双日が行うグリーンケミカル事業について

双日株式会社
化学部門 ライフサイエンス事業開発室 室長
濱中 通陽

グリーンケミカルは、再生可能資源である植物・農産物やその副産物、廃棄物などのバイオマスから糖、中間体を経て得られる有用化学製品で従来の化石燃料由来化学品を代替していくケミカル全般を指します。石油全面依存からの脱却、世界的な環境問題意識への高まりに加え、製造技術の革新が着実に進む中で、当社の化学部門・ライフサイエンス事業開発室では、新たな分野としてグリーンケミカルの事業開発に取り組んでおります。


双日のグリーンケミカルへの取り組み


米ミリアント社の工場

当社は、トウゴマという植物資源から取れるひまし油誘導体であるセバシン酸、デカンジ アミンの取り扱いからスタートし、糖を原料としたバイオコハク酸、バイオグリコールへと展開を進めております。
これまでのグリーンケミカルは、界面活性剤、油脂工業向けが中心となっておりましたが、資源枯渇問題ならびに温室効果ガスによる地球温暖化への対応といった環境問題意識の高まりを受け、プラスチックならびに化学工業製品への展開が進んでおります。
当社としては、グリーンケミカルを利用した最終用途展開や市場創出を進める出口戦略を取る一方で、入り口となる資源の確保ならびに可食から非可食に向けた新たな技術の確保を進め、原料からのバリューチェーンを構築の上、市場拡大ならびに再生可能社会の実現を目指しております。

①ひまし油誘導体
ひまし油の分解より得られるセバシン酸は、一般的には植物由来のグリーンケミカルとしてクーラント、可塑剤など工業用途で使用されております。近年ではウレタン樹脂向けポリエステルポリオール、特殊ポリエステル向け需要が拡大、セバシン酸原料のナイロン樹脂はバイオ樹脂として自動車・電子電材用途で注目を浴びています。また、誘導体であるデカンジアミンを原料に高耐熱性の新たな樹脂の開発も進められています。
当社は、フランスArkema社と国内向けマーケティングにつき戦略提携契約を締結の上、セバシン酸については同グループ会社であるセバシン酸世界最大のメーカーの中国CASDA Biomaterials社(製造能力4万5,000t/年)と、誘導体であるデカンジアミンについては同グループ会社である中国 Hipro Polymer社と製品の国内市場ならびに新たな用途開発に向けた取り組みを推進しております。
②バイオコハク酸
バイオケミカルの新たな技術開発が進められている中、C4ケミカルであるバイオコハク酸につき米国バイオベンチャーでタイ国営石油化学最大手PTTGCのグループ会社であるMyriant Corporationと提携し、2011年にアジア4ヵ国向け販売代理店権を獲得しました。2013年夏より商業生産された米国・ルイジアナ州にて1万3,500tのバイオコハク酸をウレタン・可塑剤および生分解性樹脂用途に販売を開始しております。
今後、バイオコハク酸からのブタンジオール製造の検討およびアジアでの第2期大型設備の事業化を目指し販売の拡大と新規市場創出を進めております。
③バイオポリマー
コハク酸の誘導体であるPBSは、生分解を保有するグリーンプラスチックと位置付けられていますが、原料となるコハク酸ならびにブタンジオールを植物由来原料に置き換えることで、生分解機能を保有する100%バイオマスプラスチックとなります。
中国において社会問題になりつつあるホワイト・ポリューション(廃棄プラスチックによる土壌汚染)の低減を目指し、PBSを用いた農業用フィルムの拡販を図り、問題の解消と生分解プラスチック市場の拡大を進めております。
また、双日グループでは、双日プラネットにてバイオプラスチックとしてブラジルBraskem社のバイオPEならびにオランダSynbra社のPLA樹脂の販売を行っております。
④非可食資源への取り組み
入り口である原料面での取り組みとしては、人口増加に伴う食糧供給問題も世界的に抱える中、安定的に確保が可能な非可食資源からの製造開発(第2世代)がエタノール中心に進められております。当社としても非可食発酵技術(菌、プロセス)および非可食資源の回収システム構築を視野に入れ、アジアおよび南米での事業化を目指し検討を進めております。



最後に


当社は再生可能社会の実現に向け、マーケティング・セールスによる市場創出・拡大を進める一方で、非可食資源および製造技術開発を確保の上、アジアを含む新興国でのグリーンケミカルの事業化を推進していきます。
これまで石炭から石油、ガス、次いでシェールガスとエネルギー構造が変遷する中で、グリーンケミカル分野を新たなビジネス分野と 位置付け進めていきたいと考えております。

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