ミャンマーにおける物流事情と上組の取り組み

上組ヤンゴン事務所 代表森川 辰徳
上組ヤンゴン事務所 所長西田 能一

1. 上組のミャンマーにおける事業展開


左:西田氏、右:森川氏

ここ数年、ミャンマーは市場としての成長に期待が高まり、注目を集めてきた。しかし、タイとインドとの間に位置するなど、その地政学的重要性も貿易・物流関係者の間で広く知られている。当社はヤンゴン事務所を2012年7月に開設したが、これは25番目の自社の海外拠点に当たり、日々多忙を極めている。日系物流企業としてはミャンマーでの事務所開設は早い方だ。2013年3月にはミャンマー物流最大手のトラック輸送会社「エバー・フロー・リバー社」とミャンマー人運転手20人弱を抱えたトラック共同事業を開始した。この共同事業は、当社のビジネスにとって完成型ではなく、あくまでミャンマーにおけるほんの「入り口」にすぎない。今後は同社と新たに設立する合弁会社を通じ貿易取引、倉庫運営など、一貫した総合物流企業として積極的に事業展開していく。特に、タイにおいては自動車産業が盛んであるため、タイ・ミャンマー間で自動車・関連部品の物流にも取り組んでみたいと考えている。

2. ミャンマーの物流インフラの現状と複雑な通関事情

今後、ミャンマー国内では物流の増加が見込まれるが、一方で物流インフラの改善余地は大きい。現在、当社がミャンマー国内で扱っている商品は衣類や食料品などのサイズが小さく、軽量のものが多いため、運送に特段の支障は出ていないが、例えば、大型機材などの特殊運送には課題が多い。ミャンマーには川や橋が架かっているところが多いが、橋の幅員は狭く、大型の重量物を輸送するのは極めて困難である。また、地方では道路の両脇が崖となっているところもあり、運送上のリスクが大きい。特に、電力インフラの整備に対する需要は増大の一途で、当社は日本国内同様に発電設備などの大型機材の輸送も手掛けたいと考えているが、道路や橋の整備が十分に進んでいないため、輸送できる製品が限られているのが現状である。

また、通関手続きも案件ごとに細かく許認可を得る必要があり、大変時間がかかっている。例えば、ミャンマー国内への輸入に際しては、通常、船積みごとに輸入ライセンスを求められるのだが、最近、ミャンマー商務省が輸入ライセンス免除対象となる商品を通達した。ところが、そのリストに基づいて実際に通関手続きを行うと、税関は財務省の管轄であるため、輸入ライセンスが免除されないといった事態が発生している。ミャンマーはWTO加盟国であり、アセアンにも加盟しているため、貿易制度はそれなりに整備されているはずであるが、運用面で追い付いていない状況が見られる。こうした点も、今後、改善が望まれる。

3. ミャンマーにおけるインフラ整備への期待とビジネスに対する抱負


ヤンゴン市内を走る上組トラック

当社は国際協力機構(JICA)から委託を受けた「ティラワ地区港運営効率化事業準備調査」に携わっており、日本政府の協力も頂きながら調査を進めているが、まさに官民一体となった事業であり、こうした連携は非常に重要であると考えている。ヤンゴン・マンダレー間の鉄道インフラ整備事業をはじめ、今後、さまざまなインフラが整備されていけば、人とモノの流れが加速、拡大すると思われ、日本政府には引き続き、ミャンマーのインフラ整備に強力な支援をお願いしたい。

また、当社は日本国内で全ての商社とビジネス関係を有しており、さまざまな事業で多面的にお付き合いをさせていただいている。今後、大きな成長が見込まれる、ここミャンマーにおいても、国内同様にいろいろな物流ニーズにお応えしていけるようになりたいと考えている。そうはいっても、当社は2012年に事務所を設立したばかりであり、ミャンマーの事情については、長年、同国でビジネスを手掛けている商社各社の方がはるかに詳しいと思う。当社は、今後、物流分野におけるさまざまな経験とノウハウを迅速に積み上げていき、商社の皆さまに物流面の貢献を果たし、当地でのビジネス展開にできるだけ寄与していきたいと考えている。

(聞き手:広報グループ 石塚哲也)

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