2013年11月号 (No.719)
2013年は、日・ASEAN友好協力40周年として注目されるべき年といえよう。これは、日本とASEAN諸国の交流が、1973年の合成ゴムフォーラムに始まり、40周年を迎えることを記念するものである。
日本とASEANは、1973年の対話に始まり、1977年には日・ASEANフォーラムを開催し、交流関係を正式なものとした。以後40年の間に、日・ASEAN関係はあらゆる分野において深化し、また拡大した。2012年7月の日・ASEAN外相会議では、今年を通じて日・ASEAN双方において記念事業を行うことが合意された。この合意を受け、今年は、日・ASEAN双方で政治、経済、文化、青少年交流、観光など幅広い分野で交流事業が実施されており、その概要は外務省のホームページでも紹介されている通りである。
日本とASEANの関係が、ますます重要になっていることは、わが国の安倍総理による積極的なASEAN諸国の訪問においても顕著である。今年10月の日・ASEAN首脳会議(於ブルネイ)において総理は、日本は対ASEAN関係を重視しており、日・ASEAN友好協力40周年である今年、ASEAN 加盟10ヵ国をすべて訪問したいとの意向を表明した。また、今年12月には、日・ASEAN友好協力40周年の締めくくりとして、東京で日・ASEAN特別首脳会議が開催される予定であり、日本とASEAN関係の強化とその方向性についてさらなる議論が行われるものと期待される。
日本アセアンセンターは、1981年に設立された日本とASEAN 諸国の間の経済的パートナーシップの促進を目的とする国際機関である。そもそもセンターの設立自体が、1970年代の福田元総理による「心と心の触れ合う」日・ASEAN関係を目指すという「福田ドクトリン」を体現したものとも位置付けられる。
当センターは30年以上にわたり、貿易・投資・観光の分野において、日本とASEAN諸国間の経済的パートナーシップの促進に努めてきた。しかしながら日本とASEAN諸国を取り巻く状況は32年前の設立当初と、大きく変わった。当センターはASEAN先発加盟各国の目覚ましい経済発展や、後発加盟国との経済格差といった新たな状況を反映しつつ、急速な変化や個々の国の発展のペースに対応すべく、既存の活動をさらに拡大・深化させ今日に至る。
例えば2011年、それまで日本からASEAN諸国への一方通行であった投資と観光の分野においての促進活動は、双方向の展開を目指すことが新たな目標として追加された。さらに、同時期より、経済面での交流に限らず、「人の交流」がセンターの4番目のミッションに加わり、社会文化芸術面の交流にも力を入れることとなった。
日・ASEAN友好協力40周年に当たる今年、当センターも、ASEAN各国の大使館や地方自治体、民間企業やビジネス団体等と協力し、積極的に記念事業を実施している。当センターにおける記念事業は深化する日・ASEAN関係を反映するかのごとく多岐にわたっており、外務省のホームページに登録されている関連事業数も150を超える。
例えばASEAN諸国と日本企業とのビジネス促進を目的とした交流会・セミナーの実施、コンテンツ産業におけるビジネスマッチングを目的としたアセアン・クリエイティブ・ネットワーク(ACN)の立ち上げ、チンロンやセパタクローといったASEAN諸国の伝統スポーツを紹介するASEANスポーツキャラバン、ASEAN諸国出身留学生の日本企業への就職支援等々、これら一部の事業を概観しただけでも、当センターの事業の広がりを実感していただけることと思う。
また、オールジャパンとして取り組む日本への観光客誘致の一環として実施している、ムスリム観光客の日本への誘致促進のためのセミナーは、日本各地で好評を得ており、年内には25回以上の実施となる見込みである。
直近の記念事業としては、10月に、ASEAN各国の大使館の協力の下、初めての試みとなる ASEAN フェスティバル 2013を山下公園(於横浜市)において開催した。ASEAN諸国を、豊かな食文化や芸能を通じて紹介することを目的としたこのフェスティバルは、悪天候にもかかわらず10万人の来訪者を迎えた。
ASEAN首脳は、1997年の「ASEANビジョン」および2003年の「第二ASEAN協和宣言」において、ASEAN共同体を2015年末までに設立することをASEAN共通の目標として設定した。今後は、この共同体の設立および発展が、ASEAN諸国における最も重要な課題となると思われるが、日本は当初より、このASEANの新たな目標を支援するべく、ASEAN連結性支援への協力としてインフラ整備や人材育成などを積極的に行ってきた。
当センターも、ASEAN憲章(2008年発効)において、ASEAN共同体を構成するASEAN経済共同体(AEC)を支援する重要な機関の一つとして位置付けられていることもあり、今後は、AEC設立に向けた支援を事業を通じて行うことに力を入れていきたいと考えている。AECは、より緊密な経済統合を通じ経済成長および開発のための競争力を強化することを目的とするものであるが、その設立によるインパクトは、現地で展開する日系企業にとどまらず、日本全体ひいては日本とASEAN諸国の友好関係にも影響を及ぼし得る壮大な試みである。
日・ASEANの友好協力関係は、今年をきっかけとして、さらなる深まりを見せていくことと思われる。日・ASEAN間の国際機関として、今後も一層の共生関係の強化に寄与していきたいと考えている。