三井物産のダイバーシティへの取り組み

三井物産株式会社 人事総務部 執行役員 人事総務部長
小野 元生

企業競争力の向上のためのダイバーシティ

総合商社である当社は長らく新卒採用された日本人男性総合職中心の会社でしたが、これは過去の話になりつつあります。当社に入社する総合職に占める女性や外国人、中途採用の割合は近年増えており、当社には、性別や国籍を含め、多様な価値観やバックグラウンド、さまざまな考え方を持つ人材が存在しています。彼ら、彼女らがお互いを理解し、認め合い、そして切磋琢磨することによって新たなビジネス・イノベーションが生まれ、それが企業としての競争力の源泉になる。このような考えの下、当社は多様な人材の総戦力化を目指し、ダイバーシティ経営にかじを切りました。

女性の活躍推進について

多様な人材の総戦力化への取り組みの中で、当社ではとりわけ女性活躍推進を喫緊の課題と捉え、性別によらず活躍できる職場環境づくりと人材育成に取り組んでいます。新卒で入社する総合職の中で女性が占める割合は近年20%を超え、全総合職に占める女性の割合も約10%となりました。当社のあらゆる現場で女性社員が活躍することが当たり前にならなければならない、そのために必要となる施策は今後も積極的に推進していく考えであり、2011年にその実行組織として人事総務部内にグローバル・ダイバーシティ室を設置しました。海外で活躍する女性社員も年々増加し、2015年4月時点で54人が駐在(研修員等を含む)、配偶者と子を帯同、あるいは子のみ帯同している事例もあります。

女性活躍推進に関する自主行動計画


2014年7月、経団連のホームページ上に当社女性管理職数の定量目標を掲載しました。具体的には、2014年4月時点の女性管理職数67人を基準として、「2015年にはほぼ倍増、2020年ごろまでには現在の3倍以上を目指す」としました。2015年7月時点では126人となり、最初の目標は達成できました。女性総合職の採用を近年増やしていることから、女性の管理職予備軍も今後着実に増加し、次の目標も達成可能な数字と考えています。

また、2014年4月時点では2人であった女性役員は、2015年の株主総会にて外国人の女性取締役が誕生したことにより3人となりました。さらに、2015年4月に当社初の女性部長が誕生しましたが、彼女は生え抜き社員です。今後も当社の女性活躍推進の進捗状況はホームページ等を通じて対外的にも積極発信してまいります。

女性の活躍推進に関する今後の課題

当社の女性活躍推進はまだ道半ばであり、課題はあります。その一つが女性社員本人の意識付けです。女性には固有のライフイベント等ありますが、ぜひキャリアへのこだわりやチャレンジ精神を持ち続けて活躍してもらいたいと思います。

同時に、当社社員、とりわけ男性上司の側の意識改革も課題であり、女性社員が男性社員と同じように、仕事を通じて成長し、キャリア形成ができるような風土を会社全体でつくっていかなければいけません。ご家族の理解も大切です。また、生産性の向上や効率化を目指した働き方を追求していくことも必要と考えています。

人材のグローバル化への取り組み

ダイバーシティという観点では、女性活躍推進と同様、当社にとって重要な課題となっているのは、人材のグローバル化です。世界の成長市場に活動領域を広げ、各国・地域に深く根を張ったビジネスを展開するには、世界各国・地域を熟知した人材の登用が必要です。日本の本社で採用された総合職の属性が近年多様化されてきたとはいえ、日本からの駐在員だけに頼り続けるのは限界があります。世界中の当社拠点には約3,000人の海外採用社員がいます。また、国内外に4万人近い当社関係会社社員もいます。こうしたグローバルで多様な人材が多様な価値観を持って、さまざまな分野で縦横無尽に活躍できるような人材基盤の構築に今後も取り組んでいきます。

最後に

自身のキャリアを振り返ると、初配属が鋼管貿易部、北京や台北での駐在、経営企画部、エネルギー鋼材事業部長を経て、直近は上海三井物産で300人ほどの社員のうち、中国人が250人という環境の中、総経理(社長)として、成長する中国を舞台にさまざまな領域での仕事に従事してきました。たまたま「中国」と「鉄鋼」というキーワードでくくることができますが、総合商社の仕事は幅広いので、キャリアパスの選択肢もさまざまであり、従って総合商社の求める人間像も一つに特定することはできません。やはり多種多様な人材がそれぞれの強み・専門性を発揮しながら、強い意志と情熱を持って、グローバルに仕事に取り組んでほしいと思います。

当社にとって人材こそが財産であり、人事総務部は全ての社員が笑顔で、生き生きと仕事に取り組める環境の構築・整備が使命だと考えています。

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