住友商事が取り組むアフリカビジネス

住友商事株式会社
アフリカ支配人
小野島 恭

1. 成長するアフリカ


住友商事がヨハネスブルグに駐在員を置いたのは1962年で、50年以前にさかのぼる。その後、1990年代には20拠点以上のオフィスを構えたが、現在は、北アフリカに4ヵ所、サブサハラアフリカに6ヵ所の計10拠点を置いている。
アフリカの成長とともに商社のビジネスは変化しており、住友商事も時代の変遷とともに取り組みを変化させてきた。かつてアフリカは資源供給地としての役割であったが、ビジネスは政府開発援助(ODA)関連に移り、2000年代半ばから不足するインフラ整備ビジネスが増加した。これからは生活水準向上と人口増加が相まってアフリカは世界の一大消費市場になると見込まれ、資材、消費財、食糧などのビジネスが増えると予想される。住友商事はアフリカの成長に合わせ、さまざまなビジネスや取り組みでアフリカにおける「豊かさと夢」の実現に貢献する企業でありたいと考えている。


2. 巨大資源プロジェクト


アンバトビーニッケル精錬プラント

南アフリカのアソマン社は鉄鉱石、マンガン、クロムの鉱山権益を有する資源会社である。住友商事は同社の生産する鉱石と合金鉄を日本を含む極東向けに50年にわたり販売している。1994年、アパルトヘイト終焉時には日本から南アへの民主政権後最初の投資としていち早くアソマン社への投資を実現し、その後、関係会社への投資額を増やし、現在ではアソマングループへの投資額は約450億円にのぼる。アソマン社は年間、鉄鉱石1,400万t、マンガン鉱石300万t、クロム鉱石100万t、合金鉄30万tを生産しているが、住友商事はこの約半分を極東市場へ販売している。
マダガスカル、アンバトビープロジェクトは商社が手掛ける資源プロジェクトの中でも最大級である。本プロジェクトはニッケル鉱山から精錬までの一貫プロジェクトで年間ニッケルで6万(t日本の需要の25%)、コバルトで5,600t(日本の需要の40%)を30年にわたって生産する。資本構成はカナダのシェリットが40%、韓国の資源公社(KORES)と住友商事がそれぞれ27.5%、コントラクターであるカナダのSNC-Lavalinが5%である。2007年に始まった建設は2012年に完工し、現在はニッケル、コバルトの生産を徐々に引き上げている。間接を含め約2万人の新規雇用創出し、フル操業になればマダガスカルGDPの10-20%に貢献する壮大なプロジェクトである。住友商事からは現場の財務、工程、運輸、 販売などに人材を派遣しており、パートナー各社とグリーンフィールドから立ち上げている。
資源といえば、南アフリカのパルプ原料のウッ ドチップ輸出も1970年代から長期に継続しているビジネスである。住友商事は1975年日本向けに初めて輸出して以降、現在まで南ア産 チップの主要サプライヤーである。2000年代半ばには南アフリカの年間総輸出量500万tの約50%を住友商事経由、輸出していたが、現在は国内需要が旺盛であること日本での需要が減っていることでピーク時の半分程度に輸出量を減らしている。


3. インフラ関連ビジネス


住友商事はかねてより南アフリカESKOM向けに発電所の改修、変電設備を納入するなどインフラ関連ビジネスに注力してきた。近年、サブサハラ諸国では電力不足は深刻な問題になっている。そんな中2012年タンザニア最大の商業都市ダルエスサラームの電力不足をカバーする目的でキネレジ発電所建設プロジェクトをタンザニア電力公社より受注した。タンザニアでは初のガスコンバインドサイクルを使った発電所で発電能力は240MW、完成後はタンザニア国内の約20%の電力供給が期待されている。タンザニアにとっても1961年の独立後、最大の国家プロジェクトとなる。
さらに、アフリカでは多くの国で新たにガス、オイルが見つかっており、その中で住友商事はガスを利用してアンゴラで双日、東洋エンジニアリング、三菱重工とコンソーシアムを組んでアンモニア尿素EPCプロジェクトのFSを受注している。同様にモザンビークにおいても肥料プラントのFSを開始した。
一方、南アフリカは2011年環境サミットのホスト国を務めるなどクリーンエネルギーへの 転換にも熱心である。住友商事は、風力発電IPP事業に応札し、2012年に南ア政府と電力販売契約を締結した。東ケープ州に発電用風車を40基建設し100MWの電力を供給するプロジェクトで既に着工している。住友商事はこのプロジェクトの60%の権益を保有し、2014年から20年間電力を供給を続ける。


4. CSR活動


住友商事は健全なビジネス活動を通じ各国の社会的課題を解決していく行動そのものがCSRであるという考えを持っている。地域との共生を目指すためにさらに目に見えるCSR活動を実施している。
住友商事は2008年よりアンゴラで地雷除去活動を実施するNPO日本地雷処理を支援する会(JMAS)を支援している。アンゴラには1975-2002年の内戦の間に多くの地雷がまかれ、現在も800万-1,000万個の地雷が埋まっているといわれている。多くの先進国が地雷製造に関わっている中、日本のNPOがその除去に貢献している。マダガスカルでは保健、衛生、教育および農業指導を含む暮らしの支援にフォーカスした地域貢献を行っている他、南アフリカでは辺境地の鉱山地区に地域住民が集うコミュニティーセンターの設立、子供たちの教育環境の整備活動支援などを実施している。また、ケニア、ウガンダでは日本赤十字社と協賛で無医村地域への巡回診療にかかる医薬品の提供や出産時に最低限必要なキットを妊婦に手渡す活動を支援している。


5. 次なるステージへ


住友商事はアフリカの可能性に着目し、2007年より「サブサハラ市場開拓プロジェクト推進 支援制度」を設け全社レベルでのアフリカでのビジネス開拓を始めた。2009年4月より「サブサハラ市場開拓タスクフォース」を設立し営業の 出張支援、市場調査、専任者の現地派遣などを実施した。その後、2011年にはタスクフォースチームの拠点をヨハネスブルグに移し「サブサ ハラオフィス」としてより現場に密着してビジネス 開拓を推進し、この間、2011年5月にガーナにアクラ事務所を、2012年10月にはタンザニアにダルエスサラーム事務所を再開した。
2013年4月、住友商事のアフリカ地域はヨハネスブルグ支店をハブとする支配人制を導入し新たなステージに入る。
アフリカは、インフラ未整備、政治リスク、人材不足、行政の不透明、治安問題など課題を多く抱えているが、一方で可能性は無限であり、 日本商社が直接、国や地域の成長に寄与できる場所でもある。
住友商事のアフリカでの飛躍に期待いただきたい。

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