住友商事が取り組むダイバーシティ推進活動

住友商事株式会社 人事厚生部
本山 ふじか

住友商事では、多様な人材がそのバックグラウンドを活かしてイキイキと活躍し、新たな価値や成果を生み出して当社グループの持続的成長に貢献できるよう、各種施策を通じた人材のダイバーシティの尊重と活用を推進しています。

当社が2005年から取り組むワーク・ライフ・バランス施策は、多様な人材が活躍するための土台です。個人の価値観やライフスタイルによって、一人一人のワーク・ライフ・バランスの在り方は異なりますが、仕事以外の生活を含めた生活全体の充実が活力を生み、新たな価値創造の原動力になると考えています。

取り組み開始当初は、全社横断推進プロジェクトチームを中心に、時間外勤務縮減や有休取得促進等の働き方の改革に力点を置きました。社内には、24時間世界を相手にする商社で、そんなことができるはずない、という声もありましたが、トップの強い意志とスピード感を持った施策によって成果が表れ、その後の従業員意識調査でも「長く働けばいいという時代は終わった」「会社の取り組みでますます会社へのロイヤルティが増した」など、多くのポジティブな声が集まりました。その他にも、労使共催の「働き方カイゼンセミナー」等を通じて、働くことの意味や、自分の人生について、さまざまな角度から考える機会を提供しています。

また、私生活に不安や心配があると仕事に集中できないので、会社のことに限らず、プライベートなことも含めて何でも気軽に悩みを相談できる場所として、事業所内カウンセリングルームを開設、10年経過した今では年間延べ約900人から相談があります。

女性の活躍促進という観点では、育児や介護等のライフイベントとの両立支援策として、法の要請を上回る制度の整備や、事業所内保育所の設置(2008年)等に取り組んできました。女性基幹職を初めて新卒で2桁採用したのは2003年からで、現在は平均して2割程度採用しています。2005年に女性基幹職全員を対象にアンケートを実施し、「こんな制度があったら助かる」「会社の保育園があったらいい」という声を検討し、必要と判断したものを一つずつ実現してきました。当時はまだまだ女性基幹職の人数が少なく、不安な気持ちも大きかったようですが、こうした環境整備を行ったことで、会社が本気で期待をしているというメッセージがしっかり伝わったようです。

今や育児や介護と仕事を両立していることは当たり前となっている状況を踏まえ、次のステージとして、活躍・キャリア形成の支援に軸足を移しています。男性同様さまざまな経験を経て成長し、活躍している女性が、ライフイベントを経ても活躍し続ける事例をいかに増やしていくかが課題です。育児や介護との両立ハンドブックを作成して全員に配布、これをテキストにして、育児休職前に全員と上司同席の上で面談しています。両立の仕方は人それぞれですので、上司には一人一人の実情を踏まえた適切な配慮と適切なストレッチ目標の設定をお願いしています。


プラチナくるみん

例えば、海外駐在は、商社の中でキャリアを積み上げていく上で必要なステップですが、上司は、小さい子どものいる女性社員に海外勤務を命じることにためらいを感じていることが分かりました。一方、女性たちに話を聞くと、子育て中だからといって海外駐在というチャンスを諦めたくないと考えている方も意外に多いことが分かり、2014年に子女のみ帯同して海外に駐在する社員をサポートする制度を新設しました。こうした子育て社員の活躍を後押しする取り組みが評価され、2015年6月に当社はプラチナくるみん認定を受け、東京都初の認定企業5社中の1社となりました。

そういう意味で、住友商事の取り組みは、2014年から第2ステージ、すなわち「社員一人一人の多様性を活かし、成長段階やライフステージに応じたさらなる活躍ステージ」に入っています。環境整備を終え、「成果を出す」組織づくりという本来のダイバーシティ推進の目的にアプローチする取り組みを行っています。

例えば、働き方については、一律の時間外縮減から、「メリハリのある働き方」の推進へシフトしました。「メリハリ」とは、約9割の部署で導入されているフレックスタイム制度も活用しながら、「やる時はやる」「休む時は休む」、といった短期のメリハリもありますが、成長曲線が立っている若い時には、一人前の商社パーソンになるために、成功体験を含めたたくさんの経験をする、一方子育て期など、長い会社人生において、とことんやりたくてもやれない時期もある、そういう長期のメリハリもあります。メリハリの「メリ」である、有給休暇も、2019年までに年平均14 日の取得という一段上の目標を設定し、取り組みを開始したところです。

今や時間を使いさえすれば成果が出るというビジネスモデルは減ってきています。複数のステークホルダーとwin-winの関係を築いて利益を生み、かつ社会に貢献できるような事業やスキームの提案等、新たな価値を生み出すための工夫や発想の重要性は、ますます高まっていると感じます。仕事の成果にコミットする一方で、仕事以外のことも含めた自分自身の人生で大切にしたいものをしっかりと認識し、その軸をはっきりと持った上で働く姿勢が、非常に重要なのではないでしょうか。そのような強い多様な個が、同じ目標に向かって一体感を持ってチームとしてまとまっている組織ほど、強いものはないと思います。まさにそれが「多様性が新たな価値を生み出す」ということです。住友商事がそんな強い組織になるように、引き続きサポートを続けていきたいと考えています。

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