方で、いろいろなことを過激な決断をせずにうまく流して、バランスを取りながらやっていく方法しかないのではないか。

米山(三井物産) 
間違いなくオバマ大統領がこの4年間で進め、今後も進めると思われるのは、「無人機」を使ったオペレーションである。ワシントンポスト紙が2週間ほど前に報道していたが、米軍はジブチに巨大な基地を設けていて、大変な数の無人機をそこから飛ばしてオペレーションしている。表向きはマリやイエメンといった北アフリカ諸国のアルカイダのせん滅や、早期の押さえ込みが目的のようにはみえるが、イランを含む中東も、無人機運用が可能な近い距離である。ただ無人機というのは怖いもので、実際のオペレーションはネバダ州かどこかの、8,000マイルも離れているところでテレビゲームの感覚で行われている。


6.今後の日米関係の行方


今村(司会) 
次は日米関係について。今回の大統領選では、米中関係をめぐる議論は多かったが、日米関係は同盟国ということもあってか、選挙の話題にもならなかったと思う。これから先、2期目のオバマ政権の下で日米関係はどうなるか。

栗林(双日) 
ワシントンポストのデータでは、討論会で出たキーワードが、イラン47回、イスラエル37回、中国32回、仕事32回、シリア28回、経済21回、教師14回、リビア12回、デトロイト3回、ギリシャ2回。日本の「に」の字も出ないという感じであった。

堂ノ脇(住友商事) 
日本に対する注目度の低下は著しいと感じる。今回の大統領選でも全く触れられなかった。強いて言えば、TPPに絡むところぐらいか。TPPに関してはオバマ陣営もロムニー陣営も、日本の交渉参加自体には特に反対はしておらず、日本には最終的に入ってもらいたいというのが、両陣営の考え方。米国の自動車業界からのけん制もあって選挙期間中はあまり表立って言えなかった背景もあったようだが、2期目に入った以上、従来以上に強く日本の交渉参加を促してくるのではないか。ただ、日本の方が逆に政局のため、現時点では日本側の誰と交渉をすればよいのか分からない。

米山(三井物産) 
外交や安全保障を日米関係の中心に置いている米国にとって、力強いパートナーが必要となったときに、やはり同盟関係から言っても経済力から言っても日本が自然な候補国になる。しかし、その期待に添うような日本からの積極性や前向きな提案がないということが課題である。米国が今なぜ「アジア・リバランシング」と言っているかというその意図と背景を政治、安全保障、経済の各分野でよく考慮しつつ、日本も自分自身の狙いを定め、その目標達成のために「米国と日米関係を有効に活用する」したたかさといった部分も求められるのではないか。

柳原(三菱商事) 
今回の大統領選挙では「メッセージング」の大事さを強く感じた。果たして日本は、これまで世界に貢献した点や、これからやろうとしている点を、世界に対して適切にメッセージングできているかと問われると、たぶんNo(ノー)である。日本はイラクやアフガニスタンで米国を支援する貢献をしているのに、日本の政治家はその点を世界に対して発信していない。また自衛隊と米軍、ビジネスと地方自治体という現場レベルでの日米関係は安定しているといわれるが、やはり何らかの形でこれを「耕していく」作業が必要である。

秋山(伊藤忠商事) 
民主党政権初期の迷走外交と東日本大震災という日本に大きな損失をもたらした2つの出来事のせいで、逆に米国が日本の戦略的重要さをあらためて注目をするようになったという印象。日本は国連や IMF等を含め、しっかり国際貢献をしているにもかかわらず存在感が薄いと思われるのは、謙虚で控え目を善とする日本の気質のせいだけでもなかろう。中国や韓国との国境をめぐる議論についても日本がもっと積極的に発信すれば他国の理解も深まる。良い商品を世界に送り出すと同時に、その商品を生み出した背景にある優れた社会の仕組みや文化などの日本の総合力への理解が深まれば、より正しい日本の評価を得られる。

