豊田通商が取り組む「職場働き方見直しプロジェクト」

豊田通商株式会社 グローバルD&I推進室 室長
萩原 朗子

高い成果を挙げる組織へ

当社は2006年にダイバーシティコンセプトを策定以降、育児・介護休業等の両立支援制度を拡充してきました。2014年からは近年の事業・顧客・パートナーのグローバル化、ビジネスモデルやマーケットニーズの多様化を受け、さまざまな違いを尊重して受け入れ積極的に活かすことで競争力の向上を図るD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を経営戦略として位置付けて取り組みを進めています。

かつてと異なり定年退職まで長く活躍される女性社員が増えています。加えて、団塊ジュニア世代の社員が40歳代に入り介護なども喫緊の課題です。これまで、当社の社員の働き方は長時間労働が中心でしたが、今後、育児や介護を行う社員はもとより、国籍や性別、文化などが異なる人材に活躍していただくためにも、多様な働き方を受け入れていく必要があります。そこで当社では、各人の働き方が多様化しても高い成果を挙げ続ける「組織」への変革を目指し、2014年から「職場働き方見直しプロジェクト」を実施しています。



本プロジェクトでは、個人の働き方だけではなく、多様な人材が共創して高い成果を挙げる「組織」を意識してメンバー全体の働き方を変革することを目標としています。グループ全員で「なぜ取り組むのか」という目的と目標を明確にし、話し合いを重ねて個人の意識や行動、組織の仕組みを見直し、チーム力の向上を目指します。着眼点としては、「業務内容・プロセス」、「組織風土」、「制度・仕組みづくり」、「個人スキル・マインド」の四つの観点から、高い成果を挙げる組織づくりを進めています。

働き方改革の実施プロセス

プロジェクトを実施するに当たり、まず2014年8月に外部講師によるワーク・ライフ・バランスの講演会を開催し、興味を持つ社員に参加してもらいました。その後、プロジェクト参加チームを募集し、自組織の働き方に問題があると考えているグループリーダー自らに手を挙げてもらい、本部や支店が偏らないよう、6チームを選抜。翌9月からプロジェクトを開始し、8ヵ月の実施期間を経て、2015年3月末に第1弾を終了しました。

実施プロセスとしては、まず「目的・目標設定」を行います。グループで達成したい事や、どんなグループになりたいかの目的をディスカッションし、達成度の目標を設定します。次に「現状把握・分析」を行うために、「朝夜メール」を使い組織内全メンバー間で、その日に行う業務の事前申告と結果の事後報告を行います。このデータを1週間、1ヵ月ごとに区切り、何にどれだけ時間がかかっているかの業務時間配分や、事前申告と結果の差異要因を分析します。そこから目的・目標と現状のギャップを認識し、課題の真因が何かを掘り下げて改善すべき課題・対策を設定し、どう改善していくかを議論します。最後に、アクションプランを立て、関係者で対策を実行し、進捗状況やアイデアをグループ内で共有します。

プロジェクトの取り組み事例

具体的な実施事項としては、①「朝夜メール」に毎日の業務内容と実施時間を入力。②「カエル会議」と呼ばれるグループミーティングを1-2週に1回開催し、目的・目標達成に向けた課題抽出・アクションプラン検討や進捗管理を実施。③「定例会」を毎月1回開催し、必要に応じてコンサルタントが外部の視点を交えて支援。④中間報告(12月)と最終報告(3月)を行い、全チームで課題解決に向けた悩みや苦労、成功・失敗事例を共有し、各チームのリーダーが部門を超えた一体感を持てるよう工夫。さらには、グループ内で解決できない課題に対しては、部長や執行役員、最終的には社長までを巻き込み、トップの意思を明確にしてもらうことで、プロジェクトを遂行することができました。

プロジェクトに参加したチームは、それぞれ自由にアイデアを出し合い、各自で活動を行いますが、実際に行われた取り組みの一部を紹介させていただくと、

・「朝夜メール」の活用
自由コメント欄に、例えば「今日はジムに行くので早く帰ります」と宣言することで、メンバー間の情報共有が行われ、仕事の依頼方法も変化し、作業の効率化が図られました。


宣言カード

・「宣言カード」の導入
各自デスクに「集中タイム」、「ノー残業デー」というカードを掲げ、自分がどのような状態にあるかを周りからすぐに理解できるよう「見える化」を図ることで、メンバー同士が互いの時間を意識するようになり、自分都合でなく相手の状況に合わせた効率の良い情報共有・確認につながりました。

また時差のある海外との業務が中心のチームは働く時間帯を定時より前倒しし、「冬のSummer Time」カードを掲げて、定時で働く周りの部署からも協力を得られやすい環境づくりを行っていました。


Positive OFF の一覧ボード

・「Positive OFF(有給休暇)」取得推進
有給休暇を「Positive OFF」と言い換えることで、単に「仕事を休む」という意識・イメージから、「自己啓発・充電」という意識・イメージに変わり、有給取得率が向上しました。

プロジェクトを終えて

プロジェクトを実施することで、ほぼ全てのチームが業務の生産性やワーク・ライフ・バランス、メンバー同士の関係性などを向上させることができました。特に効果が大きかったチームでは、プロジェクト実施期間中に業務量が倍増したにもかかわらず、働く人数・時間を変えることなく効率的に業務を成し遂げています。その他、タイムマネジメント力の向上やチームワークの強化、個人のスキルアップなども、プロジェクトの成果として挙げられます。

「職場働き方見直しプロジェクト」は2015年度も継続して実施する予定ですが、今期はチーム数を増やし、さらに取り組みを推進していく予定です。プロジェクト成果を社内で広く展開し、全社員のさらなる理解を深めていきたいと考えています。

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