三菱商事の国内太陽光発電(メガソーラー)事業における取り組み

三菱商事株式会社 地球環境・インフラ事業開発部門
新エネルギー・電力事業本部 アジア・大洋州事業ユニット ユニットマネージャー
冨来 英明

東日本大震災以降、原子力発電への依存度が低下する中、新たなエネルギー安全保障システムの確立が急務であり、同時に地球温暖化対策の面からも、再生可能エネルギーを中心としたエネルギー自給率の向上が不可欠な状況となっています。三菱商事(以下、当社)も、エネルギー地産地消の推進による地域活性化、新産業育成と雇用創出の観点からも意義のある国内再生可能エネルギー事業を、各都道府県・市町村や事業パートナーと連携しながら、積極的に取り組んでいます。

現在当社は、愛知県田原市(8万kW)、福島県いわき市(1.8万kW)、岡山県玉野市(1.6万kW)など国内数ヵ所で、合計15万kWを超える大規模太陽光発電(メガソーラー)事業の開発を進めています。
2012年7月1日に施行された「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」いわゆる「再エネ特措法」は、日本が再生可能エネルギー拡大に向けて踏み出した大きな一歩です。再生可能エネルギー発電事業者が発電した電気を、電力会社が定められた期間と価格で買い取ることを義務付けるという、まさに電力ビジネスの構造的イノベーションのスタートともいえます。特に、太陽光発電については他電源に比べて技術的な参入障壁が低いこともあって、発電事業の経験を持たない異業種や中小規模のファンド、デベロッパーなどの新規参入によって市場は活況を呈しています。これら新興企業はおしなべて身軽で経営判断が速く、積極果敢に全国で開発を進めていますが、当社では急激な構造的イノベーションの中でスピード感のある競合他社に対抗できるように、ビジネスモデルのイノベーションをもって臨むこととしました。
具体的には、海外の発電事業を通じて得た知見とノウハウを用い、国内ではまだ導入実績が少ないプロジェクトファイナンスによる資金調達を行うことと致しました。加えて事業成立の確実性と事業採算性の確保を優先し、スケールメリットを狙って可能な限り大規模で、なかんずく電力会社との系統連系が容易な立地を持つプロジェクトを選択することとしました。開発を進めるに当たっては、固定価格買い取り制度導入が先行する海外市場で経験・ノウハウを蓄積した担当者を招集してプロジェクトチームを立ち上げました。また、太陽光発電は天候次第で発電量が変動する不安定な電源であり、電力を買い取る電力会社とは入念で綿密な系統連系協議が不可欠ですので、愛知や岡山のプロジェクトは各電力会社のグループ企業との共同開発で進めており、良好なパートナーリングによって円滑に協議が進められています。


愛知田原市8万kW太陽光発電所 完成予想


同左


福島県いわき市 1.8万kW太陽光発電所 完成予想


岡山県玉野市1.6万kW太陽光発電所 完成予想


現在開発中のプロジェクトの容量は合計で15万kWを超えており、いずれも2014年度内の運転開始を予定しております。また、2020年には20万kWまで増大させる計画としています。一方で政府発表の通り、固定買い取り価格は原則として毎年見直しが行われますが、好条件のプロジェクトを選択すれば一定の価格帯までは新規開発は継続が可能と判断しており、今後その見極めが肝要と考えています。また、規模感と安定した収益の太陽光事業をまず確実に立ち上げることで、これを国内の再生可能エネルギー事業開発のプラットホームとして、引き続いて風力や地熱発電など他電源の開発に積極的に取り組んでいく方針です。
日本の再生可能エネルギーのさらなる普及のためには、技術開発による発電コストの大幅削減(グリッドパリティ実現)や、発電に好条件な遠隔地と電力需要地である都市部をつなぐ送電網の強化、需要量と供給量を需要・供給両方から制御し最適化できるスマートグリッドなど新技術の開発が不可欠とされていますが、これらの実現にはまだ相応の時間が必要です。
一方で電力小売り自由化、送電網の広域系統運用や発送電分離などの本格的な電力システム改革の実現についても、緒に就いたばかりです。経済成長を促す土台となる安価で安定的な電力供給の実現には、社会インフラを強靭にさせる制度設計が求められており、再エネ特措法による再生可能エネルギー発電事業の市場開放およびインフラの強化は国家エネルギー・環境戦略に基づいて政府主導で進められております。
当社はその戦略にのっとって、安定した収益源となる発電資産を開発して長期保有することで、エネルギー安全保障や地球温暖化対策などの観点からも、国益に資する再生可能エネルギーの国内普及に向けて大きく貢献したいと考えています。

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