米山(三井物産) 
政治家は政治家で当然メッセージを出すべきであるが、米国人からも「日本のビジネス界もどんどん情報発信をすべきだと思う」と言われることがある。特に「TPPと中国について、ビジネス界はどう思っているのかということを聞きたい」と言われたことがある。可能な範囲でビジネス界もメッセージングに貢献していったらいいのではないか。

柳原(三菱商事) 
ワシントンの在米英国大使館には300人ほどのスタッフがいて、世界でも一番大きな大使館であるが、大使館の次席級の人と話していたところ、「米国と歴史的なつながりがあり、戦争と友好を繰り返した英国でも、オバマ大統領と英国政府高官が会うのは相当に大変で、それぐらい英国との関係は地盤沈下している。従って、日米関係が大変だといいながらも、そんな日本はまだいい方ではないか」と言われたことがある。それを励ましと受け取るのか、英国を将来の日本の姿と見るべきなのか。欧州、それも英国のような戦勝国で米国の同盟国でさえ、大変苦労をして米国と付き合っているということがよく分かった。

今村(司会) 
対米直接投資で見れば、投資残高では首位の英国の次が日本である。英国からの投資は、実際には同国以外の国から英国を経由して投資されている場合も多く、その国の企業による投資としてみれば、日本、日系企業は首位に近いかもしれない。しかし日本企業はこれだけ投資をしていながら、米国内に十分にアピールできていない。米商務省によれば日系企業は米国の雇用の0.5%ぐらいを創出するという貢献もしている。また、TPPに関しても、日米間には投資に関する制約が少ないためにこれだけ多くの投資残高があるといえることから、TPPの必要性が日本の中で認識されにくい面もあろう。

栗林(双日) 
その投資残高をうまくアピールできないのは、昔のロックフェラービルを買収してたたかれたトラウマが日本人の中には残っているのかもしれない。

柳原(三菱商事) 
大統領選挙の討論会でロムニーが損をした発言がある。ロムニーは自分は投資のオーナーシップ、いわゆる所有権を持つことで米国経済に貢献していると言ったが、米国有権者の反応は悪かった。商社の場合も、投資行為においてどのように対外的にアピールするのかは課題である。

米山(三井物産) 
日本に興味のある米国人をグローバル人材という名の下に日本企業が採用していき、日本の価値をアピールしていくのは1つのメッセージとなる。また、日本は外に出ていく力はあるが、日本に関心を持ってもらう求心力の欠如の問題がある。英語力の問題もあるし、多少、文化的な側面もあるが、TPPを1つのチャンスにして、意識的に求心力をつくっていければよいと思う。日本への外国直接投資受け入れにしても、そのきっかけとなるのはやはりTPPであり、経済のオープン化である。

秋山(伊藤忠商事) 
日米関係に関連して私の関心が高い分野はエネルギー。世界各国のシェールガス開発が加速すると国際地政学に地殻変動が起きる。エネルギー自立を目指す米国では他国に対してどこまでガスを安定継続供給するかという議論もあるだろうし、ロシアは欧州以外の販路として日本やアジアへのガス輸出を真剣に検討するだろう。さまざまな動きと思惑の中で日本はエネルギー安定確保と安全保障の両面を視野に入れ、現実的でしたたかな戦略を推進する必要がある。

柳原(三菱商事) 
一方で非常に気になるのは、今回有権者は、自国の新エネルギーを外に拡販していこうという意識はまったくないということである。「今もし本当にエネルギーがあるのであれば、それを国内でうまく活用して、われわれが便益を最大限取れるようにしてほしい」という感覚なのかもしれない。

栗林(双日) 
やっぱり原油価格にリンクさせて高く売るのではなく、米国のエネルギー価格を安くし、その安いエネルギーを活かした産業を通じて付加価値を付けて、雇用を生み出してやるというのが、米国の生きる道ではないか。

米山(三井物産) 
インフラも含めて投資をするリスクを取るところが出てくれば、それはそれで米国にとってはメリットになる。


7.オバマ再選後の商社ビジネスの展望


今村(司会) 
最後に2013年を見越して、オバマ大統領が2期目に入る米国において、商社がどの領域を狙っていくのか、今後の有望分野、世界経済の2013年以降の展望などを聞きたい。

