2015年9月号(No.739)
当社は2014年10月、女性活躍・ダイバーシティ推進室を設置しました。商社は男性が多い業界ですが、今は新卒採用者の2割程度は女性となっており、女性が活躍しなければ、会社としても大きな損失になりますので、当社では女性の活躍を中心としたダイバーシティ推進に取り組んでいます。当室には専任メンバーが8人おり、子育て中の女性社員も多くいます。また各部門・グループから子どもを持つ女性兼務者を1人ずつ計9人任命してもらい、彼女たちをキーとして当社全体に施策を展開しています。
当社の社員は6,373人、うち女性が1,664人と26%を占めています。1987年から新卒女性総合職の採用を開始しましたが、新卒採用者に占める女性の割合は、2000年には15%を超え、2015年度は21%(166人中35人)となっています。また、女性管理職は312人と、全体の7.9%を占めており、2020年には10%超となる見込みです。子育て中の女性社員も336人(うち総合職が108人)おり、今後さらに出産・育児を迎える女性社員が増えることが予想されます。
そこで、女性にも長く戦力として働いてもらうために、女性活躍推進施策を本格的に開始することにしました。業務も評価も男女平等は当然ですが、出産後働くことを選択する女性にとって、不利益を被らないように働く環境を整えるというのが当社の基本的な考えです。(データは2015年4月1日現在)
女性活躍推進施策を検討する上で、最初に取り組んだことは、まず、会社の男性社員に、子育て中の女性社員が何に困っているかを理解してもらうことでした。そのため、子を持つ女性社員の働き方や時間の使い方を説明し、働き続けるためにはどんな支援が必要なのかを具体的に説明することで、社内に理解を得ることができ、2015年度の対応方針をまとめることができました。
方針では、①子どもの預け先及び時間のやりくりの問題にフォーカスした支援策、②ライフイベントを前提としたキャリアサポート、③コミュニケーション改善策や多様な働き方を受容する風土づくり、を掲げています。この方針に基づき、2015年4月より複合的サポート策「女性活躍推進パッケージ」第1弾として、下記14項目をスタートしました。
これらは女性活躍支援策として開始しましたが、実際には、「MC育児コンシェルジュ」や「子の学校行事休暇」は男性社員の利用率も高く、とりわけ共働きの若い世代の利用者が多いのが特徴です。一般的に、休暇については、「また有休をとる」と思われたくない文化が日本企業には古くからあるように感じますが、学校の行事で休むということを明言することで、卒業式、入学式シーズンでも休暇申請しやすいと好評を得ており、すでに4月だけで約90人の利用がありました。
「女性活躍推進パッケージ」第1弾の中でも大きな取り組みとして、MC学童を開設しました。夏休みなど長期休暇中は、子どもも親も満足する預け先を確保することは難しく、子どもを持つ母親からすると精神的な負担が大きい時期です。毎日の子どもの予定を組んだり送り迎えの手配をしたり、私自身苦労をしてきたので、同じような経験を後輩社員にさせたくないという思いから、MC学童を開設しました。
2015年春休みに5日間のトライアルを実施したところ、子どもの満足度も高く、また母親社員からも評判が良かったため、夏休みから本格始動し、4週間開設しました。1週間単位のパッケージになっていますが、4週間全て参加することも可能です。小学生の子どもを持つ女性社員が対象ですが、人数の余裕があれば共働きの男性社員にも声を掛けています。今回は全体で延べ約90人の申し込みがあり、常時約20人の子どもに参加していただきました。
プログラムの流れですが、朝、親子一緒に本社まで通勤し、集合後、子どもたちはバスで最寄りの提携施設に向かいます。午前中は勉強し、食堂での昼食を挟んで、午後は英語やプールなどのプログラムで過ごし、夕方再びバスで本社まで戻り、親と合流後、解散となります。
子どもを預けるには、親の都合だけではなく、子どもの満足感がとても重要になります。また、母親社員が仕事を続けるには、母親の仕事に対する子どもの理解がとても重要です。母子一緒に通勤する時間は、母と子の大事な対話時間になり、そこで子どもにも気付きが生まれることが分かりました。「毎日満員電車で通勤して、ママ大変だね」と子どもが理解してくれたり、日頃なかなか味わいにくい、母と二人で一緒にいる満足感が生まれたりします。
また、MC学童を通じて母親社員同士が交流する機会にもなり、社員食堂で親子のグループが一緒に夕食を取るなど、良いネットワークも生まれているようです。
当社の両立支援制度は、従来より十分に整備されている状況であったと考えています。一方で、今回の「女性活躍推進パッケージ」第1 弾は、制度面だけではなく、子育て中の社員が安心して働くことを運用面から支援する、ということを強く意識して施策を検討しました。今後も社員がよりよく働けるよう、きめ細かな支援策を考えていきたいと思っています。
(聞き手:広報・調査グループ 蟹田綾乃)