双日 ガーナでの海水淡水化事業

双日株式会社
電力・環境インフラ事業部長
橋本 政和

今や「10億人市場」といわれ、その経済発展性が大きく注目されているアフリカですが、貧困、感染症、紛争、難民などの社会問題はいまだに深刻です。水問題もそのうちの一つ。子ども一人が生きるためには、飲み水や衛生環境を保つのに、1日当たりバケツに2杯(=20ℓ)の安全な水が必要といわれています。しかし、中でもサハラ砂漠以南のアフリカ、いわゆる「サブサハラ」 においては安全な水の確保が困難で、子どもたちの約40%が不衛生な水を飲み、5人に1人が15歳になる前に亡くなっています(出展:unicef)。


アフリカ・ガーナ共和国

当社は、2012年10月に、アフリカ・ガーナ共和国での海水淡水化事業に参画しました。日本ではカカオ豆の産地として有名なガーナですが、金やダイヤモンドなどの鉱業も主要産業となっています。近年では沖合油田での原油生産も開始され、過去5年間では5%前後の経済成長を安定的に遂げている国です。しかし、やはり安全な飲み水を供給するインフラがまだ整っておらず、国民の4割に対して、安心して飲める水が行き届いていないという状況です。 都市部ですら水道の整備は不十分で、井戸や川から水をくんで生活している地域も数多くあります。乾季には緑藻の発生により水質が悪化することもあり、薬剤投入のコストが高くなっています。2010年にはコレラも発生するなど、安全な飲み水の確保が喫緊の課題となっています。

当社のプロジェクトでは、首都アクラにおいてプラントの建設から運営までを手掛け、逆浸透膜(RO膜)の技術により、最大で1日当たり6万㎥(約50万人分)の飲み水を供給することができます。造水した水は、ガーナ水公社に25年にわたって供給します。総事業費は約100億円。2012年11月に着工し、商業運転開始は2014年を予定。プロジェクトの遂行に当たっては、当社と戦略的提携関係にあり、世界で1日に合計100万㎥を造水しアフリカでの実績も豊富なスペインのアベンゴアウォーター社をメインパートナーとしました。また、このプロジェクトは、アフリカにおける日本企業初の海水淡水化事業投資案件となります。

世界全体で見ても、水ビジネスの世界市場規模は現在の約40兆円から、2025年には約85兆円にまで拡大するものと期待されています。特に海水淡水化の分野は、アジアや中南米、中東、アフリカなどの新興国を中心として、需要がさらに高まるものと考えています。

当社は、これまでプラントビジネスなどを中心として、アフリカにおけるビジネスを積み上げてきました。サブサハラ地域初の海水淡水化事業となる本プロジェクトの着実な遂行によってさらにノウハウを蓄積し、今後の水ビジネスの可能性について探っていきたいと考えています。

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