秋山(伊藤忠商事) 
1つの有望な分野はシェール革命に代表されるエネルギーおよびその周辺・関連分野。また具体的商売として未知数ではあるが、ヘルスケア改革が具体的な形を伴って推進される中で創出されるであろう医療・ライフケア分野でのビジネス機会には興味がある。

米山(三井物産) 
オバマ政権で明らかな主張は、「グローバル化の中で競争力を高めるために政府が果たすべき役割はある」ということである。教育分野、基礎研究開発(R&D)の他、老朽化したインフラをしっかりと更新して、最終的には付加価値型の高度製造業につなげていく。これには航空機や医療・ライフサイエンス等、いろいろな部分が入ってくる。一方、シリコンバレー型の最先端技術にも注目したい。過去4年間で一番伸びた領域はソーシャルメディア、あるいはサイバーセキュリティーに関わるIT分野であり、さらにITと製造業、ヘルスケア、教育との融合である。

栗林(双日) 
日本になくて米国にあるものといえば「インテグレーション」という分野だと思う。高い技術でつくりあげた部品を組み合わせても完成品はできない。それをインテグレートすることで部品の組み合わせではなく1つの完成品として価値が出てくる。この目に見えない分野をどのくらい日本が取り組めるかが日本の将来を決める。例えばクロスボーダーの中で武器輸出が緩和される中、日本の技術が米国の防衛産業の中に入って日米での共同開発という形をとり「インテグレーション」を学んでいくというのも1つの動き。

柳原(三菱商事) 
今後ますます新興国の人口が増え、生活レベルが上昇すると、食料供給はますます重要になる。米国の農産物の生産効率は非常に高く、そういう流れの中で商社は、今後とも供給力をさらに強めていかなければならない。化学品関係は、今回のシェールガス開発なり、素材産業の復活という話の中で、1つ重要な意味をなしていくかもしれない。特にヒューストン、テキサスあたりを見ると、石油化学産業の力も回復し、このあたりが1つの大きな転換になる。さらに、サイバーセキュリティーは、国家の安全保障も含めて日本が遅れている感が非常に強く、今後、米国としっかり協調していくべき分野ではないか。

堂ノ脇(住友商事) 
オバマ政権として特徴付けられるとすれば、教育、医療分野が注目される形になるのではないか。また、長い目で見れば、柳原さんが言われたように、サイバーセキュリティーはこれから問題になってくるだろう。米国の外では、昨今注目されているミャンマーに対する制裁の解除がどうなっていくのか。アジア重視という中で、こうした地域に対する投資動向も注目されるように思う。

今村(司会) 
インフラという点では、今回のハリケーン・サンディの被害に象徴されるように、老朽化は相当深刻になっている。これからの4年間で、電力、道路を含めたインフラの再整備が進めば、日本のノウハウを生かせる部分もあり、ビジネスチャンスではないかという気がしている。米国のGDP への寄与度の高さでみれば、やはりITであり、ヘルスケアである。この2つの分野は単に需要が大きく増えてきているだけでなく、商社として需要が伸びている割には十分に関与できていない、それでよいのかという問題意識もある。今回の大統領選との関連では、「ビッグデータの活用」が挙げられる。効率的に自分の支持者、潜在的な支持者をどう見つけるかという手法で、オバマ陣営はそれを使って地上戦を展開したといわれている。データを使っていろいろな新しいビジネスをつくっていく先駆けとして、今回の大統領選では画期的な選挙予測の手法も登場して注目を集めた。最先端の流れがこの国にはまだあるという点で、常に注視していかなければならない。


8.今後の世界経済の展望


柳原(三菱商事) 
今後の世界経済について、EUに関しては、米国がアジアに対外戦略をシフトする中で、欧州の人たちも米国が太平洋に向き過ぎるのは困ると思っている。この欧州と米国の外交上の亀裂が、例えば今後の中東なり、他の地域での外交や軍事面での協調体制に影響するのかは心配である。欧州の財政問題はまだ解決しておらず、今後も「欧州安定メカニズム」(European Stability Mechanism)や、問題となった銀行監督をどのように一元化するか、北欧が付加価値の高いものを南欧に供給して、南欧がそれを借金して買うという構造をどのように変えていくのかという問題が残る。

