ABICが行う国際理解教育について

国際社会貢献センター(ABIC)小中高校国際理解教育コーディネーター高塚 謙次
国際社会貢献センター(ABIC)小中高校国際理解教育コーディネーター川俣 二郎

国際理解教育グループは2001年発足時より初等中等教育において学校内で対応できない国際理解教育の普及を事業方針の一つとし、「ゆとり教育」の一環で取り入れられた「総合的な学習の時間」の非常勤講師に、教員免許を持たない社会人を登用する制度に着目、小学校・中学校・高等学校を対象に、海外経験豊富な商社・企業OB会員による講義に取り組んできた。

この「国際理解教育」は、観光案内的海外事情解説でなく、会員の外国勤務体験から得た世界観と価値観を若い世代に伝えることに力点を置き、児童・生徒に驚きと感動を与え、国際基準での物の見方・考え方ができる次世代市民として活躍するための哩石を贈ることを目指している。

内容としては
「国際理解のための出前授業」
「外国籍児童・生徒のための日本語学習指導」
「教員のための研修」
の3事業を柱に教員および児童・生徒の国際的視野拡大と社会貢献に努めている。

現在も継続している代表的事例は下記がある。

横浜市立横浜商業高校国際学科での国際理解教育

2003年以来毎年1年生にアジア・欧州・米州・アフリカ主要国を紹介、それを参考に生徒がテーマを決めて研究、3年生で成果を発表する。ABIC会員が自己の外国勤務体験から導き出した授業が生徒に与えるインパクトは大きく、触発され研究テーマを考える傾向が強い。毎年3月の成果発表会には ABIC関係者も出席、同校との信頼関係は厚い。

スーパーグローバルハイスクール(SGH)でのグローバル人材育成教育


スーパーグローバルハイスクール(SGH)での授業風景

グローバル人材育成を目指し、2014年度より文科省のSGH認定制度が発足し、初年度 56校が認定を受けた。ABICは第 1弾として横浜市立横浜サイエンスフロンティア高校に対し講師を派遣、出前授業を行い、2015年度も引き続き講師派遣を予定している。

SGH認定校は今後大幅に増加する予定であることより、他の認定校に対しても同様の活動の輪を広げるべく検討している。

多摩市立小中学校での日本語学習指導

日本の国際化と、それに伴う外国にルーツを持つ児童・生徒に対する日本語学習指導が各地で大きな課題となっている。将来の日本社会の一部を構成するであろう外国籍の少年少女が日本の学校教育になじみ、よき市民となるよう育成するのは、社会的・経済的・文化的な必然である。2003年以来、多摩市教育委員会との協働事業として、毎年10人前後の児童・生徒をそれぞれ30回にわたり指導、その内容は日本語指導のみにとどまらず、校内における交友指導、一般的な生活指導にも及び、外国勤務時に子弟教育に苦労した会員が、その裏返しの貢献を実行できる貴重な機会となっている。何よりの強味は、外国籍の児童・生徒と同じ国や地域に勤務し、その言語・習慣・文化をよく理解できる会員が、孫の年代の子供たちに日本社会への順応の手助けをする点であり、多摩市教育委員会からも高い評価を受けている。

区内に外国籍児童・生徒が多数在住する新宿区においても教育委員会の指導の下、放課後日本語学習へ講師派遣している。

教職員向け研修会

2003年より(財)日本経済教育センターが提供するサービスのうち、教職員研修会での講演を分担、兵庫県、京都府、群馬県、岩手県等全国に及びテーマも多岐にわたる。

(財)日本経済教育センター以外では、2013年、2014年千葉県総合研修センターで千葉県内公立学校新任校長 200人を対象に世界に生きる日本人の育成と学校経営の在り方をテーマにグローバル教育について講演、2015年度も出講予定。2014年には千葉県市原市教職員国際理解教育研究会にも出講。

高校生国際交流の集い

内外高校生が一堂に会し対話を通じ異文化の壁を乗り越え相互理解を図る目的で、2007年関西学院大学、青山学院大学と連携、高大連携プログラム「日米高校生交流の集い」を関西、関東で開始。関西は民間国際教育交流団体のAFS大阪事務所、関東はAFS東京事務所が協力団体で毎回参加。

2008年から名称を「高校生国際交流の集い」に変え、参加高校に一部変更あるが2014年まで継続 4本目の柱となっている。

東京外国語大学との包括協定

東京外国語大学は2013年末に社会・国際貢献情報センターを設立し、グローバル人材の育成の他、社会・国際貢献活動を目指している。この活動に ABICが有する社会・国際貢献に関わる知見・経験・人材の活用などを通じて連携協力を進めることを提案し、2014年11月に同大学と社会・国際貢献に関わる連携協力に関する包括協定書を締結した。

今後、前述のSGHをはじめとする高校でのグローバル人材育成教育等の実施に向け具体策の検討を開始している。

ABICが行う国際理解教育について 誌面のダウンロードはこちら