日ミャンマー経済関係強化に向けて

一般社団法人 日本経済団体連合会 日本ミャンマー経済委員会 委員長勝俣 宣夫
一般社団法人 日本経済団体連合会 日本ミャンマー経済委員会 共同委員長小林 健

1. はじめに

日本とミャンマーの経済関係は、いまや協力を構想する段階から、実施する段階に入った。日本の対ミャンマー直接投資は、2011年度の 400万ドルから 2012年度には5,400万ドル(世界第6位)と急増している。両国協力のシンボルであるティラワ経済特別区開発も 2013年 11月に起工式を迎え、順調に進展しており、両国経済関係は着実に動き出している。日本政府の取り組みも活発であり、2013年 12月には日ミャンマー投資協定に署名するとともに、安倍総理が632億円の円借款供与を表明し、また、2014年 3月には岸田外務大臣が 247億円の供与を表明した。

わが国は、引き続きこうした動きに弾みをつけ、民政移管後の経済開放の果実がミャンマー国民に行き渡るようにすることで、2015年の総選挙後も民主化と経済開放政策が支持され、しっかりと定着するための後押しをしていく必要がある。地理的に優位な位置にあり、豊富な資源と潜在力の高い人材に恵まれたミャンマーの開発に協力し、ミャンマーと共に成長していくことが重要である。

そこで、経団連日本ミャンマー経済委員会では、日本とミャンマー双方の政府と連携して、従来からの経済協力の柱であるインフラ整備、投資促進、人材育成における協力を以下に述べる取り組みを通じて深化させていきたいと考えている。同委員会は、2012年に活動を再開し、2013年11月にはミャンマー商工会議所連盟(UMFCCI)およびミャンマー政府との間で、12年ぶりに両国間の経済協力を協議する経済合同会議を再開したところである。外交関係樹立60周年の2014年をステップとして、上述の3分野で目に見える成果を達成し、両国経済関係を新たな段階へと高めたい。

2. 具体的協力策

(1)インフラ整備の加速

産業の基盤であるインフラの整備は、ミャンマーの工業化と持続的な経済成長を支える上で不可欠かつ喫緊の課題である。とりわけティラワ経済特別区の開発は、ミャンマー国民に雇用機会をもたらす重要な案件の一つである。2014年3月現在、粗造成工事は完了し、開発工事全体の進捗率は16%(4月現在)と順調に進展している。わが国経済界としては、予定通り、2015年半ばまでに第1期を完工させ、ミャンマーの産業振興や経済発展の起爆剤にしたいと考えている。

そのためにも、特別区開発の着実な推進に経済界が自ら取り組むとともに、わが国の円借款および無償資金協力による道路、橋梁、発電・変電所、ガスパイプライン、上下水道、通信等の周辺インフラの整備が加速されるよう、日ミャンマー両政府および国際協力機構(JICA)に強力に働き掛けてまいりたい。

また、その他の地域におけるインフラ整備に対しても、わが国企業が有する防災、環境、耐用年数等の面で優れた技術を活用して貢献することができる。ミャンマー政府の財源支援の観点からも、JICAの海外投融資を活用したPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)が有効であり、その活用促進を図るためJICAと連携してまいりたい。

(2)ビジネス環境整備を通じた投資の促進

ミャンマー国内へのわが国企業の進出を支援する上で、法制度整備や運用、ビジネス環境の整備が不可欠である。その推進のための重要な枠組みが、2013年3月に立ち上げられた「日ミャンマー共同イニシアティブ」である。開始以来、ミャンマー政府と現地の日本大使館およびヤンゴン日本人商工会のご尽力によって、委託加工生産の輸出手続きの簡素化、会社設立手続きの簡素化、外資建設企業の設計施工業務参入許可、査証延長・滞在許可手続きの簡素化などの具体的成果を挙げている。経団連としても、引き続きこの枠組みに参加して関係者間の議論の進展に協力するとともに、その成果を日本側で経団連会員各社に周知し、投資の促進につながるよう努めてまいりたい。

並行して、経団連では、進出企業が直面する緊急性の高い課題については、所管する国家計画・経済開発省の投資企業管理局や商業省の貿易総局等に機会あるごとに解決を働き掛けている。こうした取り組みが、ミャンマー政府が高い期待を寄せる投資促進の一助になると確信している。

さらに、わが国企業が推進している証券取引所の開設が予定通り2015年までに実現するよう支援し、資金調達手段の拡充やパートナーとなる地場企業の容易な発掘につなげてまいりたい。

(3)産業人材の育成

人材は国家の発展の要である。経団連では、ミャンマーの企業が必要とする産業人材の育成を支援している。その一環として、2013年度より、JICAが運営を支援して「マネジメント人材」を育成するミャンマー日本人材開発センター(MJC)のカリキュラム策定支援と、成績優秀者に対する奨学金の供与を開始した。今後は、協力を一層強化し、外交関係樹立 60周年を記念した寄付講座の設置や、図書館の充実支援などを行ってまいりたいと考えている。

ミャンマー側より期待の大きい「ものづくり人材」の育成についても、短期的には、海外産業人材育成協会(HIDA)や日・タイ経済協力協会(JTECS)が行うミャンマー人の訪日研修や第三国研修、日本人専門家・講師の派遣との連携を強化してまいりたい。

また、長期的には、人材育成を通じて、わが国のものづくりに対する基本的な姿勢や考え方をミャンマーに広く深く展開していくことが、ミャンマー製造業の発展に貢献すると考えている。この点では、JICAが2013年に開始した「開発途上国の社会・経済開発のための民間技術普及促進事業」が期待できる。わが国企業による活用を促進し、ミャンマーでの成功事例を積み上げてまいりたい。

3. おわりに

2014年11月には、再開後2回目となるUMFCCIおよびミャンマー政府との合同経済会議を東京・経団連会館で開催することとしている。この機会を通じて、具体的な協力の進捗状況の検証や新たな協力案件の発掘につなげたい。

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