堂ノ脇(住友商事) 
一方、EUとしては2013年中に米国とFTA交渉を始めたいと考えている。それに対して米国がどう応えていくのかが注目される。欧州はまだ経済危機に関しては抜本的な解決策を見いだせておらず、現在の議論は全て資金繰りの解決策だけである。米国との協調、あるいは分業など、経済をもう1回底上げしていく中でどのように取り組んでいくのか、非常に興味がある。

秋山(伊藤忠商事) 
欧州経済と新興国の行方が気になる。新興国の欧州向けビジネスは大きいことから、欧州の低迷がさらに長引けば世界経済が停滞から抜け出せない状況が続く。欧州財政問題への対応は大事であるが、同時並行で進めねばならない経済活性化に向けた具体策が見えてこず意気消沈。景気は気持ちに左右されるものでもありぜひ明るい話題が欲しい。

米山(三井物産) 
その欧州との絡みで、中南米は太平洋同盟、メルコスール等、自分たちの地域統合を進め、リーマン・ショックを見事にそれなりに乗り切っている。ただ、アジアに比べると貯蓄などは低く、次に同じようなショックが起きたときにはちょっと危ない。また、ミドル・インカム・トラップすなわち「中流層のわな」に陥らずに、さらに上を目指していくための教育やR&D強化など、そういったところの投資が求められている。特に欧州の中南米への対応が伸び悩んでいる現状、資本的にも、技術的にも日本が補っていく余地は十分にあるのではないか。

柳原(三菱商事) 
今回ヒスパニック系とアジア系というのが、2つの大きなオバマ支持層としての役割を果たしたが、商社の市場もそういう意味では、中南米とアジアにシフトしており、米国内の市場もそういう形で彼らの勢いを示すような状況が反映されている。だから、ヒスパニック系とアジア系という、米国社会で強みを反映している人たちは、実はわれわれのマーケット対象国の人でもあり、米国は世界の状況を反映しているといえる。その意味では、日本はアジアの盛況を、もっと招き入れる仕組みをつくらなければ、リーダーシップが取れないということであろう。

今村(司会) 
2012年は新興国が壁に直面しつつある年になったという気がしている。例えばブラジルは、国内の大きな調整を必要とする改革に着手することなく規模の拡大ができた局面が、終わりつつあると思う。これに対して米国は、過去に改革を続けることで制約を乗り越えてきたからこそ、今の繁栄がある。ただ、その米国にしても、今回の選挙では今後も制約を乗り越えていけるとの確信は持てなかったが。新興国が日本並みの先進国になるまでには、何度も成長の壁があるはず。日本もそこを乗り越えてきたのであり、その実績にもう少し自信を持つ必要があると思うし、今後に向けて何が強みだったのかをもう1回確認する必要があるのではないか。

栗林(双日) 
その意味では、商社としてのビジネスチャンスが、そういう壁を乗り越えるお手伝いといわれるが、商社のマーケットを拡大させるのが1つの考え方かもしれない。

米山(三井物産) 
私は「トゥ・ジャパン」(To Japan)を強調したい。そのきっかけは何でもよいが、1億2,700万人という人口規模を支えるハードインフラと教育に代表されるソフトインフラをまだ維持している日本において、これから見えてくる姿は、それを使う日本人の減少、あるいは高齢化である。これらのインフラが生きているうちに将来嘱望されるような海外の優秀な人材、若者をどんどん受け入れていく。これは何も移民でなくてもよい。来日してもらい、日本をにぎやかにして、世界の状況を反映する「鏡」にしていくという発想は、日本の将来の成長において考えられる1つのオプションではないかと思うし、そこで総合商社が何か役割を果たせるならよいと思う。

(2012年11月12日、丸紅米国会社所在ビル内会議室にて開催)

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