第5回アフリカ開発会議 (TICAD Ⅴ)に向けた取り組み

外務省
TICAD Ⅴ(第5回アフリカ開発会議)担当大使
伊藤 誠

6月1-3日の期間、横浜で第5回アフリカ開発会議(TICAD Ⅴ)が開催されます。TICADは、国連などに呼び掛け日本主導で始めたアフリカ開発をテーマとする首脳級会合です。1993年に第1回会議を日本で開催して以来、5年ごとに日本で開催しており、TICAD Ⅴは、TICAD20周年の記念すべき会議です。

TICAD発足当初から提唱しているアフリカ諸国の「オーナーシップ」と日本を含む国際社会の「パートナーシップ」に基づき、日本は、経済発展、貧困、紛争などアフリカが抱える開発課題の克服のために、アフリカと共に取り組んでいます。日本で開催されるTICADは、多くのアフリカ首脳を迎えて、日本の対アフリカ外交を強化する絶好の機会です。前回2008年のTICAD Ⅳでは、首脳級41名を含むアフリカから51ヵ国の参加がありました。今回のTICAD Ⅴでもかなりの規模の参加者が見込まれており、日アフリカ関係のさらなる強化が期待されます。

近年、アフリカの経済成長率は年平均で5%を超え、資源価格の高騰等を背景に貿易はこの10年間で約4倍に拡大しています。2007年には、アフリカへの海外直接投資額がアフリカへのODA額を超え、アフリカは新たな投資先として世界から注目を集めています。また、JETROの在アフリカ進出日系企業実態調査(2012年度調査)においても、約6割近くの企業がアフリカでのビジネス拡大を予定・検討中であり、中でも中間層を顧客対象として視野に入れている企業が多く、アフリカを将来の消費市場として捉えている日本企業も増えています。今やアフリカは、「希望と機会の大陸」として国際社会の注目を集め、アジアに次ぐ世界の成長センターとしてその存在感を増しています。わが国は、TICADプロセスを基軸とした開発支援に積極的に取り組むとともに、ビジネスパートナーとしてのアフリカにも注目しています。

3月16日から17日にエチオピアでTICAD Ⅴ閣僚級準備会合が開催され、日本から岸田外務大臣が共同議長として出席し、私も本会合に参加いたしました。46名の閣僚級代表を含むアフリカ52ヵ国、84の地域・国際機関、NGO、民間セクターなど約 1,000名を超える参加者が会場になったアフリカ連合(AU)本会議場に集まり、TICAD Ⅴの成功に向けたアフリカの意気込みとTICAD Ⅴに対する国際的な関心の高さをあらためて実感いたしました。そして、予定時間をオーバーして熱の込もった議論が展開され、出席した多くのアフリカ側代表者からは、貿易・投資の拡大を通じたさらなる成長への強い意志が示されました。TICAD Ⅴでは、「躍動のアフリカと手を携えて」という基本テーマの下に、「強固で持続可能な経済」、「包摂的で強靱な社会」、「平和と安定」という相互に連関する3つの視点から議論を深めていきます。

閣僚級準備会合では、躍動するアフリカのさらなる成長を目指す強い決意とそのための具体的な戦略的方向性を定めた成果文書(「横浜宣言2013」および「横浜行動計画2013-2017」)について、アフリカ側との間で真剣な議論が交わされ、閣僚レベルで大筋合意されたことは大きな成果です。また、同会合で、テロとの闘いへの日本の姿勢を示し、成長の基盤であるアフリカの平和と安定を実現するため総額約5.5億ドルの支援を表明し、アフリカ側から支援への謝意と日本の取り組みを高く評価する声が多く寄せられました。そして、同会合の貿易・投資のセッションで、民間企業を代表して加瀬経団連サブサハラ地域委員会委員長がスピーチを行い、日本がオールジャパンとしてアフリカの成長に貢献する姿勢をアフリカ側に強く印象付けることができました。

アフリカ側は日本企業のアフリカ進出を雇用創出や技術移転につながるものとして歓迎しており、日本との貿易・投資の拡大に強い期待を寄せています。また、日本の民間企業も拡大する10億人市場であるアフリカの潜在性に注目し、進出意欲を示しています。こうしたアフリカ側の期待と民間企業の意欲をつなげ、日本の対アフリカ貿易・投資を後押しするための官民連携の在り方を検討するため、外務大臣と経団連副会長を共同代表とする政府と民間企業の経営者からなる「TICAD Ⅴ推進官民連携協議会」を2012年8月に発足させ、これまで3回の会合を開催してきました。

同協議会には、日本を代表する民間企業の経営者の参加を得て、アフリカのさらなる成長につながる対アフリカ貿易・投資促進のために日本政府が取り組むべき措置や日本からの貿易・投資促進のために、アフリカ各国が講ずるべき施策について議論しています。これまでの会合を通じて、資源、第3次産業、農業への技術移転や雇用創出を伴う付加価値の高い投資や法制度を含む市場の整備の重要性、アフリカにおけるビジネスの円滑化や貿易活性化のために官民一体となったインフラ整備(含む投資協定などのソフトインフラ)の重要性などが指摘され、雇用に結び付く教育の推進や治安を含むアフリカ社会の安定が日本企業およびアフリカ双方の利益になるとの認識が共有されています。特に、アフリカ側が取り組むべき施策として、治安を含む安全対策、投資財産および知的財産の保護、人の流れや物流の円滑化に力点を置くべきと民間側から指摘されており、これらは日本からアフリカへの重要なメッセージです。同協議会での議論をもとに、TICAD Ⅴに向けた日本企業のアフリカ進出促進のための具体的な措置に取り組んでまいります。

TICAD Ⅴの開催に合わせて、アフリカン・フェアなどの展示会や投資セミナー、シンポジウムなどのサイドイベントが多数企画されています。TICAD Ⅴには、前述の通り多くのアフリカ各国首脳が来日予定であり、民間企業の皆さまにとってはアフリカとのビジネスチャンスを拡大させる絶好の機会でもあります。TICAD Ⅴが、アフリカ諸国と日本企業の双方に利益をもたらす機会となるよう、民間企業の皆さまの協力の下、TICAD Ⅴの成功に向けて日本政府を挙げて取り組んでまいります。

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