外国人技能実習生への思い

気仙沼製氷冷凍業協同組合
代表理事
岡本 寬

当組合は、水産加工業者を構成員として、外国人技能実習事業を行っています。2011年3月に発生した「東日本大震災」では、津波で市内の工場がことごとく流失しましたが、実習生は幸い全員無事でした。工場が流失したことで事業継続ができないため、実習生全員を故郷中国に帰国させなければなりませんでした。工場が再建され、一時休止していた受け入れ事業が再開されたのは、2年後の2013年6月からで、当時、気仙沼には、漁船乗組員として多くのインドネシア人がいたこともあり、水産加工場の技能実習生も中国人からインドネシア人に移行しました。

今や、水産加工業はもとよりほぼ全ての産業が、外国の人々に頼らなければ成り立たない状況となっており、外国人技能実習生もその一翼を担っています。20歳前後の若い外国人が、日本への憧れや、母国の数倍の賃金を稼ぎ、家族に送金したり将来の夢をかなえるために貯蓄するという目的があるにしても、初めての異国で言葉も分からずに過ごす3年間、5年間、その苦労は私には想像すらできません。


紅葉狩りの様子

日本で生活するには、母国インドネシアとは違うさまざまなルール・マナーを覚えなければならず、生活で出てくるごみの分別・出し方、公共の場でのマナー、自転車の乗り方など、また、季節による寝具の使い方や服装、上手な冷暖房の使い方まで、母国にはない生活様式がいっぱいあります。

この一つ一つを毎年入ってくる実習生に受け入れ事業所の生活指導員がわが子のように接し教えていきます。時には叱り、具合が悪いと病院に連れて行き、桜の季節には花見をし、秋は紅葉狩り、冬はスキー場にと、全てが日本の文化・風習を体験し、慣れ親しんで、日本をよく知ってほしいとの思いで行っています。とはいっても、実習生の語学力は日本に来る数ヵ月前に、ひらがな、カタカナ、簡単な単語と文法、日本語での挨拶を暗記した程度であり、日本語検定のN5レベルです。このレベルでは、日本語の理解は困難です。このことは、仕事の場でも同じです。

気仙沼市では、在籍するインドネシア人の他、ベトナム、ミャンマー、フィリピンなど各国の方々に気仙沼市の魅力を伝えるため、市民と一緒に料理を作り食文化を理解し合うことや成人式への参加の呼び掛け、図書館にインドネシアの元大統領の名前を付けた「ユドヨノ友好こども館」を併設するなどの取り組みを行っています。これは、外国人が楽しく、快適に生活ができ、多くの外国人から気仙沼に来て良かったと「よろこばれる気仙沼・選ばれる気仙沼」になるための取り組みです。

その一環で2020年7月からABICの支援で日本語教室を開講しています。参加した実習生は、「参加して大変楽しく勉強できる」「多くの友達に日本語教室のことを教え一緒に勉強したい」など、大変満足しています。参加する実習生の目標は「N3」ですが、その上を目指す実習生も出てくるのではないでしょうか。

外国人技能実習生の夢

日本語教室で勉強して将来どのように役立てたいか、皆さんの夢を聞きました。
ここで幾つかご紹介します。


日本語教室に参加する外国人技能実習生の皆さん


Aさん(インドネシア人実習生)

日本に来て、仕事を真面目にやって、お金をいっぱいためて、いろいろな生活を勉強して、たくさんの経験を積みたいです。将来、インドネシアに帰ったら、自分の経験を基に新しい仕事をつくりたいと思っています。私はこれからずっと頑張らなくてはいけない。夢に近くなりますから^^。

Fさん(ベトナム人実習生)

私は日本人と話すのが大好きです。お仕事をサポートするために日本語を学びます。勉強するために来ているので日本人の先生に教えてもらいたいですし、日本語能力試験を受けたいです。将来は日本語を使って好きな仕事をしていきたいです。私の夢は日本語の通訳になることです。

※編集の都合上、いただいたコメントを多少修正しています。

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